いちむじん

Rui


 秋も深まり、すっかり初冬の景色がちらほら見え隠れしてきました。この秋にお勧めするアルバムの第4弾は、 秋から冬に移っていくこの季節にピッタリのアルバム、ギター・デュオ、いちむじんの<ルイ>です。休みの日の午後、 暖かいココアでもすすりながら聴いてみて下さい。

 <いちむじん>を知らない方の為に、ここで彼らを紹介しておきましょう。
 宇高靖人と山下俊輔という二人が、桐朋学園芸術短期大学時代に知り合い結成したギター・デュオ。 第16回の日本重奏ギターコンクールで優勝した事から2005年に優勝記念ツアーを敢行。早くも同年7月には、 新国立劇場近江楽堂にて単独リサイタルを行い、クラシックからポピュラーまで幅広く音楽活動をしている、 今最も注目されているギターデュオです。

 それでは、紹介していきましょう。

 現代ブラジルを代表する作曲家でギタリストのパウロ・べリナティがアサド兄弟に書いた代表曲の#1。 初めからギターの二重奏の為に書かれただけあって、彼らのギターテクニックを存分に披露していますね。 ヘンデルのオペラ<リナルド>の第2幕で歌われる#2。恋人と引き裂かれて涙するアルミレーナの心情を良く表現している演奏ですね。 今年(2006年)の4月から四国NHK高知で放送されているTV番組<とさ金>のオープニングとエンディングを飾る#3。 いちむじんの為に書かれたオリジナルです。とても爽やかな演奏で気持ち良くなります。 #4は、関西TV・フジTV系のドラマ<ブスの瞳に恋してる>の挿入曲です。私は見た事がないのですが、ちょっと、 ホロッとさせられる場面に使われたのかもしれません。ラヴェルが最初はピアノ曲として作曲した#5。 ギターの優しい音色がこの曲にとても合っていると思いませんか?#6も私が見た事のないTVドラマ<アンフェア>の挿入曲。 殺人事件解決に奔走する女性刑事を描いたサスペンス・ドラマらしいのですが、いったいどんな場面に使われたのでしょう。 見てみたくなりました。#7と#8はイタリアで活躍中の作曲家、長岡克巳がフルートとマンドリンの為に書いた曲。 いちむじんの為に作曲者自らが編曲しています。#7は第一楽章ですが、人気の無い路地を吹き去っていく風。 ちょっと寂しげな風景を想像してしまいます。#8は早い曲ですが、その中に哀愁を感じます。追っても追っても追いつけない。 そんなもどかしさを感じますね。エンニオ・モリコーネが音楽を担当してカンヌ映画祭審査員特別大賞、 アカデミー賞外国語映画賞などを獲得、世界各国で大ヒットを記録した映画、<ニュー・シネマ・パラダイス>からの#9、10、11。 どの曲を聴いても、その場面が思い出されます。音楽だけを聴いていても涙が流れてきてしまいそうですね。 このアルバムのタイトルにもなっている#12。#7、8の作曲家、長岡克巳が大阪のギター・デュオ、<松岡>の為に書いた曲です。 タイトルは日本語で<涙>という意味だそうですが、それぞれのフレーズに、色々な涙のシーンが見えてくるようです。 とても素敵な演奏ですね。アルバム最後の#13は、ドビュッシーの有名曲です。誰もが一度は聴いた事があると思います。 いちむじんの原点がクラシック音楽にあるのが良く分かる演奏ですね。

 如何でしたか?とても心洗われるアルバムでした。たまには楽器だけの演奏もいいですね。そうそう、言い忘れましたが、 この<いちむじん>という名前の由来は、高知の方言で、<一所懸命>という意味だそうです。 デビューアルバムだけに正に一所懸命な演奏でした。今後も彼らの一所懸命さに期待したいところですね。アルバムの番号は、 PCCY60004でポニーキャ二オンから出ています。クラシックのコーナーに行ってみて下さい。

2006.11.25