コンピレーション

This is BOSSA NOVA


 今年の夏は猛暑続き。体調を崩されている方も多い事と思います。そんな時には、 エアコンの効いた部屋での〜んびりしていたいものです。
 今回紹介するアルバムは、夏にはピッタリな、ボサ・ノヴァ。今東京で公開中の映画 <This is BOSSA NOVA>のオフィシャル・コンピレーション・アルバム(サウンド・ トラックとは違います) <ジス・イズ・ボッサ・ノーヴァ>です。

 アルバムを紹介する前に、この映画について少し触れておきましょう。
 この<This is BOSSA NOVA>は、2005年にブラジルで公開された映画です。原題は、 <Coisa Mais Linda-Historia e Casos da Bossa Nova>といい、脚本と監督をパウロ・チアゴが担当し、 ボサ・ノヴァ黄金期に活躍したカルロス・リラとホベルト・メネスカルが共同でプロデュースと映画上での進行役を担当しています。 ボサ・ノヴァ誕生からその歴史や背景が分かる映画で、この所毎年来日しているボサ・ノヴァ生みの親のひとり、 ジョアン・ジルベルトや今年生誕80年を迎えた故、アントニオ・カルロス・ジョビンを始めとして貴重な映像が満載です。 残念ながら、この映画のサウンド・トラックは今のところ制作されておらず、今回、日本の映画公開に向けて作られたのが、 このオフィシャル・コンピレーション・アルバムなのです。演奏者は映画の中とは違いますが、 全て映画で使われている曲で構成されています。

 それでは、紹介していきましょう。

 映画の案内役で作曲家、歌手のカルロス・リラが歌うボサ・ノヴァの名曲2曲のメドレー#1。 彼と作詞家のヴィニシウス・ヂ・モライスとが作った曲ですが、新たに録音し直したヴァージョンです。 メドレーの2曲目は映画の原題でもあり、オープニング・テーマとして流れます。 この#1でボサ・ノヴァの世界に深くはまり込んでしまいますね。この映画二人目の案内役ホベルト・ メネスカルはギタリストで作曲家。アレンジャーでもある彼が作った#2では、 作曲やアレンジで有名なデオダートの若いころの演奏が聞けるのが嬉しいですね。 #3は、ボサ・ノヴァ界で最高のトリオと言われたジンボ・トリオの演奏。懐かしい香りがします。 キャロル・サボヤの歌う#4。何となく気だるい雰囲気がいいですね。 このコーナーでも取り上げた事のあるブラジル歌謡界の女王、ガル・コスタが歌う#5。彼女の歌声を聞くと、 何故か行った事もないブラジルに居るような気分になるから不思議です。 デオダートとほぼ同時期の出発でありながら地味な活動をしていたオスカー・カストルネヴィス。しかし、 1990年代からはデオダートよりむしろ活躍が目立ちます。彼が1980年代後半に作った#6は、 新しいボサ・ノヴァの誕生とも言える曲に思えるのですが、如何でしょうか?もう誰でもが知っている曲、#7。 歌っているのは、かつてエドゥ・ロボの奥方だったワンダ・サーです。セルジオ・メンデスとブラジル65に参加し、 今でも活躍している彼女は、ガル・コスタと双璧をなすブラジル音楽界のマダムです。 何処となく貫禄を感じる歌い方ですね。タイトル通り夢を見ているような#8。 アントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲の一つですが、映画の中では、彼の息子、 パウロ・ジョビンが弾き語りでうたっているという事です。ここではアメリカ人の歌手、 パメラ・ドリッグスが歌っています。ボサ・ノヴァの歴史が始まった曲と言われている#9。 ここでの演奏は先にも出てきましたジンボ・トリオですが、映画ではこの曲を始めて録音したブラジル音楽界の宝、 エリゼッチ・カルドーゾとナラ・レオンの歌声が流れるそうです。もう楽しみでなりません。ジョビン作曲の#10。 まるで夢の中を彷徨っているような感じです。詩の内容は、曲と違ってとても辛辣です。 歌っているのは現代ブラジルの歌姫、ジョイスの娘のアナ・マルチンス。 ギターとのデュオが不思議な雰囲気を増長しますね。昨年亡くなったギタリストのバーデン・パウウェル。 かれの息子で、これもまたギタリストのルイ・マルセル・パウウェルと、私が生まれた1955年に歌手デビューした故、 シルビア・テリスの娘、クラウジア・テリスの2代目同士のデュオ#11。素敵です。#12は再びジンボ・トリオの演奏。 ちょっと元気あり過ぎ?ですかね。映画の中では、ジョアン・ジルベルト、アストラッド・ジルベルト、 そしてフランク・シナトラの映像を観る事が出来るそうです。こちらを観たいですね。この映画の案内役、 カルロス・リラの娘、ケイ・リラが歌う#13。とても魅力的な声です。蛙の子は、やはり蛙なのでしょうか。 先にも少し紹介した、現代ブラジルの歌姫ジョイスが歌う#14。余裕を感じる歌声ですね。 人生の流れをアマゾン河の流れに喩えて歌う#15。#4で登場したキャロル・サボヤが再び歌います。 えっ?アマゾネスではありませんよ、念のため。(笑)アルバム最後の#16はカルロス・リラが不安定な声で歌います。 ボサ・ノヴァって、この不安定さも一つの魅力だと思うんですが、どうでしょう。この曲は、 映画の終わり近くで夕闇迫る海岸で彼が弾き語りで歌うそうです。映像が見えてきそうですね。

 如何でしたか?早く映画を観たくなったんじゃないでしょうか。アルバムの番号は、VICP63855でビクターから出ています。 ブラジルか、サントラのコーナーに行ってみて下さい。
 なお、映画<This is BOSSA NOVA>は、現在渋谷にある映画館、Q−AXシネマで上映中。順次、大阪、神戸、京都、 名古屋、札幌、福岡で公開予定です。みなさんも、是非ご覧下さいね。

2007.8.18