JOYCE

SLOW MUSIC



 今年は本当に天気が安定せず、寒暖の差が激しいために体調を崩している方が多いと聞きます。 そんな時、こんな音楽を聴いて、ホッとする時間を作ってみては如何でしょうか。それが ボッサ・ノーヴァのミューズ、ジョイスの新しいアルバム、<スロー・ミュージック>です。

 ジョイスと言ってもブラジル音楽ファンの人以外には馴染みのない名前でしょう。 ここで少し彼女について紹介したいと思います。

 1948年、ブラジルはリオ・デ・ジャネイロで生まれた彼女は早くからその才能を発揮して16歳で初 レコーディングをし、1967年の国際歌謡祭で表舞台にデビュー。翌68年に初のリーダー作<JOYCE> を発表します。そして79年に彼女の書いた<或る女>がエリス・レジーナに歌われた事から ソング・ライターとしての地位を確立します。80年代にはその語学力(5ヶ国語以上を話す) を活かしてヨーロッパに進出し人気を得ます。同時に日本にも来日すると、 ほぼ毎年の様に日本を訪れファンを魅了し続けています。今までに30枚以上のアルバムを発表し、 ライヴ・ツアーで世界中を飛び回っている、まさに、現代を代表するボッサ・ノーヴァのミューズです。

 それでは紹介していきましょう。

 スタートの#1はタイトル曲。 いきなりタイトル曲を始めに持ってくる所にジョイスの力の入れようが伺われますね。 ゆったりとした時間が流れていきます。波に逆らわずに漂っているという感じがする#2。 歌詞がまた素晴らしい。単純でいて深い。皆さんも良く聴いてみて下さい。 #3は映画<愛とボサノヴァの日々>の中でも唄われた曲。幾つものヒット曲を出している ヴィニシウス・ヂ・モライスの作品です。スペイン語で唄う#4。これも歌詞が本当に素晴らしい。 最近の日本のミュージシャンにも見習って欲しいほど感動します。英語の#5。 間奏でピアノのアーリオ・アルヴィスがいい味を出してます。軽いボッサの#6。心地よいですね。 ミディアム・テンポの#7。シコ・ブアルキのヒット曲ですが、 ゆったりした曲が続いていたので逆にホッとしますね。再びスローに戻った#8。ジャズ・スタンダード#9。 ジャズ歌手が歌う様に気張った所がなくジョイスは唄っています。 #10はロシア民謡にも同じ題名の曲がありますが、黒い瞳ってよほど神秘的で魅力的なんでしょうね。 と言う事は、我々日本人は神秘的で魅力的って事ですね(笑)。詞を読んでいると一見何気ないのだけれど、 良く読んでみると怖い内容の#11。皆さんにも心当たりがあるんではないでしょうか。 オリジナルのアルバムでは最後の#12。春は出会いと別れの季節だなんて、いったい誰が言ったのでしょう。 これは万国共通のようですね。そんな春の恋を唄った曲です。日本盤にのみ入っている ボーナス・トラックの#13は、先にも書いた様にエリス・レジーナがジョイスの曲を取り上げた正にその曲。 ある一人の女の一日を表現したこの曲は本当に「素晴らしい!」のひと言です。 このアルバムに入ってても違和感は全くありません。

 如何でしたか?ゆっくりとした時が流れて行きましたね。春のひと時、 ボ〜っとしながら流れていても素敵なのですが、このアルバムの詞をじっくり聴いてもらいたいとも思います。 それだけ素晴らしい詞の連続です。
 このアルバムは、ジャズピアニストで歌手のシャーリー・ホーン、ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンス、 そしてボッサ・ノーヴァの神様、ジョアン・ジルベルトに捧げられています。
 アルバムの番号は、OMCX-1240でOMAGATOKIレーベル、コロンビア・ミュージック・エンターテイメント (株)から出ています。ワールド・ミュージック、ブラジルのコーナーに行ってみて下さい。

2010.4.18