CHICO PINHEIR

THERE'S A STORM INSIDE



 桜も大分咲いて春本番という今日この頃。この様に暖かくなってくるとボッサ・ノーヴァやサンバ といったブラジルの音楽がより心地よく感じる様になるのは決して私だけではないでしょう。 今回紹介するシコ・ピニェイロはギタリストとして有名なだけでなく、作曲、編曲、 そしてヴォーカルとマルチな才能を遺憾なく発揮しているブラジルが誇る若手のアーチストなのです。

 そのシコ・ピニェイロの最新作が届きました。今回紹介する<ゼアズ・ア・ストーム・インサイド> がそのアルバムです。アルバムを紹介する前にシコ・ピニェイロについて少し紹介しておきましょう。

 1975年、ブラジルはサンパウロで生まれた彼は、7歳でピアノとギターを始め15歳でプロとしてのスタート を切ります。その後、アメリカ、ボストンにあるバークリー音楽院に入学、 卒業後の2003年彼名義でのアルバムでデビューします。そのアルバム<Meia Noite Meio Dia> はその年のベスト10に選出されています。それからも2005年、2007年とアルバムを発表、 今回のアルバムが4枚目なのですが、今回は、ジャズ畑からヴォーカルにダイアン・リーヴス、 サックスにボブ・ミンツァーを迎え大変素晴らしいアルバムに仕上がっています。

 それでは紹介していきましょう。

 ストリングスのゆったりとした響きで始まる#1はジャズのスタンダード。一聴すると単純に聴こえますが、 結構凝ったアレンジをしています。中性的なシコの声がリラックスさせてくれますね。 リズムががらっと変る#2。ブラジル・フュージョンと言えばいいのでしょうか、体が自然と動きます。 タイトルになっている#3。ヴォーカルにダイアン・リーヴスを迎えたこの美しい曲は、 シコとジェシー・ハリスの共作。アレンジがまたいいですね。 ミルトン・ナシメントの影響を受けている様な#4。ルシアーナ・アルヴェスのヴォーカルを フューチャーした#5。ギターに専念したシコがいいですね。シコのヴォーカルと ボブ・ミンツァーのサックスが掛け合う#6。ガル・コスタが歌っても素敵だろうなと思う#7。 美しい楽曲です。街の様子を録音したとみられるものにイントロが重なっていく面白い構成の#8。 シコの奏でるエレキ・ギターもいいですね。とても恰好良い#9。スティーヴィー・ワンダーの名曲#10。 再びダイアン・リーヴスをヴォーカルに迎えていますが、スティーヴィーに比べるとちょっと軽めでしょうか。 自然をテーマにした映画を観ている様な#11。 アルバム最後の#12は三度ダイアン・リーヴスを迎えて送ります。 ヴォーカリーズで歌う彼女がとても素晴らしいですね。チック・コリアが昔作っていた フュージョン・グループ、<リターン・フォーエヴァー>を想い出しました。

 如何でしたか?ブラジル音楽だけに留まらず、ジャズの要素もたっぷり味わえる、 とても素晴らしいアルバムでした。アルバムの番号は、DDCJ- 1009でCT-musicレーベル、 バウンティ株式会社から出ています。ワールド・ミュージック、ブラジルのコーナーに行ってみて下さい。

2010.3.28