TILL BRONNER

RIO


 めっきり秋めいてきましたね。こんな季節はお酒でも飲みながらボ〜っとしていたいものです。 そんな時、こんな音楽が流れていたらきっとお酒も美味しくなるでしょう。 今回紹介するドイツのトランペッター、ティル・ブレナーの新作、<リオ>がそのアルバムです。

 ティル・ブレナーは、もう相当前のこのコーナー、#109で紹介しています。その時のアルバム、 <That Summer>はボッサ・ノーヴァを基調にした心地よいアルバムでした。 今回の新作もタイトルが示すとおりリオ(ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ)生まれの音楽、 ボッサ・ノーヴァのオンパレード。 現在のブラジルを代表するゲストを迎えてとても素敵なアルバムに仕上がりました。

 ティル・ブレナー本人については、このコーナー#109を参考にしていただくとして、 早速紹介していきましょう。

 いきなり度肝を抜く声の登場で「まさか?」と叫んでしまいそうな#1。 アニー・レノックスとミルトン・ナシメントという考えもしなかった二人のコラボレーションが実現しています。 息がすぅ〜っと抜けていく感じがします。もうリラックスできました。シコ・ブアッキが作った有名曲#2。 ヴァネッサ・ダ・マタの気だるいヴォーカルが体の力を抜かせてくれます。 ティル本人のヴォーカルをフューチャーした#3。聴いているだけでは、 名前が判らないブラジルの歌手の様です。歌も上手なティルでした。 曲はもう言うまでも無いくらい有名なものですね。アントニオ・カルロス・ジョビンの#4は何時、 誰のヴァージョンを聴いても気持ちが落ち着きます。 今回のアルバムではエイミー・マンをヴォーカルに迎えて英語で歌ってもらっています。 気だるい雰囲気が堪りません。ミルトン・ナシメントの世界が限りなく広がる#5。 ここでミルトンとデュエットしているのは、このコーナーでも以前紹介した事のあるルシアーナ・ソーザ。 素敵ですね。今でもヒットを出し続けている大物、セルジオ・メンデスを何とヴォーカルに迎え、 ジョビンの曲を歌わせてしまった#6。 輸入盤のヒットをうけて最近日本でもデビュー・アルバムが発売されたメロディー・ ガルドーをヴォーカルにフューチャーした#7。彼女はギターの弾き語りを得意にしていますが、 ボッサ・ノーヴァとギターはとても相性が良いですね。 他の楽器が遠慮がちにサポートしているのが微笑ましい感じがします。ちょっとアフリカ、いや、 ブラジルだからアマゾンでしょうか、そんな深い森をイメージさせる前奏で始まるジョアン・ ドナート作の#8は再びティルのヴォーカルが登場です。 ティルのトランペットの響きが遠くの地平線に沈む太陽をイメージさせる#9。 このアルバム唯一のインストルメンタル・ナンバーです。 皆さんも頭の中に何か風景が見えてきたのではないでしょうか。日本でも人気のあるジャヴァン作の#10。 この10年くらい、常に男性ジャズ・ヴォーカルの話題をさらっている カート・エリングがヴォーカルで参加しています。しかし、このカート・エリングという人、 日本ではあまり話題になりませんが、歌の巧みさはマーク・マーフィー 並だと言われているだけあって音楽の中に声を溶け込ませています。素晴らしいですね。 このアルバムのプロデューサーでもあるラリー・クレインもスキャットで参加した#11。 昔、サラ・ヴォーンも歌っていた#12。 サラとは全く違ってサラっと囁く様に歌っているティルのヴォーカルが印象的です。 アルバム最後の#13は軽快に進みます。トニーニョ・オッタの作曲したこの曲、 ジャズ的なアプローチが素敵ですが、かつてチック・コリアが作ったグループ、 <リターン・フォーエヴァー>を思い浮かべてしまった人も多いのではないでしょうか?

 如何でしたか?とでもホッとした気持ちになれましたね。 ティル・ブレナーのトランペットが各曲の中で邪魔にならずに上手く入っていて、 本当に素敵なアルバムでした。アルバムの番号は、06025 1780680(輸入盤) でユニヴァーサルから発売になっています。ジャズのコーナーに行ってみて下さい。

2008.10.20