Roberta Gambarini

Easy to Love


 今年の冬は何しろ寒い。50年ぶり、20年ぶりという言葉が各地から聞こえて来ます。 そんな寒い一日、部屋の中でこんな音楽が流れていたら、きっとほっとして気持ちが安らぐでしょう。 ヴァレンタイン・デイも近くなり、そんな特別な日にもお勧めのアルバムが今回紹介するイタリア出身の歌手、 ロバータ・ガンバリー二の<イージー・トゥ・ラヴ>です。

 ロバータ・ガンバリー二。 先日発表になったスウィング・ジャーナル誌のジャズ・ヴォーカル部門で2005年度の金賞を獲得したので、 ジャズ好きな方の間では結構話題になっていたと思いますが。でも、 その他の方達にも是非聴いてもらいたいと思うほどとっても素敵なアルバムです。

 彼女を知らない方のために、ちょっと彼女について紹介してみましょう。
 彼女は今年冬季オリンピックが行われるイタリアはトリノの出身。 両親がジャズ好きであった事から幼い時からジャズ界の大物たちのコンサートに触れていたといいます。 12歳でクラリネットを吹き始めて、やがてヴォーカルに興味を持ち始め、 17歳の時には早くもジャズクラブに出演したといいますから驚きです。 10代でイタリア国営ラジオ・TV主催のコンテストに入賞してからは、ヨーロッパの多くのジャズ祭に出演、 1998年にアメリカに渡って、 その年の10月に行われたセロ二アス・モンク・インターナショナル・コンペティションのヴォーカル部門で3位に入賞、 ほどなくニューヨークに移住して活躍の場を広げていきます。 その後出会ったベニー・カーターやキューバの名ピアニスト、チユーチョ・ヴァルデスと親交を深め、 2004年の年末にはビッグ・バンドのヴォーカリストとして初来日。ブルーノート東京にも出演しています。

 それでは紹介していきましょう。

 アカペラのヴァースから唄う#1。ヴォーカル好きな方は「うん」と唸ってしまったのではないでしょうか。 それほどデビューアルバムとは思えない歌唱ですね。スローから入ってボサノヴァのリズムに行くお洒落な編曲がいい#2。 ベースのジョン・クレイトンとテナー・サックスのジェームス・ムーディーのサポートが優しく響く#3。 メンバーにも恵まれています。マンハッタン・トランスファーばりのヴォーカリーズを聴かせる#4。 ガーシュウィンのフォーク・オペラ<ポーギーとべス>からのメドレー#5。 この歌をヴァースから唄っている事にまず驚いた#6。快調にスウィングしています。ビル・エヴァンスが作曲し、 トニー・ベネットが彼とのデュエットで始めて披露した#7。私の大好きな曲です。トニーには及ばないものの、 しっかりとした語り口に好意を持ちます。ジェームス・ムーディーとのスキャットの掛け合いに思わず指を鳴らしてしまう#8。 恋人を失った悲しみを感情たっぷりに唄う#9。軽いサンバのリズムに乗っていかにも踊り出しそうな#10。 ミュージカルからスタンダード・ソングになったのは数々ありますが、この#11もその例に漏れません。 ジェローム・カーンのミュージカルから2曲メドレーで唄われます。 バラッド〜スウィングと唄い分けるところも憎い演出で、あたかもホテルのラウンジで聴いているみたいです。 ピアノとのデュエット#12。失恋する事への不安をしっとりと唄います。あなたもこんな気分になった事ありますよね? ビリー・ストレイホーンの作品#13。ロバータはスキャットを交えて声の幅の広さを遺憾なく発揮しています。 彼女が活躍するきっかけになったと言っても過言でないセロニアス・モンク・インターナショナル・コンペティション。 そのセロニアス・モンクのメドレーを最後、#14に持って来るとは。それだけでも粋な感じがします。 晩年のカーメン・マックレイにはまだまだ及びませんが、難しいモンクの曲を良く熟しています。

 如何でしたか? 新人でありながら、エラ・フィッツジェラルドやカーメン・マックレイ、 それにサラ・ヴォーンをも彷彿させる抜群の歌唱力、声の幅の広さ、それに何と言ってもセンスの良さが光りましたね。 CDの番号は、FNCJ-5511でフィフティー・ファイブ・レコードより発売になっています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2006.2.11