RENATO MOTHA E PATRICIA LOBATO

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 皆さんはファドと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?「ファド?そんな言葉聞いた事ない。」 「あ〜、暗い音楽ね。」「ポルトガルの音楽だよね。」「素晴らしい!アマリアの歌声が忘れられない。」等々。 <運命>という意味のあるファドは、19世紀の前半にポルトガルの首都リスボンで始まった民衆歌謡の事で、 哀愁あるメロディーをギター伴奏にのって歌うものです。20世紀半ば、先にも出てきた アマリア・ロドリゲスの出現によって世界に広まったもので、音楽に詳しい方ならば、ファドと聞けば アマリア・ロドリゲスと直ぐに出てくるほど彼女は有名でした。が、 その彼女も他界してから数年の歳月が経ってしまいました。その後も、 多くのファド歌手が現れては消えて生きましたが、これからのファド界は、このコーナーでも以前紹介した、 ドゥルス・ポンテスやマドレウス、そして今回紹介する クリスティーナ・ブランコなどが背負っていく事になるでしょう。

 クリスティーナ・ブランコについて知らない方のために、ここで少し彼女を紹介したいと思います。
 1972年、ポルトガルはリスボンの近郊のリヴァテージョ地方出身の彼女は アマリア・ロドリゲスの音楽を聴いてファドに目覚め、1980年代後半にオランダで活動を始めます。 2000年までの間に3枚のアルバムを発表しますが、これはマイナーレーベルからのものでした。 しかし、同年大手のユニヴァーサルと契約し、世界的にその名を知られる事となったのです。 2004年には初来日を果し、昨年は愛知万博でもコンサートを開きました。暗いイメージが先行するファドですが、 彼女の歌は洗練されていて爽やかささえ感じます。
 それでは、彼女通産6枚目のアルバム<ユリシーズ>を紹介していきましょう。

 無伴奏で歌われる#1。二つの曲で構成されていますが、まるで一つの曲に聞えますね。アルゼンチンの女性詩人、 アルフォンシーナ・ストルニが最後の詩を書いた後に入水自殺をした事件を基に書かれた歌曲の中の一曲#2。 伴奏のギターが切なく響きます。7つの感情の激発を歌った#3。風に乗って舞っている感じがします。 ホセ・アフォンゾが獄中で書いた現実主義的な詩を歌った#4。どこか哀しみが伝わって来る感じがします。 ジョニ・ミッチェルの#5。ピアノの伴奏だけで歌われますが、 何時聴いても感動する彼女の詩を表現するには一番なのかもしれません。本当に素晴らしい詩です。 みなさんもたんと味わって下さい。哀しみが胸にジ〜ンと来る#6。昔、 日本にも数回来日して深い感動を残していったアルゼンチンの歌姫、ヒナマリア・イダルゴ。 彼女を想い出させる#7。ちょっとフォルクローレっぽいですね。郷愁を感じる#8。 私もそろそろそんな年代になって来ました(笑)。 フランスの詩人の自由を謳った詩にこのアルバムで多くの曲を提供しているギター奏者が曲をつけた#9。 勿論フランス語で歌っています。とても綺麗なフランス語に驚きますね。淡々と揺れ動くグラスに残ったワイン。 そんな絵が浮かんで来る#10。その心情を察すると哀しくなりますね。ギターが切ない#11。 彼女の表現力の素晴らしさに脱帽してしまう歌唱です。シンプルなメロディーと詩ほど感動するものはありません。 正に#12はそんな曲です。少し明るい光が見えてくる#13。カモメを自分の気持ちに例えて歌う#14。 懐かしいファドの香りがします。アルバム最後の#15はピアノ、ギターそして、 楽器となった彼女の声が一緒になってとても官能的に聞こえます。 後半に突如入ってくる打ち込みが心の高揚を促しますね。とても素敵です。

 如何でしたか?ファドだけれども、ファドを超えた大きな世界が見えました。アルバムの番号は、 輸入盤が0602498208984、国内盤がUCCS 1072でユニバーサルミュージックから出ています。 ワールドミュージックのコーナーに行ってみて下さい。