Sonia Rosa

DEPOIS DO NOSSO TEMPO


 今年は本当に天候が不順ですね。この10月に入ってから夏日が史上最多を記録した地域が多いようです。
 さて、まだ夏が忘れられないあなたに夏の想い出に浸る時間をお届けしましょう。今回紹介するアルバムは、 27年振りに音楽シーンに帰ってきたボサノヴァのミューズ、ソ二ア・ローザ(正式にはソ二ア・ホーザ)の <デポイス・ド・ノッソ・テンポ>です。

 ソ二ア・ローザの名前を聞いて、懐かしいと思った方は相当いると思います。 何しろ日本で最初のボサノヴァ・ブームを拡大させた本人なんですから。また、 アニメファンには<ルパン3世>のエンディングソングなどでもお馴染でしょう。その彼女が、 なんと27年振りに音楽シーンに復帰、とても素敵なアルバムを発表してくれました。 この秋夏の想い出に浸りながら是非聴いて頂きたいと思います。

 まだ若い人には彼女を全く知らない人が多いと思いますので、ここで彼女をちょっと紹介してみましょう。

 1949年にブラジルはサンパウロで生まれた彼女は、祖父や母親の影響で音楽を始め、 12歳頃から作詞や作曲を始めるようになったようです。10代半ばには早くもステージを踏み、 <第3回MPBフェスティバル>という音楽祭にもエントリーしています。その後、1967年に最初のアルバム <ア・ボサ・ローザ・ソ二ア>をリリース。(このアルバムは今年日本でも復刻されたので、 既にお聴きになっている方も多いのではないでしょうか。)その後、TVやショーへの出演が増えていきます。 そんな噂を聞いた日本の音楽関係者がブラジルを訪れ、彼女と半年の契約を結ぶのです。 1969年に来日した彼女は折からのボサノヴァ・ブームの中、<本物>と言う事もあり、たちまち評判になって,TVやラジオ、 ジャズクラブへの出演依頼が殺到します。 そんな時知り合った渡辺貞夫や大野雄二らとの仕事で益々好調になった彼女は日本での生活を決意、数多くのCMソングを歌い、 アルバムを制作し、TV、ラジオに出演していきました。しかし、1979年にリリースした<サンバ・アモール> というアルバムを最後に子育てに専念、しばらく音楽の世界から離れて生活をしていたのです。しかし、 子供の世話も離れた事から、徐々に彼女の復帰を望む声が高くなって今回のアルバムを制作する事になったのです。

 それでは紹介していきましょう。

 森の中、または海辺のホテル。朝もやの中で目覚めた感じの#1。彼女の復帰を表現しているようなオープニングです。 心が洗われるようです。かつてのアントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムを思い出させるストリングスの編曲で心地よい#2。 アフリカの大草原を眺めている自分の絵を想像できませんか? 今やブラジル音楽界に欠かせぬ存在となったイヴァン・リンスとの共演#3。彼との共演が初めてとは思えない素敵な出来ばえです。 何故か知らないうちに体が動いている#4。スティーヴィー・ワンダーの曲は永遠に歌い継がれていく物が多いと何時も思うのですが、 この#5もその内のひとつ。ソ二アはこのコーナーでも以前に紹介した事のあるマイケル・ ブーブレのこの歌を聴いて録音したかったと言っています。 ギターと歌でオスカー・カストロ・ネイヴィスが参加して大人の雰囲気が溢れている#6。本当に素敵です。 ちょっと息抜きといった感じでホッとさせられる#7。抑えたリズムが気持ちいいですね。軽くステップでも踏みたくなる#8。 ちょっと歌謡曲っぽい#9。歌謡曲っていうのが古いですが。(笑)このアルバムのタイトルにもなっている#10。 <時を超えて>という意味なんですが、正に時を超えて甦ったソ二ア・ローザ。ストリングスが時の流れを表現しているようで、 とても美しい曲ですね。本来のアルバムはここで終わります。#11と#12は彼女の息子、DJ TAROのリミックス。 #11は#8の、#12は#7のリミックスですが、また違った顔を見せてくれていて素敵な仕上がりになっています。

 如何でしたか?夏の想い出に浸れたでしょうか?長い事ブランクがあったとは考えられないくらい素敵でした。アルバムの番号は、 AVCD61008 でエイべックスから出ています。ブラジル音楽か、ワールドミュージックのコーナーに行ってみて下さい。
 なお、彼女は、11月22日〜25日にブルーノート東京に出演します。このアルバムにも参加している オスカー・カストロ・ネイヴィスらと共に素晴らしいステージを観せてくれる予定です。お時間のある方はどうぞ足をお運び下さいね。

2006.10.22