Queen Latifah

Trav'lin' Light


 トップページをみて驚かれた方も多いのではないでしょうか。と言うのも、ラップの女王と書いてしまったからです。 しかし、それは紛れもない事実。クイーン・ラティファはラップからスタートし、 今では女優もこなす大物になっているのですから。

 そういう彼女を知らない人の為に、ここで少し彼女を紹介しましょう。

 1970年と言いますから、日本では万国博覧会が大阪で開催された年の3月にアメリカはニュー・ジャージー州 ニュー・アークで生まれたクイーン・ラティファは、1989年、アルバム<オール・へイル・ザ・クイーン>でデビュー、 5年後の1994年にはアルバム<ブラック・レイン>でグラミー賞を獲得し、早くも音楽界の頂点に立ちます。その後、 2002年暮れに全米で公開され、女看守、ママ・モートン役で出演したミュージカル映画<シカゴ> ではアカデミー賞助演女優賞にまでノミネートされてしまうのです。今までにTVも含めて出演した映像作品 (ナレーションを含む)は20本以上に上ります。そして、日本では今月末から公開の映画<ヘアスプレイ>にも、 モーターマウス・メイベルという重要な役で出演して、その存在を大きくアピールしています。
 さて、音楽の方はというと、先にも言ったようにラップの女王だった彼女に前作<The Dana Owens Album> 辺りから変化が見られるようになったのです。 これは映画<シカゴ>に出演した際にラップではない楽曲を歌ったのがきっかけになっているのかもしれませんが、 エンタテナーへの方向性が強く現われて来たのです。今回紹介するアルバム<トラヴェリン・ライト>もそうですが、 ラップとは程遠い、大人の感覚に溢れるアルバムに仕上がっています。
 そしてこの秋、彼女は<トラヴェリン・ライト・ツアー>と銘打って全米コンサート・ツアーを始めたばかりです。

 それでは、クイーン・ラティファ8枚目のアルバム<トラヴェリン・ライト>を紹介していきましょう。

 オリジナル、フィービー・スノーのイメージそのままに歌う#1。 これを聴いた瞬間に今までラッパーの彼女しかしらない人はぶっ飛んでしまうでしょうね。とても素敵なトラックです。 スティーヴィー・ワンダーのハーモニカで始まる#2。カーメン・マックレイがお好きな方には、 このトラックでの彼女の歌がカーメンに影響されている事が直ぐに分かりますね。 アントニオ・カルロス・ジョビン作の#3は、本当に多くの演奏家が取り上げている名曲です。 クイーン・ラティファの歌も心地よくて最高です。このトラックでのハーモニカはトゥーツ・シルマンズです。 カントリー調の#4。後半はブルース調になって気分も盛り上がります。ペギー・リーという歌手は、 作曲家としても数多くの仕事をしてきましたが、この#5もその内のひとつ。 ラティファはビッグバンドをバックにスウィングして豪快に歌っています。 ハリケーンの様にもの凄い勢いで歌いまくる#6。格好いいです。このアルバムのタイトルにもなっている#7。 ビリー・ホリデイを始めとして、女性のジャズ歌手が好んで取り上げているこの曲。 ラティファも感情たっぷりと歌っています。 ニーナ・シモン作の#8は彼女の強いアクを取り除いた感じでジャジーに歌います。 70年代後半から80年代にかけて大ブームになったAOR。その中でも10CC(テン・シー・シー)は、 爽やかな風が吹き抜けるような感じで日本では人気がありました。 彼女は彼らのヒット曲#9を大舞台でコンサートをやっているような感じで歌っています。 最初に出てくるオルガンを聴いて懐かしさを感じたあなた。そう、スモーキー・ロビンソンの#10です。 ラティファの歌い方を始めとして、アレンジまでもがあの時代に戻った様でもうウキウキです。 このアルバムで一番ファンキーな#11。ソウルファンの心に何時までも残っているダニー・ハザウェイの歌声。 その作品を一番愛したのがロバータ・フラックだったかもしれません。#12は、ロバータも歌っているナンバーですが、 ラティファは緩急交えてこの曲に新たな息を吹き込んだ感じがします。このアルバムでは最後の曲#13は、 彼女が出演している映画<へアスプレイ>から彼女が演じるモーターマウス・メイベルが歌う曲。 コーラスをバックにとても豪華ですね。 さて、このコーナーを読んで下さっている方には耳寄りなニュースをここでお知らせしましょう。実は、 このアルバムには14番目のトラックが存在します。これは、1940年にインク・スポッツがヒットさせた <JAVA JIVE>という曲なの ですが、マンハッタン・トランスファーを始めとして多くの歌手がカバーしている曲です。 ラティファが歌うその曲を聴きたい方は、クイーン・ラティファのウェブサイト、 http://www.QueenLatifah.com に行って是非聴いてください。とって も素敵なナンバーです。

 如何でしたか?ラップの女王とは思えないほど、秋に相応しいジャジーなアルバムに仕上がっていましたね。 トミー・リピューマ、ロン・フェアーといったプロデューサーを迎えて一流のミュージシャンと共に出来たこのアルバム <トラヴェリン・ライト>。この秋必聴のアルバムです。アルバムの番号は、 0602517365049(輸入盤)、 UCCV-1102(国内盤)でヴァーヴ〜ユニヴァーサルより出ています。ソウル、R&Bのコーナーに行ってみて下さい。

2007.10.13、10.16改