compilation

Sing!


 昼間は少し汗ばむ日もありますが、季節は秋。朝晩は風も心地よく、過ごし易くなりました。 こんな秋の夜長には、ジャズ・ヴォーカルでも聴きながらグラスを傾けたいものです。
 今回紹介するアルバムは、そんな秋の夜長にピッタリ。 RCAレーベルでかつて出された数々のアルバムからのコンピレーション、<Sing!>です。このアルバム、 2枚組みで、アーチストも古くはリナ・ホーン、リー・ワイリーといった所から、最近のイリアーヌまで、 歌唱スタイルも様々な歌手達を集めた、大変お得なアルバムになっています。

 それではアーチストの登場順に紹介していきましょう。なお、紹介文中のDはディスクb、#は曲順を表しています。 (例えば、1枚目のディスク、5曲目だったらDー1#5と言った具合です。)

 トップバッターはRCAレーベルに2枚のアルバムを残しているリー・ワイリー。映画<カザブランカ> の主題歌D-1#1はヴァースからしっとりと歌い、D-2#17ではちょっとセンチになってしまうような感じで素敵です。 ゴルフのトーナメント主催者としても有名だったダイナ・ショア。彼女の歌う D-1#2は彼女が放った最初のミリオンセラー。 初めに出てくるクラリネットとトランペットが官能的です。D-2#4はその歌唱に知的さが溢れています。 パンチのある歌声D-1#3で登場のローズマリー・クルーニー。妹と結成した「クルーニー・シスターズ」 としてスタートを切って、ソロになるとミリオンヒットを連発、 映画出演も多くこなしていたが離婚を機に一時芸能界を引退。その後復帰してからは、 彼女の持ち味であるしっとりした歌声でジャズ・ヴォーカルを聴かせて我々を喜ばせてくれましたが数年前に亡くなりました。 D-2#13はラテンの名曲<キエンセラ>。ショーを見ているような気分になりますね。 優しく真面目な性格が窺われるテディー・キング。D−1#4でもその辺りが分かります。 いきなりイタリア語の語りが入ってビックリしてしまうD-1#5。 日本でもお馴染みのヘレン・メリルがRCAレーベルに唯一残した<ローマのナイト・クラブで> というアルバムからのものです。ちょっとゾクゾクしてしまうトラックですね。 最近もアンドレア・ボチェッリによって録音された曲D-1#6は、元々、このへレン・オコーネルのミリオンヒット。 前半はしっとりと、中盤からリズミックになって快適ですね。 彼女はD-2#3でもビックバンドをバックに爽快に歌っています。数年前に亡くなったレイ・チャールズの十八番だったD-1#7。 ここではレイ・チャールズとは違ったアプローチで、まるでキャバレーで聴いているかのようですね。 ジャズ歌手というよりエンタテナーという言葉がピッタリなリナ・ホーン。彼女の代名詞ともなっている曲、 D1-#8。ここでは若かりし頃の歌声をp聴くことができます。晩年のドスの聴いた歌声とは違って可憐ですね。 その可憐な歌声はD-2#5でも聴く事ができます。D-1#9のジェイ・P・モーガンはビッグバンドで豪快に歌います。 マニアの間では数万円単位で取引されていたオードリー・モリスの<ビストロ・バラッズ>。 その中に収められていたD-1#10は彼女のピアノと歌をしっとりと味わう事ができます。 ナット・キング・コールの歌でお馴染みのD-1#11は100万ドルの脚線美を誇ったダイアン・キャロルが歌います。 ミュージカルや映画にも出演が多い彼女ならではの歌い方で、ショー的な要素を強く感じますね。 D-1#12は説明もいらないほど有名なジャズ歌手、カーメン・マックレイの、これまた非の打ち所が無い位素晴らしい歌唱です。 カーメン晩年の傑作アルバム<シングス・モンク>から。彼女は今もミュージカルの世界で活躍するスティーヴン・ ソンドハイムの難曲D-2#15を詩を噛み締めながら歌っています。これはサラ・ヴォーンが亡くなった後に吹き込んだサラ・ ヴォーンへのオマージュ的なアルバムからのものです。