IRENE KRAL

WHERE IS LOVE?(恋の行方)


この秋、聴いてもらいたいお薦めCDの最終回は、涙が出るほど心に 浸みる、バラッドの花束、アイリーン・クラールの<WHERE IS LOVE?>( 恋の行方)を紹介しましょう。
アイリーン・クラールと言っても、ジャズ・ヴォーカル ファンの 人を除いては、分らない人が多いと思いますが、25年程前に、スウィン グ・ジャーナル誌のヴォーカル賞を取った実力派です。残念なことに21 年前にガンで亡くなっているのですが、その歌声は、今もこのCDに よって生き続けています。
彼女の歌唱スタイルはカーメン・マックレーに通じる所が多々あります 。白人らしく、カーメンよりさらっとしているのが特徴ですが、カーメン と同じく、歌詞を噛みしめて唄う表現力、メロディーを引き立てる表現力 の素晴らしさは他に追随を許しません。
とてもキュートなヴォーカリストで、ジャズ版シンガー・ソング・ライ ターのブロッサム・ディアリーが自作自演した#1。ディアリーとの表現 の違いを味わって下さい。ピアノの響きがとても悲しげな#2。あなたは 恋人の瞳の中に、何を見る事ができるでしょうか。本当に美しいメロディ ーを書くジョニー・マンデルの曲と、ミュージカル<ジプシー>からの曲 のメドレー#3。ちょっと危険な恋の歌#4。映画<スカーレット・アワ ーズ>の主題歌で、N.K.コールの歌でお馴染みの#5。カーメン・ マックレーも好んで取り上げていた#6。とても難しい曲ですが、よくこ なしています。#7は再びメドレーで唄われます。ついこの前まで、ニュ ー・ヨークで再演されていた、レナード・バーンスタイン作曲の<オン・ ザ・タウン>からの2曲ですが、まるで一つの曲の様に聞こえますね。こ のアルバムのタイトルにもなっている#8は、ミュージカル<オリバー> からのナンバー。そう言えば、あの名子役といわれた、マーク・レスター はどうしているのでしょうか。ちょっと横道に逸れてしまいましたね。ア ルバムの最後はジョニー・マンデルのこれまた美しい曲。でも、とっても 悲しくなっちゃいます。
このアルバムを通して、ピアノのアラン・ブロードベントの力の大きさ を忘れてはいけないと言う事を付け加えておきましょう。夜、ブランデー でも飲みながら聴いてみてはいかがでしょうか。
彼女はこの他にも、アラン・ブロードベントと組んで<ジェントル・レ イン>と言うアルバムも吹き込んでいますし、彼が参加したコンボで、< クラール・スペース>と言うアルバムも吹き込んでいます。これらのアル バムも秋の夜長にピッタリなので聴いてみて下さい。ただ、あまり寂しが り屋の人が聴くと涙が止まらなくなりそうなので、その辺はご注意を。


CDナンバーはTKCB-71235で、日本盤は徳間ジャパンコミュニケーシ ョンズから出ています。