長谷川きよし

40年。まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。


 梅雨時期、みなさんは如何お過ごしでしょうか?
 こんな時には中々部屋から出たくないものです。そこで、 部屋に居ながらにしてライヴ会場に居るような気持ちにしてくれる、 とても素晴らしいライヴを録音したアルバムを紹介したいと思います。それが今回紹介するアルバム、 長谷川きよしが昨年(2008年)の6月に恵比寿のSPAZIOホールで行なったライヴ録音、<40年。 まだこれがベストではない。長谷川きよしライヴ・レコーディング。>です。

 長谷川きよしは、このコーナー#68に続く2回目の登場です。タイトルからも分かるように、 彼は昨年デビュー40周年を迎えました。独自の音楽活動を続けている彼は、歌の上手さは勿論の事、 弾き語りに於けるギターのテクニックの素晴らしさは他の追随を許さないくらいです。 先日アメリカのバン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行同様、 「盲目の」というレッテルが全く必要がありません。そんな長谷川きよしの40周年記念ライヴ。 それでは紹介していきましょう。

 1970年に発表した彼のセカンド・アルバム<透明なひとときを>のタイトル曲から始まったコンサート。 快調な滑り出しですね。#2は彼のデビュー曲で最大のヒット曲。今聴いても素敵です。 ギターのチューニングが長いので・・・っていうMCを挟んで、彼がとても好きなミュージシャン、 椎名林檎の作品#3を。長谷川きよし風になっていて、椎名林檎とはまた違った魅力を感じさせ、とても素敵です。 1970年代の素敵な曲が沢山生まれた、そんな時代を想い出します。爽やかな風が耳を通り越して行くようです。 何時まで経っても忘れられない少女への感傷が良く表れている#4。そんな感じ、ありますよね。 昨年(2008年)の米アカデミー賞、最優秀主演女優賞を獲ったマリオン・コティアール。 彼女の演じたエディット・ピアフの歌唱で有名な#5。日本では越路吹雪の歌でお馴染みですが、 ここでは岩谷時子の作詞ではなく、長谷川きよし自身が訳詞したもので唄います。 こんな激しい歌詞だったと気が付いた方も多いのではないでしょうか。ビブラフォン奏者で作詞、 作曲家の平岡精二。惜しくも数年前に亡くなりましたが、彼の作った#6。彼の作った曲には有名ではないのですが、 とても素敵な曲が沢山あります。この#6もそんな隠れた名曲の一つですね。皆さんも、 唄いたくなったのではないでしょうか。長谷川きよしのちょっと哀愁を帯びた声がこの曲にピッタリですね。 今でも多くの歌が歌い継がれている永六輔=中村八大コンビの歌。その中の一曲、#7。 ちあきなおみの唄ったものがCMなどで流れていたので聴いた事のある方も多いのではないでしょうか。 これぞ歌の詩、という歌詞、そして親しみ易い曲。本当にこのコンビは凄いですね。一つの物語が頭の中を巡っていく#8。 シャンソン・コンクール出身の彼らしい歌唱ですね。ブラジルのカルトーラの曲を彼が訳詞をした#9。 MAKIの奏でるフルートが哀しみの心の中を更に表していて彼の声と相まって涙を誘います。 数年前に亡くなったフランスの歌手、<ムッシュ100万ボルト>と呼ばれたジルベール・べコー。 彼の初期のレパートリーだった#10。シャンソンは3分間のドラマだと言われますが、歌の詞って、 ドラマじゃないとね、と思うのは、やはり中年以上なのでしょうか。そんなドラマを詞に表す天才、 シャルル・アズナヴール。彼がコンサートで必ず唄う代表作#11。ここでも長谷川きよし自身が訳詞した歌詞で唄います。 ギターの演奏にもドラマを感じますね。アメリカではフランク・シナトラが日本では布施明が歌って大ヒットした#12。 でも原曲はフランスの曲だったんです。クロード・フランソワのこの曲は、英語や日本語の詩とは全く違った内容です。 長谷川きよし自身の訳詞でじっくり聴いてみて下さい。 再びシャルル・アズナヴールの作品を長谷川きよし自身が訳詞し唄った#13。盛り上がります。 勝手にアンコールと言って盛り上げた後は、ジャック・ブレルの#14で反戦を訴えます。 こういったメッセージを必ずコンサートに入れている所に彼の芯の強さを感じます。

 如何でしたか?ライヴ会場にいるような感じでしたね。本当に素晴らしい唄とギター。 こんな歌手がもっと売れるような日本の音楽状況になる事を願って止みません。
 アルバムの番号は、COCP-35130でコロンビア・ミュージック・エンタテイメントから出ています。 JーPOPのコーナーに行ってみて下さい。

2009.6.27