HOLLY COLE

HOLLY COLE(シャレード)


 みなさんは<バグダッド・カフェ>という映画を覚えているでしょうか?その中でジェべッタ・スティールが歌っていた主題歌 <コーリング・ユー>は色々な歌手によってカバーされました。その<コーリング・ユー>を含んだアルバム <Blame It On My Youth>で日本デビューを飾ったのが今回紹介するホリー・コールです。
 彼女を知らない人の為に、ここで少し彼女を紹介しておきましょう。

 1963年にカナダで生まれた彼女はジャズの名門、バークリー音楽学院で学び歌手デビューを目指しますが、 不運にもデビュー直前に交通事故にあい顔に大きな怪我をおってしまいます。しかし、歌手になりたい一心でリハビリに励み、 1990年にアルバム<ガール・トーク>を発売、カナダで大きな評判になります。その次に発表したアルバムが前出の <ブレイム・イット・オン。マイ・ユース〜邦題・コーリング・ユー>でしたが、 このアルバムは日本でのデビュー・アルバムとなり、これが大ヒットを記録して、その年、 日本国内で一番売れたジャズアルバムになったのです。<コーリング・ユー>といえば、本家ジェべッタ・スティールではなく、 日本ではホリー・コールがオリジナルだと思った人も大変多くいたくらいなのです。 純粋なジャズ歌手とは少しイメージの違う彼女の人気はうなぎ登りに上がり、 来日公演はチケットが入手出来ないほどの人気になります。その後、数回来日しては素晴らしいステージを見せてくれていましたが、 アルバムの方は2003年以来ご無沙汰でした。その彼女が約3年半振りに届けてくれたアルバム、 <ホリー・コール〜邦題・シャレード>。3年以上を費やしただけあってとても素晴らしいアルバムになりました。 今年の1月半ばに再び来日して、ブルーノート東京で素晴らしいライブを展開したのは記憶に新しい所です。 それでは紹介していきましょう。

 ドラムの連打で始まる#1。いきなり夜のムード満開です。怪しい雰囲気の、タバコの煙が漂うバーで歌っている女性歌手。 そんな映画のワン・シーンが浮かんできそうなトラックです。このアルバムの邦題にもなっている#2。ご存知、 オードリー・へップバーンの主演映画<シャレード>の主題歌です。アップテンポで始まり、 ワルツ調になってまたアップテンポでおわるという映画同様、スリリングな曲になりました。 #3は公開当時オペラの様に歌だけで綴られたミュージカルとして話題になったもの。 カトリーヌ・ドゥヌーブの可憐でとても美しかったのを覚えている方も多いと思います。 クラシックを思わせるアレンジがとても素敵です。アントニオ・カルロス・ジョビンの傑作#4。水の流れが頭に浮かんできます。 瞑想の世界に入ったような感覚になりませんか?ペギー・リーが歌っていた#5。官能的な歌声にしびれてしまいそうです。 ホリー・コールが作詞・作曲した#6。ミュージカルの中で歌われそうな曲ですね。ピアノとのデュオ#7。 誰もが一度は感じる苦い恋。そんな女心が良く表現されたいます。心地よいリズムでスウィングする#8。 知らないうちに指を鳴らしていませんか?アンニュイな雰囲気漂う#9。 エセル・マーマンやジュディー・ガーランドの歌でお馴染みの#10。アルバム最後の#11の内容は、 届きそうで全く届かない憧れ人への恋心。みなさんもそんな経験が有るのではないでしょうか? 途中で入るアコーディオンが寂しさを助長します。ちょっと古いシャンソンのようでした。 テルミンという珍しい楽器を使っていたのに気付きましたか?最後にも出てきますが、何か怪しくて不安定な音がその楽器の音です。 2年ほど前に映画にもなって実際にその映画の中でテルミンという楽器を見た方も多いと思います。

 如何でしたか?とても素晴らしいアルバムでしたね。グラスを傾けながら葉巻をくゆらす。 そんな映画のシーンが見えてくるアルバムでした。まさに大人のアルバムでしたね。アルバムの番号は、TOCP-70180 で、 東芝EMIから出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2007.1.27