トーチ・シンガーだったヘレン・モーガンの物語、 <ヘレン・モーガン・ストーリー>で、モーガン役のアン・ブライスの吹き替えで有名になったゴギ・グラント。 彼女の真面目な歌が聴けるD-1#13。映画やラスベガスのショーで活躍したアン・マーグレット。D-1#14は映画 <ティファニーで朝食を>の主題曲。映画ではオードリー・ヘップバーンがギターを弾きながら歌ってましたっけ。 コーラス好きには圧倒的な人気を誇ったボズウェル・シスターズ。その長姉のコニー・ボズウェルが歌うD-1#15。 デキシーランドジャズ風な気持ちいい歌唱です。ビル・エヴァンスとの共演で日本にもファンの多いモニカ・ゼタールンド。 D-1#16は彼女がサンバのリズムで歌います。ミュージカルで活躍していたジュリー・ウィルソン。 D-1#17ではミュージカルでは聴くことの出来ない彼女のちょっとセンチな歌声が響きます。 一時は幻の歌手扱いされていたミンディー・カーソン。 まだLP時代にD- 1#18の入ったEP盤が特典として付いた事から新たなファンが急増しました。誰が聴いても安心して聴ける。 そんな歌手、ミンディー・カーソン。お酒が美味しくなりますね。最近もスウィング・ジャーナルのジャズ・ ディスク大賞でヴォーカル賞を受賞(2004年、2006年)したイリアーヌ。元々はピアニストですが、歌も中々のもの。 D-1#19、D-2#1では軽くボサ・ノヴァタッチで聴かせ、ホッとさせてくれます。ガーシュインのオペラ<ポーギーとべス>。 その中のD-1#20がデビューアルバムに収録されて大ヒットを記録したニーナ・シモン。 ここではライヴとは思えないほどの完璧な歌唱を聴かせてくれます。対照的に、D-2#20では軽くバカラックの曲を聴かせて、 彼女のマルチな才能を感じさせますね。去年亡くなったアニタ・オデイ。 彼女の初期の歌声がD-2#2で聴けるのはとても幸せです。この頃から格好いい歌を歌う人だったんですね。 私の大好きな歌手クレオ・レイン。大分日本では人気薄ですが、海外での人気は凄いものです。 D-2#6では彼女のテクニックが随所に表れて素晴らしいですね。歌そのものにセクシーさを感じるキャシー・バー。 D- 2#7を聴いているとナイト・クラブにいるようです。D-2#8はダイアン・リーブスやカサンドラ・ ウィルソンの陰に隠れてしまった観のあるヴァネッサ・ルービンがベースのみをバックに歌ったもの。 もっと注目されてもいいと思うのですが。良く聴くと実に上手い歌手、シャーリーン・バートレイ。 D-2#9での囁くような歌い方にお手上げですね。美空ひばりも歌ったD-2#10。 それだけ多くの歌手に取り上げられているこの歌をここで聴かせてくれるのはアン・ギルバートです。 冗談音楽といえばスパイク・ジョーンズ楽団が有名ですが、そこの出身へレン・ グレイコが冗談音楽とは似ても似つかない歌声をD-2#11 で披露してくれています。ペギー・リーの歌い方とは違っていて、 こちらにも魅力を感じます。女優として有名なモーリン・オハラ。D-2#12は彼女の歌の上手さも分かるトラックです。 ちょっと真面目すぎて詰まらない方もいるかとは思いますが・・・。<プリティー> という決まり文句で紹介されていたキティー・カレン。D-2#14ではスウィンギーに歌いまくります。70年ほど前 (これは本当に凄い!)にベニー・グッドマン楽団を退団したヘレン・ウォード。 D-2#16は気だるい雰囲気がたまらなくいいです。 有名曲D-2#18をさらりと歌うラヴァーン・スミスはピアノの弾き語りを得意としていた歌手。 地味ながらその表現力は素晴らしいものがありますね。D-2#19もピアノ弾き語りのナンシー・マルコム。 器用さが表れていますね。

 如何でしたか?秋の夜長にピッタリだったでしょ。しかも2枚組みで¥2100のお得さ。 今すぐCDショップに直行してお買い求め下さいね。
 アルバムの番号は、BVCJ38143〜4でBMG JAPANから発売になっています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2007.9.23