ua x 菊地成孔

cure jazz


 夏も後半になって、これからは朝晩少し過ごし易くなりますね。さて、 秋に向かうこんな季節にピッタリなアルバムが登場しました。 それが今回紹介するジャズ・サックスプレイヤーの菊地成孔とジャンルを超えて活躍するUAとのコラボレーション、 <キュア・ジャズ>です。日本にまた一人、有望なジャズ歌手が登場したと言っても過言ではないほど完成されていて、 この夏一番の驚きになった、とても素敵なアルバムです。

 ここで、二人を知らない方のために少し二人を紹介してみましょう。
 菊地成孔は、1963年千葉県は銚子に生まれたジャズサックス奏者で作曲家。1984年にプロとしてデビューし、 色々なセッションバンドを経て山下洋輔グループのユニットに参加。その後、自らプロデュースして <デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン>、<スパンク・ハービー>などを主宰しています。 実兄が小説家の菊地秀行ということもあり、文才にも長けていて、2003年には初のエッセイ集<スペインの宇宙食>を出版、 翌2004年には東大の講師にもなるという多方面で活躍しています。
 一方のUAですが、こちらはもうご存知の方も多い事でしょう。1972年大阪生まれの彼女は、 1995年にシングルCD<HORIZON>でデビュー。2000年にはブランキー・ジェット・シティーの浅井健一と共にAJICO(アジコ)を結成。 2003年から2006年の春まで、NHK教育TV<ドレミノテレビ>に出演し、子供にも人気が出て、 活動の幅をどんどん広げていっているアーチストです。ちなみに、彼女の夫は、モデルで俳優の村上淳、 制作したアルバムの数は10枚を超えています。

 それでは紹介していきましょう。

 気だるい雰囲気でスタートする#1。早くもブランディでも飲みたくなってしまいます。ちょっとUAの発音が気になりますが、 この曲の持っている不思議な魅力が自分を違う世界に連れてってくれそうな#2。 始めの数分の超スローなテンポにイライラしながらも後半で夢を見させてくれる#3。 ジーン・リーを聴いている錯覚に陥る、ちょっと前衛っぽい#4。ポール・ウィリアムズの#5。美しい曲です。 軒先からスローモーションでこぼれ落ちる雫、それは、涙なのかと思う、そんな情景が浮かんできますね。 本当に美しいトラックです。広東語が自然に溶け込んでくる#6。海に浮かんでいる様ですね。菊地成孔のオリジナル#7。 懐かしいジャズの香りがします。アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲#8。菊地とUAそれぞれが歌いますが、 そのコントラストがブラジルの青い空の色を連想させます。アフリカンな#9。熱い物を感じますね。菊地のオリジナルです。 #10は教会音楽のような菊地のオリジナル。後半はアフリカンリズムも加わって見たことのない世界が開けていくようですね。 恋人との想い出を歌った#11。何時、誰が歌っているのを聴いても素敵な曲です。あなたはこの曲を聴くと誰を思い浮かべますか? 今の恋人?もう逢えなくなってしまった人?それとも・・・。アルバム最後の#12はフランス語で歌われます。チェンバロの響きと、 菊地とUAの歌うちょっと怪しげなフランス語が独特な雰囲気を醸し出してて、気持ちいいですね。 始めに飲んだブランディーが利いてきたかな?

 如何でしたか?とても素敵なアルバムでした。このまます〜っと眠ってしまいそうになりますね。タイトルが示すように、 このアルバムを聴いて、私たちの体の一部が治癒だれたのかも知れません。UAの歌唱は決して上手いとは思いませんが、 それをカヴァーする雰囲気があってとても魅力的です。アルバムの番号は、VICL61957 でビクターより出ています。ジャズか、 J-POPのコーナーに行ってみて下さい。

2006.8.26