Lorez Alexandria

THIS IS LREZ + LOREZ SINGS PRES


 この秋お勧めのアルバム第3弾は、このーコーナーNo.44でも紹介した事のあるロレス・アレキサンドリアの <ディス・イズ・ロレス+ロレス・シングス・プレス>です。タイトルでも分かる通り、2イン1のCDでとてもお得。 長い夜にピッタリです。

 以前紹介した時には健在だった彼女も、その直ぐ後にこの世を去ってしまいました。 その彼女のデビューアルバムとセカンドアルバムが一枚になって発売されました。 今聴いてみてもデビューとは思えぬほどの素晴らしさで、既に完成の域に達しています。 グラスを傾けて揺り椅子に座って聴いているシーンが目に浮かぶほど、正にこの秋の夜長にピッタリなアルバムです。

 彼女について簡単に触れておくと、1929年8月14日シカゴ生まれ、教会で長い事歌った後、 キングから<ディス・イズ・ロレス>でデビュー。その後、アーゴ、チェス、インパルス、PZAZZ、ディスカバリー、 ミューズなどのレーベルにレコーディングをし、2001年5月22日、ロス・アンジェルスの病院で死亡しました。 原因は腎臓病による合併症との事でした。日本にも度々来日し、その洗練された歌声を披露していました。

 それでは、紹介していきましょう。

 最初は彼女のデビューアルバム<ディス・イズ・ロレス>から。
 自己紹介のコーラスから始まる#1。コーラスもお洒落でとても洗練されています。 今デビューする新人でこれほど洗練された人がいるかを考えると昔のデビューが如何に大変なものであったか分かりますね。 続く#2は、本当に幸せな気持ちを唄ったバラッド。夜にピッタリなムードです。ミディアムテンポの#3。 終わり方がもう本当にオシャレ!そして、#4への続けけ方のなんて素敵な事。 その#4はとろけそうなロレスの声にメロメロです。軽くスウィングする#5。幸せな気分にさせてくれる唄はとてもいいもの。 この#6なんかまさにそんな感じ。最後のコーラスも気持ちを盛り上げてくれますね。一転してちょっと暗めの#7。 恋人が去ってしまった哀しさを空が泣いているなんて。こんな詩を書いてみたいですね。心地よくスウィングして唄う#8。 ロレスの唄のスタイルがもう確立しています。エラ・フィッツジェラルドとインクスポッツが1944年にヒットさせた#9。 とてもロマンチックですね。ロレスが何度もレコーディングしている#10。 怪しい雰囲気の演奏が彼女の唄をいっそう引き立てています。とてもモダンな#11。転調で雰囲気がガラッと変わる#12。 ここでファーストアルバムは終わります。
 そして、#13からがセカンドアルバム<ロレス・シングス・プレス>です。
 このアルバムはタイトルからもわかるように、サックス奏者のレスター・ヤングに捧げられています。 そして聴いていて分かる通り、ライブアルバムです。1957年の11月に<インティメイト・クラブ>という所で録音されています。 司会者に紹介されご機嫌なスウィングで唄うロレス。スタートとしては大成功ですね。レスター・ヤングといえば、 すぐに思い浮かべるのがビリー・ホリデイ。このアルバムはレスター・ヤングは勿論、 ビリー・ホリデイにも捧げられている事になるのですが、彼女の持ち唄を思い切りテンポを落として唄った#14では、 もう観客の心を捕らえていますね。レスター・ヤングのオリジナル#15。ここでロレスはスキャットだけで唄います。 観客も大ノリです。「あなたに参っちゃったけど、どうしてくれるの!」と強く迫るロレスの凄みが伝わってくる#16。 映画の為に作られたのですが、実際には歌なしで使われた悲劇?の曲#17。しかし、その後、 ビリー・ホリデイが吹き込んでスタンダードとなったんですから幸せな曲と言ってもいいでしょうね。 ロレスは感情を少し抑え目に唄っています。地味ながら淡い恋心を唄った傑作だと私は思っている#18。 ダンスパーティー、今だったらクラブでひときわ光っている子を見かけた時の胸のトキメキ。 そんな日が懐かしく感じられる今日この頃です。去年の恋の想い出を軽くスウィングして唄う#19。 1942年のミュージカル<アイスランド>の為に作られた#20。「あなたしかいない。」 という言葉の裏に秘められた内容がとても辛辣ですが、これはヴァースを聴かないと分かりません。 機会があったら是非聴いてみてくださいね。#21はレスター・ヤングのオリジナル。#15と同様、 ロレスはスキャットでのみ唄っています。途中で<ブラック・コーヒー>や<バイ・バイ・ブラックバード> の一節が入っていて楽しませてくれてます。そしてアルバム最後の#22。これもレスターのオリジナル。 唄っている途中で入るバンドメンバーの紹介も面白いですね。フェードアウトして録音が終わってしまうのが残念でなりません。

 如何でしたか?とてもデビューし立ての新人とは思えないロレスの感性。本当に素晴らしく、秋の夜長にピッタリでした。 アルバムの番号は、CDBGPD 174 でBGPレーベルでACEレコードから出ています。今の所国内盤発売の予定はなく輸入盤のみです。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2006.11.11