Sophie Milman

make someone happy


 梅雨明けが遅くなった今年も、今はやはり夏。蒸し蒸しした日が続いています。そんな時、 冷房の効いた部屋で、ちょっとジャズクラブに行った様な雰囲気でグラスを傾けるのも良いものです。 今回紹介するソフィー・ミルマンの新譜、<メイク・サムワン・ハッピー>は、 そんな大人の雰囲気にピッタリなアルバムです。

 ソフィー・ミルマン。この名前に聞き覚えのある方は良くこのコーナーをご覧になってくれている方でしょう。 1年4ヶ月前(2006.4.9.)のこのコーナーで彼女のデビューアルバムを紹介したからです。で、今回紹介しようか、 少し迷いました。と言うのも、前回からあまり時が経っていないからです。でも、このアルバムを聴いて、 彼女の成長ぶりに驚き、これはやはり紹介しないとと思った次第です。

 このアルバムは、デビューアルバムから約4年経った今年(2007年)の初夏に発売になりましたが、 早くも話題沸騰で、このアルバムをコンセプトとしたワールド・ツアーが決定しています。 このコーナーで彼女のデビューアルバムを紹介したのが昨年4月。日本版の発売は昨年秋でしたが、 地元カナダでは2004年に発売されて話題になったものでした。ですから、 このセカンドアルバムまでは先にも言いましたように約4年経っている訳で、彼女の成長の後がはっきり分かる、 とても素敵なアルバムになっています。
 彼女、ソフィー・ミルマンについては、以前紹介した記事、No.141を参考にしていただくとして、 早速アルバムの紹介に移りましょう。

 何度も再演されているミュージカルの傑作、<オクラホマ>からの#1。もう余裕の歌唱です。 ボサ・アレンジの#2。40代〜50代のAOR好きには懐かしいマーク・ジョーダンの作曲です。 小さなジャズクラブで聴いているようで、とてもリラックスできますね。何時もこのコーナーで言っていますが、 スティーヴィー・ワンダーの曲は、名曲揃いです。その中でも、この#3を取り上げているアーチストはあまりいません。 トゥーツ・シールマンズ、リー・オスカーに続くハーモニカ奏者のグレゴリー・ マレットの演奏が効果的に彼女の歌を盛り上げています。ジプシーの香りが漂う#4。 彼女の持ち味を良く出しています。ミュージカル<屋根の上のヴァイオリン弾き> の中で歌われる#5がこんなアレンジで甦るなんて。驚き!です。#6は、エラ・フィツジェラルドや チェット・ベイカーのゆったりとしたのも好きでしたが、ここでのミディアム・テンポも悪くありません。 コードの中で遊ぶソフィーがまだデビュー2作目とは思えません。<ド・レ・ミ> というミュージカルの中で歌われた#7。随分速度を落としたアレンジが意表をつきますね。 詩をしっかりと噛み締めて歌う#8。今の彼女、そのものと言った歌ですね。ボサとフランス語ってとても合うな、 と感じさせてくれる#9。彼女のフランス語の発音もちゃんとしていますね。少し前に、 これもカナダのシンガー、マイケル・ブーブレがカヴァーして話題になった#10。 今までのカヴァーとはアレンジが大分変わっていて、不思議な魅力を感じさせます。 夜の帳に包まれている思いです。チャチャチャが踊りたくなる#11。昔、 ラジオで全米トップ40に耳を傾けていた中学生の時に聞いたこの曲。全く違うアレンジにぶっ飛びです。 #12も、この曲ではめったに行なわないラテン・アレンジで驚きです。オリジナルのアルバムでは最後の#13。 彼女のルーツを感じさせますね。何語か分からないのですが、ヘブライ語でしょうか? 次の2曲は日本盤のボーナストラックです。#14は、#9の英語ヴァージョン。 私はフランス語のヴァージョンが好きですが、皆さんはどちらがお好きですか? 後ろで地味に囁いているハモンドの音色がとてもいい#15。 まだ本物の大人になりきっていない彼女の背伸びした歌がアルバムに入らなかった理由でしょうか。

 如何でしたか?夜、グラスを傾けるのにピッタリなアルバムでした。夜景の見える部屋で、 照明を落として聴いたら、気分も最高になることでしょう。
 アルバムの番号は、VICJ61446でビクターエンタテインメントから発売されています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

 なお、彼女は、来月(2007年8月)6日に名古屋ブルーノートで、翌7日〜11日までは、 ブルーノート東京でライヴを行ないます。時間がある方は、 是非足を運んで彼女の生の声を堪能してみては如何でしょうか。

2007.7.28