ちあきなおみ

それぞれのテーブル


 梅雨の時期は部屋で音楽をじっくりと聴きたいものです。ぱ〜っと明るい音楽も梅雨の鬱陶しさを払いのけてくれて良いのですが、 しっとりと落ち着いた音楽も、また良いものです。今回紹介するのは、ちあきなおみが25年以上前に録音したシャンソンを歌ったアルバム、 <それぞれのテーブル>です。

 ちあきなおみ。もう表舞台に出なくなってから何年が経つでしょうか。若い方は、知らないかもしれませんね。少し、 彼女についてお話しましょう。

 昭和22年、東京は板橋生まれの彼女は、4歳でタップを、5歳の時にはショーの殿堂だった日劇で初舞台を踏んでいます。その後、 米軍キャンプを回る等して13歳ではジャズ喫茶に出演、19歳でレコード会社のオーディションに合格し、昭和44年、 <雨に濡れた慕情>でコロムビアレコードからデビューします。当時のキャッチフレーズは、「魅惑のハスキーヴォイス」でした。 翌年発売した<4つのお願い>が大ヒット。紅白歌合戦にも出場し、ヒット曲を連発、昭和47年には<喝采>でレコード大賞を獲得します。 昭和53年に結婚して一時休業していましたが、昭和55年に今回紹介するアルバム<それぞれのテーブル>で復帰し、映画やドラマ、CM  等でも活躍。特に1989年に上演したオフ・ブロードウェイのミュージカル<LADY DAY>はオリジナルキャストのロネット・ マッキーを凌ぐと言われた素晴らしい舞台でした。その1年前には紅白にも復活していましたが、 1992年9月に最愛の夫が亡くなると突然芸能活動を停止してしまい今に至っています。今でも昭和52年に紅白で歌った <夜へ急ぐ人>の強烈なパフォーマンスは度々TVでも放送され、復活を望む声は後を絶ちません。

 それでは、紹介していきましょう。

 歌は3分間のドラマだとよく言われます。そのドラマが目に見えるような#1。 自分に置き換えてみるとちょっと淋しくなってしまいます。ドラムの低音が胸の奥まで響いてくる#2。 フランスでは1972年にダリダが歌って300万枚の大ヒットを記録した#3。日本でも昔、女優の岩下志麻が歌って話題になりました。 その時の歌詞とは違いますが、ドキッとする歌詞の内容に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。長いスランプを超えて、 またまた絶大な支持を受けているミシェル・ポルナレフ。#4は、そのポルナレフの歌。彼が歌うのとはまるで違う曲に聞こえます。 彼女の死後もファンが絶えないエディット・ピアフ。そのピアフが歌っていた#5。 レコードじゃなければ味わえない最後の箇所がいいですね。LP時代はここでA面が終わって次からがB面です。#6は、 ムッシュー100万ボルトと言われたジルベール・べコーの作曲。軽いレゲエのリズムでちょっと南国気分です。 日本にも多くのファンがいたエンリコ・マシアス。彼が書いた#7は、哀しみに絶えている女性の姿をよく表現していますね。 最後のハーモニカがより哀しみを助長させます。先ごろ来日し、 82 歳とは思えない素敵でエネルギッシュなステージを見せてくれたシャルル・アズナブール。彼の代表作で、 日本のシャンソン歌手も多くが取り上げている#8。新しい歌詞でお洒落な世界が甦りました。 そしてアルバム最後の#9もアズナブールの曲。本来は、叶わぬ愛に死を選ぶという内容なのですが、ここでは、 去っていく男を忘れてみせるという内容に変わっています。

 如何でしたか?雨の続く梅雨の季節。窓を閉め切って部屋でグラスでも傾けながら聴くにはピッタリなアルバムでした。 改めてちあきなおみの歌唱力の高さに驚かされますね。このシャンソンを歌ったアルバム<それぞれのテーブル>に続いて、 ジャズを歌った<THREE HUNDREDS CLUB>、ポルトガルのファドを歌った<待夢>も再発されましたので、 こちらも是非聴いてみて下さい。今回紹介した<それぞれのテーブル>のアルバム番号は、 VICL62347でビクター・エンタテイメントから出ています。歌謡曲または、JーPOPのコーナーに行ってみて下さい。

2007.7.15