JOSE JAMES

FOR ALL WE KNOW



 梅雨です。こんな時期は部屋から出たくないですね。そんな時にピッタリのアルバムの登場です。

 今回紹介するホセ・ジェームズをご存じない方も多いと思います。まあ、 デビュー2年ちょっとですから仕方ないでしょう。そこで、少し彼を紹介したいと思います。

 1979年にパナマ出身の父とアイルランド系の母の間にアメリカはミネアポリスで生まれた彼は14歳の時に聴いた <A列車で行こう>というデューク・エリントンの曲でジャズに関心を持ち始めます。 それと同時にリズム&ブルースやロックにも関心を持ち始めます。 ニューヨークの大学でジャズを専攻したのですが、その時期に数々のジャズコンテストに参加します。2006年、 ロンドンで開催されたコンテストで彼は、世界的なDJでプロデューサーでもある ジャイルス・ピーターソンと運命的な出会いをします。彼は即座にホセを気に入って彼自身が経営する ブラウンズウッドレコードと契約を結び2008年にデビューアルバムを制作するのです。 そのデビューアルバム<ザ・ドリーマー>はジャズ関係者だけではなく音楽関係者、 特にクラブジャズ関係者の注目を集め、2010年2月には早くもセカンド・アルバム<ブラック・マジック> を発売。それからまだ数ヶ月しか経っていないこの初夏に昨年夏録音の本CDが早くも発売されるという運びになったのです。 インパルスというかつてジョン・コルトレーンとジョニー・ハートマンが<バラッド> という名盤を発表したレーベルに移籍しての第一弾。その名盤に匹敵するホセ・ジェームズとピアノの ジェフ・ニーヴのデュオアルバム<フォー・オール・ノウ>。 かつてのクラブジャズ系の音楽とは全く異なった形になった今回のアルバムは梅雨時期、 部屋でじっくりと聴いていただきたいアルバムのひとつです。

 それでは紹介していきましょう。

 流れ星が流れていく様なピアノのタッチに導かれて唄う#1。夜が良く似合います。 優しく囁く様に唄う#2。声だけ聴いていると溶けてしまいそうですね。(笑) こんな語り掛けには直ぐに落ちてしまいそうな#3。口説く時の参考にしてみては如何ですか? ワン・コーラス目を無伴奏で唄う4。ジェフ・ニーヴの地味目なサポートが絵画を描いているようで素敵ですね。 まるで今の日本の経済状況を見て作ったような#5。勿論、50年以上前の曲ですからそんな事は無いのですが、 全くこんな不安定な世の中では恋も出来ませんね。恋に落ちていく様が良く分かる#6。 ミディアム・スローで心躍る#7。先にあげたコルトレーンとハートマンのアルバム<バラッド> の中でも白眉だった#8。ホセは多くの歌手がそうしたようにヴァースからじっくりと唄います。 アルバム最後の#9はこのアルバムのタイトルにもなっている曲。滅多に男性歌手は歌わない別れの曲ですが、 私が一番印象に残っていると言えば、ジャズではないのですが、ロバータ・フラックのピアノで ダニー・ハサウェイが唄ったもの。その対話に感動したものです。 ここでのホセとジェフの対話もとても感動できるものに仕上がっていますね。

 如何でしたか?梅雨時期、明かりを落とした部屋でブランデイでも片手にじっと聴きたいアルバムですね。
 アルバムの番号は、00602527321493(輸入盤)、1曲ボーナス・トラックが付いている国内盤がUCCV1128で、 インパルス・レーベルから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2010.7.10