CHRIS BOTTI

TO LOVE AGAIN


 今年は梅雨の走りが早く訪れ、おまけに、そのまま梅雨に突入してしまうかのようです。 そんなジメジメした気分をカラっとさせてくれるアルバムを紹介しましょう。 イケメン・トランぺッター、クリス・ボッティの新作<トゥ・ラヴ・アゲイン>です。

 ジャケットでもお分かりのように、彼はピープル誌で<世界で最も美しい50人>にも選ばれたほどの美系。 彼の演奏するペットの響きはそれ以上に美しく、知的です。そんな彼をご存知ない方のために、 少し彼について触れておきましょう。

 1962年10月、彼はアメリカはオレゴン州のポートランドで生まれました。 母親がピアノの教師だった事から幼い時から音楽に親しんでいます。10歳でトランペットを吹き始め、 12歳で聴いたマイルス・デイヴィスにショックを受けてトランぺッターを目指します。 高校からプロとしての活動を開始、インディアナ大学を卒業後ニューヨークに出て ウッディ・ショーやジョージ・コールマンに師事、やがて大物プロデューサー、アリフ・マーディン に出会ってチヤカ・カーンやボブ・ディランなど、大物アーチストのバックを努めることになるのです。 1990年にはポール・サイモンのツアーに同行。95年には<First Wish>でソロデビュー、 翌年には映画音楽の作曲も担当するようになります。1999年スティングとの出会いがきっかけでレコード会社を移籍、 2001年に移籍後初のソロ・アルバム<ナイト・セッションズ>を発表してからはコンスタントに毎年アルバムを発表し、 このアルバムが移籍後5枚目、通算8枚目のアルバムになります。今回は、 ゲストに様々なジャンルからヴォーカリストを10人招いて出来上がった、とても豪華なアルバムになっています。 2005年度のグラミー賞も獲得して、つい先ごろも2回目の来日をしてブルーノート東京でライヴを行っています。 勢いに乗る彼の今後は益々期待される一方ですね。

 それでは紹介していきましょう。

 ストリングスが夜明けをイメージさせてくれる#1。乾いたペットの響きがなんともいえません。 前作でもゲストとして参加していたスティング。ボッティにとっては恩人といっても過言ではないスティングを起用した#2。 この詩の内容に二人の音楽人生が描かれているかのようですね。10年ほどまえにグラミー賞の新人賞を獲得したポーラ・コール。 彼女も前作に続いての参加となった#3。アンソニー・ウィルソンのギターの何気ないサポートがとても素晴らしいですね。 今やカナダだけでなく世界でも飛ぶ鳥も落とす勢いのマイケル・ブーブレ。彼が参加の#4は楽しく豪華。 ちょっとシナトラを想い出させますね。海辺のカフェテラスでず〜っと眺めている夕日。そんな光景が目に浮かんでくる#5。 もはや中堅になってきたソウル界の歌姫、ジル・スコットが参加の#6。歌う前のため息からもうソウルを感じさせてくれます。 タイトル曲の#7。クリスのオリジナル曲です。映画音楽の様で、聴いていると閉じた瞼の向う側に情景が現れてきます。 気持ちがとても落ち着きますね。ブルー・ナイルのポール・ブキャナンが歌う#8。 彼の表現力がクリスのトランペットと相まって心の奥深くまで感動を与えてくれます。 先ごろ偉大なる歌手たちを追悼して作ったアルバム<BEFORE ME>を発表したばかりのグラディス・ナイト。 #9ではクリスを圧倒する歌唱力を披露して流石にベテランと声を掛けたくなりますね。 サミー・フェインの作曲した#10は何時聴いても涙が出ます。ここでのクリスは、トランペットの詩人、 トニー・フリッセラにも迫る表現で素敵です。一昨年、15歳デビューのジャズ・シンガーとして話題になったレネー・オルステッド。 #11は彼女が17歳とは信じられない歌唱を披露しています。このコーナーではもうお馴染みのホーザ・パッソス。 彼女の不安定な歌声が逆に効果を上げている#12。輸入盤では最後になる#13は、 なんとエアロスミスのヴォーカリスト、スティーブン・テイラーがゲスト。なかなか味がありますね。 #14は国内盤のみのボーナストラックです。ちょっと前にこのコーナーで紹介したTOKUがゲスト。 そのアルバムのトップに収められていた曲ですね。違ったアレンジで聴くのもいいと思いませんか?

 如何でしたか?とても素敵なアルバムでした。ジメジメしていた気持ちがカラっとしませんでしたか?容姿もいいし、 演奏もいい。そんな彼に恋してしまそうなアルバムでした。アルバムの番号は、 SICP 1066(国内盤)でソニー・ミュージックから出ています。ジャズのトランペットのコーナーに行ってみて下さい。

2006.5.28