ANN BURTON

He's Funny That Way


 春です。花粉症の方も多いと思います。そんなあなたは外に出るのが億劫になってしまいますね。 そこで部屋でじっくりと音楽を聴いてみるのはどうでしょうか?昼下がりに紅茶かコーヒーを飲みながら、 または夜、バーボンやスコッチを片手に。今回紹介するアルバム、アン・バートンの <He's Funny That Way>は、そんな状況にピッタリです。

 アン・バートンはこのコーナー2回目の登場。 彼女についてはこのコーナー#45を参考にしていただくとして、早速紹介していきましょう。

 心がウキウキしてくる#1。スウィンギーな伴奏に乗って唄うアン。春を感じますね。 しっとりとヴァースから唄う#2。ヘレン・メリルでお馴染みですが、 彼女とはアプローチが全く違っていて素敵です。ミディアム・スローで唄われる#3。 ベースのソロで稲葉国光が良い味を出してますね。 このアルバムの録音と同じ年にトリオ・レーベルに録音したアルバム、 <雨の日と月曜日>にも録音したその表題曲#4。 大ヒットさせたカーペンターズと比べてみるのもいいかもしれません。 丁度80年前のレヴュー<ホット・チョコレート>の中でルイ・アームストロングが歌った#5。 「浮気はやめた」という内容なのに、何故かビリー・ホリデイ、 カーメン・マックレイという女性が歌う事の多い曲です。アンの軽めなスウィング感がとてもいいですね。 本当はもっとコケティッシュな感じで唄った方がいいのかもしれない#6。 アンの唄は凄みが出てちょっと怖い感じがします(笑)。恋する人を想い唄う#7。 ミュージカル<キスメット>の中から#8。ゆったりとしたワルツで唄われますが、 ちょっと何処かで聴いた様な・・・。そうボロディンの<弦楽四重奏曲第二番>ですよね。 「木曜日生まれの人は薄幸だと言われるけど、私は平気。」と唄う#9。 あなたは何曜日生まれか知ってますか?アンがステージで何時も最後に唄っていた#10。 ステージと同じ様に最後に投げキッスも入ってます。春を代表する鳥<ひばり>。 そのひばりに恋人の事を問いかけるというロマンチックな唄#11。 アンのバラッド歌唱がとても合っています。私の大好きな映画<酒とバラの日々>。 そのテーマ・ソングである#12。多くの歌手がスロー・テンポで歌っていますが、 ここでのアンはスウィングしています。でも、それがまた合っていますね。 夢が現実になった喜びを唄った#13。いつかの春に素敵な恋に出会えるかな?っという、 ちょっとセンチな歌#14。やっぱり春は恋の季節なのでしょうか。 アンの唄はブルーで失恋したばっかりといった雰囲気です。スウィングして唄う#15。 失恋した後に自棄(やけ)になって酒もタバコもバンバンやって大声を出しちゃってる自分を見つめる、 何か怖いというか、分かるというか・・・。素敵です。アルバム最後は、ベースとのデュオで始まる#16。 ミルドレッド・ベイリーやビリー・ホリデイの名唱にも負けないアンの唄。終わり方も格好いいですね。 「素晴らしい!」のひと言です。

 如何でしたか?とても素敵なアルバムでした。今回のアルバムは、 かつてレコードの時代にロブスター企画というオーディオ・ファイル向けに高音質のレコードを提供してきた会社が、 そのレーベル、LOBレーベルから出していたLP、<He's Funny That Way>と<Some Other Spring> を合わせて一枚にしたアルバムです。#1〜#5と#16が1977年録音の前者、 #6〜#15までが1980年録音の後者です。日本をとても愛していたアン・バートン。 彼女が亡くなってから今年で丁度20年。何時までも彼女の歌声を聴く事の出来る私達は、本当に幸せです。 アルバムの番号は、 MZCF-1187でMUZAC.INC.から出ています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。


2009.3.22