THE MANHATTAN TRANSFER

THE MANHATTAN TRANSFER


 マンハッタン・トランスファーと言ったらジャズ好きな方ばかりでなく、 コーラス好きな方々も一目置いている存在でしょう。その彼らが来日に合わせて素敵なアルバムを届けてくれました。 それが今回紹介する<ザ・シンフォニー・セッションズ>です。

 マンハッタン・トランスファー。もうみなさんご存知だとは思いますが、知らない方の為に、 少しここで彼らを紹介しておきましょう。

 グループ結成は1969年。今でもリーダーのティム・ハウザーによって結成されました。が、 この時は話題に上る事すらなく、1971年に一旦解散してしまいます。しかし、ティムは意を決して再結成。 ここに新生マントラ(マンハッタン・トランスファーの略称)が誕生した訳です。この時のメンバーは、 ティム、ローレル・マッセー、ジャニス・シーゲル、アラン・ポールの4人。1975年、再デビューを飾ってからの活躍は、 1979年にローレル・マッセーが抜けてシェリル・ベンティーンが新たに加入した事くらいで、 ジャズ・コーラスグループの最高峰として追撃を許さない存在になっています。バスのティム、 テナーのアラン、アルトのジャニス、ソプラノのシェリルとそれぞれが個性豊かな声の持ち主が贈る究極のコーラス。 それでは、彼らの新作を紹介していきましょう。

 ジャズばかりではなく、チャック・ベリーが歌った事でロックンロールの世界でもスタンダードとなっている#1。 快適なオープンカーでの旅という雰囲気ですね。ちなみに私がマントラでこの曲を初めて聴いたのは、 <シャーキーズマシン>という映画の中ででした。人と飴を引っ掛けて歌ったお洒落な#2。もう30年も前、 こんなコーラスが出来たらいいな、な〜んて思ったりしましたっけ。 スタンダードと呼ばれている曲の中にはミュージカルで作られた物が数多くあります。#3もミュージカル <ガール・クレイジー>の為に書かれた甘〜いラヴソング。コーラスの素晴らしさが堪能できます。 ドゥー・ワップ。思わす指を鳴らして、足を動かしてしまいます。 ゆったりとしたメロディーとロマンチックな詞が本当にピッタリな#4。ゴスぺラーズもこのくらい上手いとねぇ〜。 アカペラといえば、マントラが出てくるまではシンガーズ・アンリミテッドの独壇場だったのですが、 この#5でアカペラもマントラは上手い!と思った物です。このアルバムではアカペラではなく、 オーケストラとの共演になっています。とても器楽的な曲だと思ったらデューク・エリントンろビリー・ストレイホーンの作品でした。 それにアラン・ポールが詞を書いた#6。エラ・フィッツジェラルドへの感謝の気持ちが込められていてとても素敵ですね。 器楽曲に詞を付けて発表された1985年の作品<ヴォーカリーズ>。そこで取り上げていた#7。アレンジは大分変わっていますが、 やはり素敵な一曲ですね。とっても優雅な気分になってしまいます。携帯電話、ヴァイブモード、カラオケ、 ブリトニー・スピアーズまで出てくる今の曲#8。今を表現している詞の内容は、 ゆっくりと時の流れを感じさせるメロディーとは裏腹に、ちょっと怖〜いです。 数年前に日本でもライヴをライヴ盤として発表したマントラ。その中にも収録されていた#9。 器楽曲に詞を付ける事にはナンバー・ワンのジョン・ヘンドリックス。彼もソロになる前は <ランバート、ヘンドリックス&ロス>というコーラスグループで活躍していました。 その彼がジャンゴ・ラインハルトの曲に詞を付けたこの曲は、空に浮かんでいるようで、 なんとも言えない気分にさせてくれます。#6と同様にメンバーのアラン・ポールが詞を書いた#10。 外国語の詞は色々な表現が出来て、とても羨ましく思うのは私だけではないでしょう。 日本ではおそらく作れない詞ではないでしょうか?クラシック風なストリングスの演奏から始まる#11。 イアン・プリンスのヒップ・ホップなメロディーにピッタリの詞を付けたのはドン・フリーマンとメンバーのシェリル・ベンティーン。 その才能に脱帽です。すごく楽しくなってしまいますね。アルバム最後の#12は、お待ちかね、マントラの大ヒット曲です。 元々はウェザー・リポートというジャズ・フュージョングループの作品でしたが、 1979年にマントラのアルバム<エクステンションズ>に収録されるや話題沸騰。 そして今回アルバムの最後を飾る事にはとても相応しい曲ですね。所で、このタイトルは、 サックス奏者のチャーリー・パーカーの愛称からとったジャズクラブの名前ですが、 昔2丁目にも同じ名前のジャズバーがありました(注:今ある同名のバーとは違います)。 とても広い素敵なバーでツヤさんという女主人の知識の広さに、私も勉強させられた事を想い出しました。 懐かしいなぁ〜。

 如何でしたか?梅雨の重々しさを吹き飛ばしてくれるかの様で素晴らしかったですね。ライヴに足を運びたくなりませんか? アルバムの番号は、KICJ 505 で、キングレコードから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。 なお、国内先行発売なので、この時点で輸入盤は発売されておりません。

2006.6.18