Melissa Walker

In The Middle Of It All


 寒くなりました。やっと、っていう感じですが、こんな時は部屋を暖かくして ジャズ・ヴォーカルなんか聴きたくなりますね。
 今回紹介するアルバム、メリッサ・ウォーカー8年振りのアルバム、 <イン・ザ・ミドル・オブ・イット・オール>はそんな時にピッタリです。

 メリッサ・ウォーカー。このコーナー2度目の登場です。と言っても登場したのが#21ですからもう 10年近く前になりますね。彼女の2枚目のアルバム<モーメント・オブ・トゥルース>を紹介したのですが、 その時にも書いたように、彼女のデビュー前の経歴はあまり分かってはいないのです。 カナダのエドモントン出身で大学卒業後、歌手を目指してニュー・ヨークに出て来たのが1993年。 それから4年後の1997年にエンヤ・レーベルからデビュー作<May I Feel> を出してからは将来有望な歌手と言う事でジャズ・ヴォーカル界で大きな話題となりました。その後、 前出のアルバムを含めて3枚のアルバムを発表しましたが、声帯の病気にかかり、2001年のアルバム <I Saw The Sky>を最後にその声を聴くことはなくなりました。2005年に復帰の意向を発表し、 それから約4年。とうとう新しいアルバムが届きました。何と8年振りになるアルバムは サニーサイド・レーベルからで、その声は以前と変わらず魅力に溢れています。

 それでは紹介していきましょう。

 いきなりタイトル曲の#1。「人生の悲しみや痛さを乗り越えていこう。まだまだこの先は長いんだから。」 と言った意味の曲ですが、流石に病気から立ち直った彼女の唄(この曲の歌詞は失恋ですが・・・) には説得力がありますね。ピーター・ゲイブリエルの作品#2。彼女の唄には前に向こうとする力強さを感じますね。 このコーナーで直ぐ前に取り上げたバーブラ・ストライサンドが四半世紀以上前に監督、 主演でゴールデン・グローブ賞を獲得した(監督賞)映画<イエントル>。映画の挿入歌で シングル・カットもされた#3。 ミシェル・ルグランとアラン&マリリン・バーグマン夫妻の作る楽曲は本当に素敵です。 ミディアム・テンポの#4。ピアノのアーノン・ゴールドバーグが乗ってますね。 続く#5と#6は短い組曲として作られています。勿論、各々作者は違うのですが、 詞を聴いているとちゃんと物語になっていて面白いですね。#7はこんなにジャズってる、 っていう感じの一曲。サミー・デイヴィス・ジュニアのパフォーマンスが余りに素晴らしく、 今でもこの唄は彼を超えるものに出逢っていないのですが、メリッサはアプローチを全く変えて臨みました。 素晴らしいですね。ノーマン・シモンズの#8。ラテン・タッチの編曲が妖しい魅力を醸し出しています。 #9は同名の映画に使われた、元々は器楽曲だったためか、バックの演奏も気になりますが、 これがとても素晴らしい。歌詞は恋人に翻弄される内容です。#10は何と我らがナベサダこと、 渡辺貞夫の曲にメリッサが詞を付けたもの。改めて渡辺貞夫の偉大さに敬服します。魅力的な曲ですね。 二人の愛を確認する#11。アルバム最後の#12はミュージカル界の大ヒットメーカー、 ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャースの作品。メリッサは少し遅いテンポで歌います。 元々回りくどい愛の告白の歌ですから、短気の方は少しイライラするかも知れません。(笑)

 如何でしたか?ゆったりとした時が流れて行ったのではないでしょうか。 随所に出てくるハーモニカの音色がとても効果的でした。メリッサ・ウォーカーがこれからの ジャズ・ヴォーカル界を背負っていくのは間違いないでしょう。
 アルバムの番号は、SSC1237でサニーサイド・コミュニケーションズから出ています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2009.11.23