吉田慶子

パレードのあとで〜ナラ・レオンを歌う


 夏になると何故だかボッサ・ノーヴァを聴きたくなりますね。 本国ブラジルではもう古い音楽となってしまったボッサ・ノーヴァですが、 日本では未だに根強い人気がありますね。暑い夏、そこにひと方の涼風。そんなアルバムが発売になりました。 今回紹介する吉田慶子が没後20年になるボッサ・ノーヴァのミューズ、ナラ・レオンを歌ったアルバム、 <パレードのあとで〜ナラ・レオンを歌う>がそのアルバムです。

 吉田慶子と言っても知らない方も多いでしょう。ここで少し彼女を紹介してみましょう。
 東京出身の彼女は3歳の時からピアノを始め音楽に親しみ始めました。OL時代を過ごしていた仙台で、 たまたま聴いたマリア・クレウーザの歌声が彼女をボッサ・ノーヴァの世界へと引き込んでいったのです。 ピアノをギターに持ち替えて1998年頃より東北地方を中心にライヴ活動を開始し、 2000年 6月には単身ブラジルへと渡り半年間を過ごします。帰国後ファースト・アルバム<愛しいひと>を発売、 (このアルバムは翌2002年に韓国でも発売されています。)2003年からは現在、在住している福島県内のFM局、 ふくしまFMの番組<一枚の写真から>のパーソナリティーとして活躍、その番組のコンセプトから <一枚の写真からLive collection Vol.1&2>という二枚のアルバムを発売、 2007年にはピアニストの中村由利子のプロデュースでオーマガトキより <コモ・ア・プランタ〜ひそやかなボサノヴァ>を発売、静かな人気が出始めました。同年、 自費出版でピアノとのデュオ・アルバム<サンバ・カンソン>を発表し、今年(2009年)没後20年を迎えた ボッサ・ノーヴァのミューズ、ナラ・レオンがかつて歌った曲を集めてこの <パレードのあとで〜ナラ・レオンを歌う>を発表したのです。
 囁く様に歌う彼女の声は一瞬の清涼剤。暑い夏、冷房の効いた部屋でゆっくり聴いてみては如何でしょうか?

 それでは、紹介していきましょう。

 アップテンポで始まる#1はシコ・ブアルキの初期の作品から。笹子重治のギターとの息がピッタリです。 私の大好きなブラジルの歌手、エリゼッチ・カルドーゾも歌っていた#2。心が落ち着きますね。 人生とは何かを優しく教える#3。シコ・ブアルキが1947年のカーニバルの際に披露した#4。楽しい歌ですね。 カルメン・ミランダの大ヒット曲#5。胸の鼓動を歌った面白い歌です。サンバを愛する心を歌った#6。 何時も思うのですが、日本語の歌詞では到底表現出来ない内容が外国語にはあって羨ましい限りです。 みなさんも歌詞を良く聞いてみて下さいね。肌の色や階級の違いはあっても心の色は皆一緒だと歌う#7。 涙が出てきそうです。心が弾む#8。楽しげな風景が浮かんできますね。社会の深層をつく#9。 ナラ・レオンの歌にも感銘を受けましたが、吉田慶子の歌もとても素敵です。一人のギター弾きの有様が見える#10。 このアルバムのジャケット写真を手掛けたイーズカ・ヒトシとのデュエット#11。とっても酷い女、ヒタ。 彼女に対する恨み辛みを歌った#12。さっきも言いましたが、外国語だとこんな事も歌に出来ちゃうんですね。 愛し合った後の気だるさがとっても分かる#13。 アルバム最後の#14はナラ・レオンの大ヒット曲で1966年のMPBソングフェスティバル優勝曲です。 楽しかった音楽隊の行進が過ぎてしまった後に残った現実を歌ったものですが、このアルバムを聴き終えたあとに、 皆さんには何が残るのでしょうか?

 如何でしたか?素敵なアルバムでしたね。真夏に通り過ぎる一方の涼風。まさにそんな感じでした。
 アルバムの番号は、OMCA-1120 でオーマガトキ・レーベル、 コロンビア・ミュージック・エンタテインメントから発売されています。ワールドミュージックのブラジル、 または、サンバ・ボサノヴァのコーナーに行ってみて下さい。

2009.8.8