HENRI SALVADOR

REVERENCE


 今回紹介するアンリ・サルヴァドールは、このコーナーの71で<JAZZ>とういアルバムを紹介した事があります。 もうあの時は80歳を超えていたのですが、紹介したアルバムは、 彼が過去に録音した中からジャズ系の物を選んだコンピレーション・アルバムでした。しかし、 今回紹介するアルバムは、今現在の彼の声を録音したアルバムなのです。今年(2007年)7月18日で、 なんと90歳を迎えようとしているアンリ・サルヴァドール。 2006年4月〜5月にかけて録音されたこのアルバム<レヴェランス〜音楽よ、ありがとう!>は、まさに、 彼が、彼自身、彼と共演したミュージシャンたち、そして、副題にもあるように、音楽にレヴェランス (日本語では畏敬という意味)を表したとても素晴らしいアルバムです。

 アンリ・サルヴァドールについては、このコーナー71を参考にしていただくとして、 早速このアルバムの紹介に移りましょう。

 いかにも長い人生を生き抜いてきた彼だから歌えるであろう#1。タイトル通り、 人生には喜びも悲しみも有るもの。「それが人生!」という事ですね。<悲しみよ、こんにちは> で有名なフランスの女流作家、フランソワーズ・サガン。彼女へのオマージュとして書かれた#2。 「ゆっくりとお休み」とサガンに語りかけている様に聞こえますね。 アントニオ・カルロス・ジョビンがボサ・ノヴァのヒントにしたと言われている曲、#3。 この曲は1957年のイタリア映画の挿入歌として作られたのですが、彼が生まれたのが南米ギアナだと知ると、 この曲調には納得させられますね。マレーネ・デートリッヒとイヴ・モンタンの為に書かれた#4。 ここではカエターノ・ヴェローゾとデュエットしています。ペンギンには何時もバラが一輪咲いていますが、 この曲の詩のように、愛のバラになりますかどうか。軽くスウィングしてジャズっぽい#5。 ボサ・ノヴァの中でも特に美しい作品#6。その美しさを失わないフランス語の歌詞を書いたのが、 日本でもかつて人気のあったジョルジュ・ムスタキ。本当に美しい詩で感激してしまいます。 皆さんも、じっくりと詩を味わって下さい。口づけひとつでアッという間に消えてしまう自分の夢を歌った#7。 ちょぴり不安定な彼の歌唱がこの曲に合っていますね。太陽が燦々と降り注ぐ国、イタリア。 そんなイメージが頭に浮かぶ#8。単純な様でいて奥が深い歌詞の#9。 時が経つってこんなものかも知れません。ちょっとセンチになった気持ちが良く表れている#10。 もう50年も前に書かれたレイ・チャールズの名曲#11。何時までたっても色男のアンリらしいですね。 年上の恋人との恋はず〜っと忘れられないものなのでしょう。そんな素敵な日々を想い出して歌う#12。 みなさんには、そんな経験有りますか?オリジナルのアルバムでは最後の曲になる#13。 #6と同じ曲ですが、ここではジルベルト・ジルとデュエットで歌われます。 今、ジルベルトはブラジルの文化大臣になっています。 日本でも文化の本当に分かる文部科学省の大臣が誕生したら、なんて素晴らしい事なんでしょう。 ほとんど無理な話なのが残念ですが。 さて、日本盤にボーナス・トラックとして入っているアルバム最後の曲#14も#6と同じです。 が、このトラックはラジオ番組の為に編集されたもの。アレンジも違ってとても素敵です。

 如何でしたか?とても素晴らしいアルバムでした。このアルバムは、エクストラ・トラックとして、 インタヴューと#14のパソコン再生用ムーヴィー・ファイルが入っていますので、 パソコンをお持ちの方は、こちらも楽しめると思います。アルバムの番号は、V2CP323で、 V2レーベルでコロンビアミュージックから発売されています。ワールドミュージック、シャンソン又は、 フレンチ・ポップスのコーナーに行ってみて下さい。


2007.5.19