Rosa Passos

ROMANCE


 お盆も終わり、季節は秋へと移って行きますが、まだまだ夏の暑さは終わりません。しかし、 やはり四季のある日本では、この季節の移り変わりが何とも言えない味わいがあります。 今回は夏の終わり、晩夏にピッタリなアルバムがありますので皆さんに紹介したいと思います。 このコーナーでは3回目の登場となるホーザ・パッソスの<ロマンス>がそのアルバムです。

 今回のアルバムは、今まで彼女のトレードマークだったギターを手放し、 ピアノ・トリオ+αを迎えてボッサ・ノーヴァだけではなく、ブラジル音楽、それも、 バラッドばかりを集めてアルバムを制作したものです。

 ホーザ・パッソスについては、 このコーナー#148で経歴などを紹介していますのでそちらを参考にして頂くとして、 早速この恋のバラッドを集めたアルバム、<ロマンス>を紹介していきたいと思います。

 流石にピアノ・トリオだけあってブラジル音楽というより、むしろジャズィーな感じがする#1。 いいスタートですね。大人の音楽が期待できるアルバムのスタートです。 トリオに絡むフュリューゲルホーンとトランペットが実にいい味を出しています。 ボッサ・ノーヴァの女王ガウ・コスタ(ポルトガル語の発音ではガル・コスタではなくガウ・コスタになります)。 彼女がもう30年以上前に出したアルバム<ガウ、カイーミを唄う>の中でこの曲の歌唱が印象的だった#2。 カイーミとはブラジル音楽の父と慕われているドリヴァル・カイーミの事。 ホーザはガウ・コスタとは違ったアプローチでこの名曲を歌っています。 大傑作を沢山作ったジョビンとモライスのコンビ。#3も彼らの作品。 私が大好きなボッサ・ノーヴァの一つです。 中でもシモーネの唄ったこの曲を聴いた時のショックといったらありませんでした。 ホーザも感情を押さえ気味に素晴らしい歌唱を聴かせます。作者のジャヴァンとマリア・ベターニャのヒット#4。 晩年のエリゼッチ・カルドーゾが好んで唄っていた#5。エリゼッチほどの深みには欠けますが、 ホーザも詩の内容を噛み締めてしっかり伝えています。エリス・へジーナ (日本ではレジーナと言う発音で表記されています)の美しいナンバーが忘れられない#6。 ホーザの余韻を残す歌にも好感が持てます。ちょっと怖い感じのする歌#7。まあ、 ここまで愛されれば本望なのかもしれませんが、行き過ぎもねぇ〜。 平穏な海の向こうに陽が沈んでいく様を見ているような#8。ジョビンの代表曲の一つです。 心の静寂を取り戻せそうですね。先にも出てきたエリス・レジーナのヒット曲#9。 長い人生の中で起こる浮き沈みを題材にした歌です。皆さんの参考になるでしょうか? 恋人が突如として消えてしまったら、あなたはどうしますか?切ない気持ちを唄う#10。 コーラス・グループの<カルテート・エム・シー>のコーラスが思い浮かぶ#11。 流れる様な彼女らの歌とは違ってホーザは二人の思い出の場所に一人帰ってくる切なさをうまく表して唄っていますね。 アルバム最後の#12は、多くの歌手にカヴァーされています。ここでは、 ベースをバックに唄い始め途中のドラムソロからピアノ・トリオへと続くジャズ的なアプローチがとても素晴らしいです。

 如何でしたか?晩夏に相応しいアルバムでしたね。アルバムの番号は、輸入盤がCD83677でテラークより、 国内盤がUCCT1201でユニバーサルより発売になっています。ブラジル音楽のコーナーに行ってみて下さい。

2008.8.23