Jane Monheit

SURRENDER


 梅雨時期はジメジメしていて、気持ちまでジメジメしてきてしまいそうです。 そんな季節にこんなアルバムは如何でしょうか?ジェーン・モンハイトのニュー・アルバム<サレンダー>です。

 ジェーン・モンハイトと聞いてもピンとこなかった方の為に、ここで少し彼女を紹介してみましょう。

 1977年、アメリカはロードアイランドに生まれた彼女は、叔母と祖母がプロの歌手、 父親がブルーグラスのバンジョー弾き、兄弟はギターを、そして母親は音楽ホールに勤めるという音楽一家に育ちました。 当然幼い頃から音楽に興味を持った事は言うまでもありません。特にエラ・フィツジェラルドに影響を受けていたようです。 高校生の時には既にロングアイランドのクラブで歌い始めていた彼女は、ジャズ・コーラス・グループ、 <NEW YORK VOICES>の創立メンバーでもあったピーター・エルドリッチにヴォーカルのトレーニングを受けるようになります。 そして、彼女が20歳の時に出場した1998年のセロニアス・モンク・コンペティションに出場し、見事、 準優勝に輝いたのでした。(ちなみに、この時の優勝者は、このページ#31で紹介しているテリー・ソーントン。 この時彼女は64歳で、30数年ぶりでの復帰でした。)これを機会に、2000年10月には待望のCDデビューを果たします。 このデビュー・アルバム<Never Never Land>は凄い評判になりビルボードのジャズチャートにランクイン、 以降出すアルバムはジャズ・アルバムチャートのトップ10常連となるのでした。 今回紹介する<サレンダー>は、 彼女がコンコード・レーベルに移籍して最初のアルバム。通算6枚目となる大変素晴らしい仕上がりとなりました。 

 それでは紹介していきましょう。

 いきなり爽やかな風が舞い込んでくる様なイメージが広がる#1。梅雨のジメジメ感が無くなってしまいますね。 タイトルにもなっている#2は、彼女のヴォーカルの指導者だったピーター・エルドリッジの作品。 ちょっとカントリー・ロックっぽいなんとも良い味わいです。再び爽やかな風を運んでくれる#3は、ブラジルの大物、 この曲の作者、イヴァン・リンスとのデュエットです。夢の世界へと連れて行ってくれるようですね。 ブラジル音楽のカヴァーアルバムでは結構な割合で選曲される#4。そのゆったり感が最高なのでしょう。勿論、 アランとマリリン・バーグマン夫妻の詩が素敵なのは言うまでもありませんが。 ここで少しリズミックな#5がボーっとしていた頭を覚ましてくれます。ちょっとセクシーな彼女のスキャットもいいですね。 大物のジャズ歌手も良く取り上げる#6。ここではセルジオ・メンデスがピアノでサポートしています。 映画<ティファニーで朝食を>の主題曲#7。彼女の歌とストリングスがその川のゆったり感を良く表していますが、 詩の内容は、1マイル以上もある川を、自分と恋人との距離として表現しているもの。「あ〜あ、・・・」 な〜んて思ってしまう人もいるかもしれません。軽いボサノヴァにアレンジされている#8。 スティーヴィー・ワンダーの有名曲ですが、こんなアレンジも何か心が軽くなった気分でいいですね。もう、 この出だしのハーモニカで決まり!ってな感じです。トゥーツ・シールマンのハーモニカって、 本当に世界を見せてくれます。パ〜ッと広がる風景。その風景が歌とマッチしてとても素晴らしいトラックになりました。 ポルトガル語はまだまだぎこちないのですが、それもまた味にしている所がいいですね。オリジナルアルバム最後の#10は、 オーケストラのバックでゆったりと終わります。このまま眠ってしまいたいような気持ちよさですね。この後、 日本制作盤ではボーナス・トラックが2曲付いています。

 如何でしたか?とてもゆったりとした気持ちになれて、梅雨のジメジメ感が一掃された感じがしましたね。 爽やかな心地良い風が吹き抜けて行ったみたいです。
 アルバムの番号は、輸入盤が08880723000507 でコンコード・レーベルから、国内盤は、UCCO-1002で ユニバーサル・クラシック&ジャズから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみてください。

2007.6.9