弘田三枝子

MICO Jazz Live in Kitakyushu


 弘田三枝子って聞いて懐かしく思うのは決して私だけではないでしょう。何しろ、 多くのヒット曲がありながら数年前までの話題と言ったら整形のことばかり。「彼女の歌は何処へ?」 という声も、その事で話題に上るたびに多く聞かされます。しかし、ご安心あれ。ミコ (弘田三枝子の愛称)は健在です。
 今回紹介するアルバムはおよそ10年前の1997年11月8〜9日に北九州市の小倉にあるライヴハウス <BIGBAND>で収録されたもので、翌年300枚の限定で自主制作、発売されたものの再発です。
 最近、整形ではなく音楽の話題でも多くその記事を見かけるようになったミコですが、 このライヴ盤の再発前にも<MICO JAZZING><My Tapestry>という素晴らしいアルバムを録音、 発売しています。今回紹介するにあたってどちらにしようかと迷いましたが、 MICOはやはりライヴにおいて本領発揮と思っている私は、 この再発されたライヴ盤をお勧めとして紹介する事にした訳です。

 さて、弘田三枝子。彼女を知らない人も多くいる事でしょう。そこで、 少し彼女を紹介したいと思います。

 1947年東京は池尻で生まれた彼女は今年61歳。 小さな時より進駐軍のキャンプで歌っていた彼女は1961年に<子供ぢゃないの>でレコードデビュー。 当時14歳という若さでした。翌1962年に発表したコニー・フランシスのカヴァー、 <ヴァケーション>が大ヒット。私の年代の当時の子供までもが 「ヴィー・エイ・シー・エイ・ティアイオーエヌ」って口ずさむくらいの大ヒットだったんです。 そしてこの年、田辺製薬のTVコマーシャルに登場、「アスパラで生き抜こう!」 「アスパラでやり抜こう!」が流行語になるほどでした。 1965年にはニュー・ポート・ジャズ・フェスティバルに出演を果たします。彼女は3日目のトリを務め、 ビリー・テイラー・トリオをバックに見事な歌声を披露しています。 この年はカーメン・マックレイやフランク・シナトラが出演した年で、 それからしても大きな扱いだった事が分かりますね。この時に収録したアルバムも発売されていますが、 とても10代の歌手が歌っているとは思えないほど素晴らしいものでした。 1969年には<人形の家>が大ヒット、翌年にはダイエットに成功した?彼女の著書、 <ミコのカロリーブック>を発売され、これもベストセラーを記録します。 渋谷のジャンジャンで実験的なライブを行なうなど活動が最盛期だった時、 背中を刺されるという事件が起こるのです。これを機に活動が急速に減少していきますが、 ライブは続けていて一昨年に歌手生活45周年を迎えて再び注目を集めているところです。 紅白歌合戦にも8回出場。今でも歌は抜群に上手い (おそらく日本のジャズ歌手の中でも常にベスト5からは下らなかったと思います) 彼女をこれからも聴いていきたいですね。

 それでは紹介していきましょう。

 ベースのイントロで始まる#1。井島正雄のベースにのり語り掛けるようなミコの歌、 田部俊彦のサックス、岩崎大輔のピアノが後を追いかけそして最後はまた 井島のベースで締めくくるといった憎い演出。目の前で聴いている様な錯覚に陥ります。 アップテンポでスウィングする#2。ミコの本領発揮です。ピアノの伴奏でしっとりと始まる#3。 ガーシュウィン兄弟が手掛けたミュージカル<オー・ケイ>からのヒット曲。 ミコはヴァースからうたって女心を表現しています。アップテンポで歌う#4。 黒い鳥が不吉なものというのは、もしかしたらこの曲の歌詞からきているのかも知れません。 途中のドラムとの掛け合いが楽しそうです。#5の12分強にもなる長い曲は、 1970年代のフュージョンの曲だと思っていたら何と弘田三枝子作詞作曲によるオリジナルでした。 ちょっと不思議な空間に迷い込んでしまったかの様な時間が過ぎていきましたね。 落ち着きを取り戻した#6は70年以上前のミュージカル映画の主題歌。 「君が傍に居るだけで僕は幸せだよ」といった甘〜いラヴソング。 そうミコが傍で歌ってくれているだけで私達も幸せな気分になれそうです。 ツーコーラス目からは観客も手拍子を打って盛り上がる#7。 このライヴが本当に楽しいかっただろうと想像できます。昔のTV、<シャボン玉ホリデー> を見ていた人には懐かしい曲#8。途中で入ってくるバイオリンが夢の世界へ誘ってくれそうですね。 うっとりしてしまいます。アルバム最後の#9は、これぞスウィングというばかりにスウィングしまくります。 エラ・フィッツジェラルドも顔負けのスキャットも加えて演奏側も観客側もノリノリ。 こんなライヴに居合わせたかったなと、本当に残念でなりません。素晴らしいラストでした。

 如何でしたか?本当に上手いですね。今年は全国をコンサートツアーで回る計画もあるそうなので、 もし皆さんの地元にミコが来た時には足を運んで生のミコを堪能して下さい。

 アルバムの番号は、POPMAY39 でMSIミュージックから発売になっています。 JーPOPのコーナーか日本のジャズ・ヴォーカル・コーナーに行ってみてください。

2008.5.24