小松亮太

The Piazzolla BEST


 秋も深まり本格的な冬も、もう直ぐそこまで来ています。 そんな晩秋にピッタリのアルバムがありますので皆さんに紹介したいと思います。 バンドネオン奏者、小松亮太のデビュー10周年記念アルバム、<ザ・ピアソラ・ベスト> がそのアルバムです。

 バンドネオン。タンゴには欠かせない楽器として有名ですが、知らない方のために・・・。 まあ、アコーディオンを想像してみてください。 アコーディオンの鍵盤をボタンに変えた楽器と思っていただければ良いと思います。 ドイツのバンドという人が発明した楽器でアルゼンチンに伝わり広まりました。 どこか哀愁をおびたその音色に惹かれる人は後を絶ちません。
 さて、アルバムの主人公小松亮太は今や世界を叉にかけるバンドネオン奏者の一人です。 1973年生まれですから今年で35歳。14歳でバンドネオンを独学で始め、1998年、デビューアルバム <ブエノスアイレスの夏>でタンゴの革命児と言われたアストル・ ピアソラと共演した事のある名立たる演奏者たちと共演、 一躍人々の心を捉えて日本のタンゴ界をリードする存在になりました。今年(2008年)、 デビュー10周年を迎えて益々腕に磨きをかけて世界中を飛び回っています。 そんな彼がデビュー10周年を記念して作ったアルバムが、今回紹介する<ザ・ピアソラ・ベスト>です。 ボーナス・トラック以外は全てピアソラの作品で構成されているこのアルバム。 彼の作品の中でも特に素晴らしい出来で感動する事間違いありません。

 それでは紹介していきましょう。

 1998年9月22日、東京、天王洲にあるアートスフィアで行なわれたデビューライヴからの#1、 そして#2。ピアソラ・キンテートの助演を受け、まだまだ若く、幼い演奏をしている小松亮太ですが、 既に大器の片鱗を見せています。ピアソラ自身の編曲にもかかわらずこの編曲での録音がなかった#3。 世界初録音です。特に有名な曲なので紹介する必要もありませんが、ピアソラのお父さんに捧げられた曲です。 ここでの小松亮太は緩急自在に演奏していると共に、その奥には世界の広がりを感じ取る事が出来ます。 マルチェロ・マストロヤンニが主演した映画、「エンリコW世」の為にピアソラが作った名曲#4。 映画は知らずとも、この曲は残りました。私が始めてこの曲を知ったのは、 映画ではなくカンツォーネのミルバがピアソラと共演したパリはブッフェ劇場でのライブ盤でしたが、 歌が有っても無くても、なんて素晴らしい曲なんだろうかと何時も感激してしまいます。 今年の5月26日に大阪で開かれたライヴからの#5。少し過激な編曲をしていますが、 ライヴならではなのでしょう。ちょっと怪しい感じのする#6。編曲も不思議な感じです。 超特急が来たと思ったら緩やかな波に。#7は1950年代初期の作品らしいのですが、 踊るのが大変そうだと思いませんか?小松亮太のバンドネオン・ソロがこのアルバム中この曲でだけ聴ける#8。 ピアソラには及ばないものの、表現力が大分増しているのが分かります。 如何にもダンスの為の音楽という感じの#9。2002年6月、ブルーノート・東京でのライヴです。 同じ日のライヴから#10。優雅に踊っている男女の姿が目に浮かびますね。 ピアソラの曲の中でもヴィオリン奏者に愛されている#11。海の中にいる鮫が見えるような曲調です。 バンドネオンとヴィオリンのコラボレーションが素敵な#12。ピアソラの代表作<ブエノスアイレスの四季>。 その中でも#13は特に有名です。タンゴの世界に止まらず、 ピアソラが今ではクラシックのコーナーに置かれているのも分かるくらい「素晴らしい!」のひと言です。 <ブエノスアイレスの四季>の中からもう一つ#14。もう曲そのものはヴィヴァルディの<四季> を超えていると私は思います。特にこの曲の厳しさから緩やかさへと移行する流れは見事としか言えません。 ピアソラが有名なアメリカの弦楽四重奏団、クロノスカルテットとバンドネオンの為に書いた#15。 小松亮太が日本TVのドラマ、<ラビリンス>の為に演奏したトラックです。 私はこのドラマを観た事がありませんが、 ドラマ中の曲がピアソラの曲で溢れていた事を考えるとドラマの内容も何となく想像できますね。 本収録はここまでで、これからの2曲はボーナストラックです。今年(2008年)3月26日、 大阪のビルボード・ライヴ・大阪でのチャーリー・コーセイのライヴから#16は小松亮太の作・編曲。 勿論チャーリーのバックを務めるのは小松亮太の率いるバンドです。アルバム最後の#17。 もう懐かしいと思っている方が多いのではないでしょうか。アニメ<ルパン三世>の主題歌です。勿論、 当時もこの主題歌はチャーリー・コーセイが担当していました。チャーリー・コーセイは1950年、 神戸生まれの神戸育ち。カルト的な人気を今でも誇っている歌手でベイシストです。

 如何でしたか?小松亮太とピアソラの世界にどっぷり浸った事だと思います。素晴らしいアルバムでした。 小松亮太の最高傑作だと私は確信しています。
 アルバムの番号は、SICC953でソニー・ミュージックから出ています。タンゴ、 クラシックのコーナーに行ってみてください。

2008.11.22