ROSA PASSOS

ROSA


 梅雨がなかなか明けないと思っていたら、梅雨明けと共にやってきた猛暑、そして、 台風による猛烈な雨。外に出たくなくなります。そこで、こういう時はエアコンの効いた部屋でお酒でも飲みながら、 少しヴォリュームを大きくしてこんな音楽を聴いたら如何でしょうか?きっと心が休まってホッとする事でしょう。 今回紹介するアルバムは、以前、このコーナー#3で紹介した事のあるホーザ・パッソスの<ホーザ>です。

 彼女のニューアルバムが出るたびに紹介したいと何時も思っていたのですが、随分間が空いてしまいました。 (他に#90でクラッシックのチェロ奏者、ヨー・ヨー・マの紹介の中に、また#144のクリス・ボッティ の紹介の中にゲストで参加していました。)今回は、レコード会社をテラークに移籍してからの第一弾という事で、 これまた素晴らしいアルバムに仕上がっています。彼女を知らない方の為に、ここで少し彼女を紹介してみましょう。

 1952年、ブラジルはバイーア州、サルヴァドール生まれの彼女は幼いころから音楽に親しみ、3歳でピアノを、 11歳でヴァイオリンを始めています。14歳の時、テレビの歌番組に出演したのをきっかけにプロへの道を歩き始めます。 次第に音楽活動の場を広げていきますが、結婚を機に一時活動を中止し、子育てに専念していました。その後、 小さなクラブなどでライヴ活動を復帰させた彼女は、1979年に念願のファーストアルバム<へクリアサォン>を発表します。 が、その後は暫くの間アルバム発売の機会がありませんでした。10年ほど後、やっとセカンドアルバム<クラーレ>を発表。 その後はコンスタンとにアルバムを発表し、このコーナー#3で紹介した1996年の<アントニオ・カルロス・ジョビンを歌う> によってその地位を確立したのです。どの後の活躍はみなさん後存知の通りです。数度に渡る来日公演、 ロン・カーターやヨー・ヨー・マ、またクリス・ボッティといった世界的なアーチストとの共演で、 今や彼女はボサ・ノヴァ界最高のディーヴァになっているのです。

 それでは紹介していきましょう。

 アカペラで唄う#1。この一曲でホーザの世界に引き込まれますね。そこから引き続くように始まる#2。 アントニオ・カルロス・ジョビンの曲です。優しく、 まるで子守唄でも唄っているかのようなホーザの歌声は気持ちを落ち着かせてくれます。ホーザ作曲の#3。 曲作りでも才能をみせていますね。まさに、ボサノヴァの継承者です。海にポッカリ浮かんでいるような気持ちになる#4。 気持ちいいですね。#5は、海から上がってうたた寝をしているような感じで更に気持ちよくなります。 シャンソン歌手にも良く取り上げられるロベルト・カルロス。#6もシャンソンでは <逢いびき>というタイトルで有名な彼が作曲したものです。シャンソンは3分間のドラマを唄うといわれますが、 ホーザの唄うこの曲には、時の大きな、ゆったりした流れを感じますね。昼下がりにパラソルのしたでコーヒーでも。 そんな情景が浮かんでくる#7。昔の歌謡曲にあったような哀愁帯びるメロディーで私世代には懐かしさを想い出させる#8。 ちょっとセンチになってしまいます。誰もいない舗装されていない道を石を蹴って歩いている子供が浮かんでくる#9。 終わり近くのスキャットが雰囲気を更に良くする#10。グラスと氷の音、 そしてお客様の話し声がそこかしこで聞こえる小さなクラブ。ホーザの唄をそんな場所で聴いているかのような#11。 地平線に沈む太陽を眺めながらトロピカルドリンクを口にしている人のシルエットが目に浮かぶ#12。 ひとつの物語を語ってるようなホーザの表現がとても魅力的な#13。波打ち際で嬉しそうに遊んでいる子供たち。 夏を惜しむかのように響くその声。そんな映像にピッタリの#14。 波がひいていく様にフェイドアウトしていくギターとともに#15でアルバムは終わります。

 如何でしたか?絵が頭の中に浮かんでくるようなアルバムでしたね。ホッとしました。気づかれた方も多いと思いますが、 ホーザはこのアルバムをギターの弾き語りで作っています。シンプルでとても良かったと思うのですが、あなたはどう感じるでしょうか。 アルバムの番号は、輸入盤が CD83646 で TELARC から、国内盤が UCCT-1163 でユニヴァーサルから出ています。 ブラジル音楽のコーナーに行ってみて下さい。

2006.8.13