HERBIE HANCOCK

RIVER the joni letter


 立冬も過ぎて益々秋は深まり寒い日々が続いています。だんだん部屋に籠もりがちになりますね。 暖かな部屋でグラスを傾けながらゆったりと音楽を聴く。素敵です。 そんな時に流れていたらとてもお洒落なアルバムを紹介しましょう。ジャズピアノ界の大物、 ハービー・ハンコックのニュー・アルバム、<リヴァー  〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ>です。

 ハービー・ハンコックについては、もう何も説明しなくても良いと思うのですが、 知らない方の為に少し説明しておきましょう。

 1940年アメリカのイリノイ州シカゴに生まれた彼は7歳でピアノを始めました。 1960年にドンナルド・バードのクインテットに参加したのを皮切りに、 1962年にはブルーノート・レーベルからアルバム<Takin' Off>を発表、 1963年にマイルス・デイヴィスのコンボに抜擢され1968年まで在籍します。 1965年ハービー名義のアルバム<処女航海>で俄然注目を浴びた彼は、その後、 アコースティック、フュージョンの両分野で今現在も活躍するジャズ、フュージョン界の大スターです。 彼のアルバムは現在までに50枚近くにのぼり、この<リヴァー>で聴かれるアコースティックな作品は、 1998年に話題を呼んだ<ガーシュイン・ワールド>以来、実に9年ぶりの事です。タイトルからも分かるように、 今回のアルバムは、歌手復帰したジョニ・ミッチェルへの敬意を払った作品となっています。

 それでは紹介していきましょう。

 ノラ・ジョーンズをヴォーカルに迎えた#1。 ジョニ・ミッチェルがジャズへのアプローチを始めた1974年発表の記念碑的な作品のタイトル曲ですが、 ウ〜ムと唸るほど感心してしまう出来栄えです。 ノラ・ジョーンズが期待以上の歌唱を聴かせてくれているのも嬉しいですね。 ジョニが#1の翌年発表した<夏草の誘い>からの#2。クレジットを見て驚いた方も多いと思いますが、 歌っているのはティナ・ターナー。彼女の抑えた歌唱がとても素敵ですね。ジョニ・ミッチェルの代表作は? と聞かれたら、おそらく全ての人がこの曲を挙げるであろう#3。 ハービーのピアノとウェイン・ショーターのサックスが泣かせてくれます。タイトル曲の#4は、 最近話題のヴォーカリスト、コリーヌ・ベイリー・レイが歌うこの季節にピッタリな曲です。 ショーターのサックスが物語を引き出す#5。ジョニ自身がヴォーカルとして参加している#6。 ジョニのオリジナルアルバムに入っていた曲とは全く違ったアプローチがとても素敵です。 #7はジョニのお気に入り、デューク・エリントンの曲。ハービーのピアノが冴えてます。 新作<The New Bossa Nova>でもジョニの曲を取り上げていたルシアーナ・ソーザ。 彼女の歌う#8は歌に描かれている物語がしっかり絵になって見えてきます。 #9はこのアルバムに参加しているウィエイン・ショーターの作品。マイルスの同名アルバムのあの曲です。 ハービーとウェイン・ショーターが共に参加していたマイルスのオリジナルと比べてみても面白いかも知れませんね。 オリジナルとしては最後の曲#10。 ジョニ・ミッチェルと同じカナダ出身の詩人で作曲家のレナード・コーエンが朗読するこのトラックには 「ぶっ飛んだ!」といった表現がピッタリでしょう。本当に感銘を受けます。このトラックを聴いただけで、 このアルバムを買って良かったなと思えるでしょう。 ボーナス・トラックの#11は編曲としてはあまり面白くはありませんが、 ジョニに敬意を表したアルバムの最後には相応しいかもしれません。私個人的には、やはり、 レナード・コーエンの#10で終わらせて欲しかったのですが。

 如何でしたか?秋から初冬にかけて、ゆっくりと腰を落ち着けながら聴くには最適のアルバムではないでしょうか。 とても完成されたアルバムでしたね。
 アルバムの番号は、UCCV1100でユニバーサルミュージックから出ています。 ジャズピアノのコーナーに行ってみて下さい。

2007.11.17