Chita Rivera

AND NOW I SWING.



 今年に入ってブロードウェイ・ミュージカルの翻訳上演が数多く上演されていますが、 そこに出演する女性ダンサーの多くは今回紹介するチタ・リヴェラに憧れているに違いありません。 今回は76歳にしてまだまだステージに立ち続けている彼女の新作が届いたので紹介したいと思います。

 チタ・リヴェラ。ミュージカル好きな方はご存知だと思いますが、 残念ながら日本では一般的に無名に近い存在だと言わざるを得ないでしょう。しかし、 そのキャリアを聞けば驚くに違い有りません。ここで、彼女を少し紹介してみましょう。
 1933年1月23日、アメリカはワシントンD.C.で生まれた彼女は幼いときからバレーを習い始めます。 19歳の1952年にミュージカル<コール・ミー・マダム>でダンサーとしてのキャリアをスタートした彼女は、 その後、<ガイズ&ドールズ>、<カン・カン>、<セヴンス・ヘヴン>、<ミスター・ワンダフル>などに出演、 1957年、今もブロードウェイで再演を重ねている<ウエスト・サイド・ストーリー>のアニタ役を射とめ、 その伝説が始まります。同年結婚しますが、ステージを続け、 1960年には<バイ・バイ・バーディー>でトニー賞に初ノミネートされます。 その後、初演の<シカゴ>ではグエン・ヴァードンの相手役、 ベルマ・ケリーを演じて2度目のトニー賞候補になります。その後も<ブリング・バック・バーディー>、 <マーリン>で連続して候補になりますが、受賞には至りません。 84年にライザ・ミネリと共演した<ザ・リンク>でトニー賞を漸く受賞。 翌年には来日して銀座の博品館でショーを開きます。このショーはとても素敵なショーでしたが、 残念ながら観客が少なく、今や伝説のショーだと言われています(幸いにも数回私は観賞し、 その想い出は私の心の中で宝物として輝いています)。 帰国した彼女を待っていたのは<ジェリーズ・ガールズ>という ジェリー・ハーマンの曲を集めたミュージカルへの出演でした。 評判も良くロングランになるのではと言われたのですが、 マンハッタンの西86丁目付近で彼女の運転する車とタクシーが衝突、左足を 12箇所も骨折してしまい、 彼女無しでは考えられないと<ジェリーズ・ガール>は結局幕を閉めてしまいます。しかし、 奇跡とも言われた復活をとげ、 1988年には<カン・カン>の主役として再び来日します。 93年には<蜘蛛女のキス>で再びトニー賞を受賞。<ザ・ヴィジット>、<ナイン>と出演が続き、 2005年にはワン・ウーマン・ショー<ア・ダンサーズ・ライフ>を開演。 70歳を超えているとは思えないダンスに絶賛の嵐が巻き起こります。この春、 日本で上映されるロブ・マーシャル監督の<ナイン>。彼がその前に撮ったミュージカル映画で大ヒットした <シカゴ>にもカメオ出演しており(タバコを銜えた横顔が素敵でした)、 2009年にはオバマ大統領から<大統領自由勲章>が贈られています。
 そんな彼女が昨年(2009年) リリースした新作はとても76歳にして録音したとは思えないほど素敵な仕上がりになています。

 それでは紹介していきましょう。

 今の彼女が観客に向って叫びたい気持ちがひしひしと伝わってくる#1。 ミュージカル<シカゴ>からのナンバー#2。彼女の踊い、歌っている姿が目に浮かびますね。 彼女は映像記録を残さない主義とかで、その映像が残っていないのが残念でたまりません。 彼女が映画出演している<スウィート・チャリティー>からの#3。 映画<黒いオルフェ>からの1曲とセルジオ・メンデスの大ヒット曲をメドレーにした#4。 ステージを観ているようですね。彼女とは切っても切れない仲のカンダー&エッブの作品<ヴィジット>からの#5。 歌の中に演技を感じます。ジャック・ブレルが作ったシャンソンの名曲#6。楽しいのだけど、 どこか寂しげな遊園地が見えませんか?シャンソンが続きます。ミシェル・ルグランの#7。 夜、グラスにブランディーを注ぎ、ふ〜っとため息をつく。そんな大人の時間を過ごしている様です。 再びカンダー&エッブの作品<ザ・ハッピータイム>からの#8。 これも映画や舞台のワン・シーンを観ているかの様ですね。軽いボッサのリズムでヴァイオリンとコラボする#9。 気持ちいいですね。キャロル・ホールの美しい作品#10。アルバムの最後#11はギターとのデュオ。 <ニュー・フェイセズ>というレヴューに使われた曲で多くのジャズ歌手、 ポピュラー歌手が歌っているので知っている人も多いと思います。

 如何でしたか?まるで彼女のショーを観ているみたいでしたね。 彼女はもう一度来日したいとどこかのインタビューで言っていましたが、はたして実現するのでしょうか。もし、 それが実現したら、みなさん、何があっても駆けつけて、彼女の舞台を観て下さい。
 アルバムの番号は、YSL 566473でYELLOWSOUNDレーベルから出ています。 この手のアルバムはミュージカルのコーナーに行っても在庫がない場合が多いので アマゾンなど通販で取り寄せる事をお勧めします。

2010.2.14