Sophie Milman

Sophie Milman


 いよいよ本格的な春の到来ですね。気持ちの良い春にそよ風を運んでくれる新星が登場しました。 今回紹介するのは、ダイアナ・クラール、マイケル・ブーブレ、マデリン・ペルーに続いてカナダから登場した全世界が注目する新人、 ソフィー・ミルマンの<ソフィー・ミルマン>です。

 新人ですから彼女を聞いたことの無い方がほとんどだと思います。ここで、少し彼女について触れておきましょう。

 このアルバムを録音した当時19歳だといいますから、今ではおそらく22歳くらいかと思われる彼女は、 ロシア西部、ウクライナ山脈付近で生まれ、幼い時をそこで過します。ベルリンの壁が崩壊した1989年、 ウクライナからイスラエルに家族が移住し、少女時代をイスラエルで過すことになった彼女は、音楽に興味を持ち、 現地の若い人を対象にしたポピュラーコンテストに出場して最後の10人に残り、才能を発揮し始めます。 この時期彼女はジャズと出会い、マヘリア・ジャクソン、エラ・フィッツジェラルド、ルイ・アームストロング、 オスカー・ピーターソン、カウント・ベイシーなどを聴いて益々音楽への興味を深めていくのですが、 15歳で移り住んだカナダのトロントでは、更に彼女を刺激する出来事が待っていたのです。そこには、 ポピュラー音楽やジャズだけではなく、ブルース、ラテン、ファンク、そしてクラシックまで色々な音楽が溢れていたからです。 トロントでたまたま見たローカル番組<リアル・ディーヴァ>で、 その司会をしていたピアニストのビル・キングに自分の歌を聴いてもらいたいと思った彼女は早速行動を開始し、 ビルに歌を聴いてもらう機会を与えられます。彼女の歌を気に入ったビルは、彼女をTV番組に出演させ、 遂には今回紹介するアルバムのプロデュースもかって出ることになったのです。このアルバムを制作している時、 彼女はトロント大学の学生でした。カナダでこのデビューアルバムは2004年11月に発売され、いくつかの音楽賞を受賞、 その後、トロントはもちろんの事、オタワをはじめカナダの各都市のクラブやジャズ・フェスティバルで歌い人気を博しています。 今年の夏にはカナダ縦断コンサートが予定されているまでになり、今後の成長がとても楽しみです。

 それでは紹介していきましょう。

 彼女がシンプルで大好きだと語るブラジル音楽。#1は、サンバのリズムが自然に体を動かせるご機嫌なナンバー。 この詩の内容の様に、あなたも心の扉を開けてこのアルバムを聴いて下さい。とってもタイトルが洒落ているスタンダードの#2。 スウィングしていてウキウキしてきますね。打って変わってバラッド仕立ての#3。 彼女がオリジナルのビリー・ホリデイの歌うこの曲を聴いてショックを受けたという#3。バックのサポートが完璧な#4。 彼女の為に作られたオリジナル曲#5。心地よい風が吹いているような感じです。 彼女はガーシュウィンがとても大好きだと語っていますが、そのガーシュウィンの曲から選んだ#6。 ヴァースから感情たっぷりで歌っています。眠らない街ニュー・ヨーク。そんなニュー・ヨークの孤独を歌ったブルース調の#7。 パイプをくゆらしたくなります。最初は歌えるかどうか不安だったという#8。 サラ・ヴォーンの歌を聴いてイメージが沸いたと語っています。ジャズしていていいですね。 エディット・ピアフの代表曲で世界中で歌われ続けている#9。ソフィーはフランス語で優雅に歌います。 パリが頭に浮かんできますね。映画<007>シリーズの映像が浮かんできそうな#10。コール・ポーターの有名曲です。 どこかロシア民謡に似ているなと思ったら、それもそのはず、 #11は生れ故郷へのオマージュとしてロシア語で歌ったシャリアピンの有名なロシア民謡そのものでした。 アルバム最後の#12は、しっとりとジャズクラブで歌っているかのような雰囲気です。 20代前半の女性が歌っているとは思えないほど夜の味わいがありますね。ちょっと季節外れの曲ですが、 なかなかいい感じです。

 如何でしたか?どこかの国で大量にデビューしているお子ちゃま歌手たちとは全く違った、魅力溢れる歌手でしたね。 早く日本に来てその生の歌声を聴いてみたいものです。
 アルバムの番号は、270029 で KOCHレコードから出ています。今のところ、輸入盤でのみ入手可能です。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2006.4.9