Stacey Kent

Racoonte-moi....



 梅雨が明けて毎日ギラギラの太陽の下で夏を謳歌している方も多いかと思いますが、 暑さに疲れてちょっと休みたいと思った時に、 こんな音楽が流れていたら気持ちが落ち着いて疲れも徐々にとれていく感じがするのではないでしょうか。 そんなアルバムが今回紹介するステイシー・ケントが全編フランス語で歌った<パリの詩>です。

 ステイシー・ケント。彼女を知らない方のために、少し彼女を紹介してみましょう。

 1968年アメリカはニュー・ジャージーのサウス・オレンジ生まれの彼女は、 大学で文学と語学を専攻していましたが音楽の夢を断ち切ることが出来ずに ロンドンのギルドホール音楽院に留学します。1991年、 ロンドンのミュージシャンと交流を深めている時にサックス奏者のジム・トムリンソンと出会って結婚。 以降ロンドンを拠点に音楽活動を始めます。ジャズで有名な老舗のクラブ、 <ロニー・スコット>に出演するようになった彼女は1997年、キャンディド・レーベルから <クローズ・ユア・アイズ>でアルバムデビュー。 以降アメリカのコロラド州に住みながらロンドンを拠点に音楽活動を続け、 クリスマス・アルバムを含めると9枚のアルバムを発表。 夫のアルバムにも3枚に参加してヴォーカルを披露しています。 今回のアルバムを作るにあたり特に注目したいのは、2003年に発表になった彼女のアルバム <The Boy Next Door>がフランスで大ヒットした事でしょう。 それがきっかけになったのか2007年にフランス・ブルー・ノートとレーベル契約を結んだ事です。 フランス語のアルバムを作るのは当然の事と言っても可笑しくはありません。 2009年にフランスの芸術文化勲章の騎士の位を受賞したステイシー・ケント。彼女は言っています。 「私とフランスは相思相愛である」と。

 それでは彼女の9枚目のアルバムで、フランス・ブルー・ノート・レーベル移籍第二弾の<パリの詩> を紹介していきましょう。

 1974年にジョルジュ・ムスタキがフランス語に訳して唄ったアントニオ・カルロス・ジョビンの#1。 ステイシーはムスタキの訳した詩で唄っています。1年半前に惜しまれつつこの世を去った アンリ・サルバドール。彼のヒット曲#2。このアルバムを作る動機になった曲と彼女は語っています。 アルバムのタイトル#3。淡々と語って大人の時間が過ぎていきます。歌手で女優の ダニエル・ダリューのヒット曲#4。歌詞が文学である事を改めて感じさせるほど素晴らしいですね。 #3と同じチームによる#5。茶目っ気たっぷりで思わず手拍子したくなります。 絵画の世界が広がって見える#6。幻想的な感じがしますね。始めはギター伴奏のみで、 セカンド・コーラスからは他の楽器芋入ってボッサ調で唄う#7。 ロージャース&ハマーステイン2世の作品で映画<ステイト・フェア> に使われた曲で多くのジャズ歌手が取り上げているので知っている方も多いのではないでしょうか。 サティーのジムノぺティーを思い起こさせる#8。彼女の夫、 ジム・トムリンソンが作曲してフランスの若手作詞家カミーユ・ ダヴリルが作詞したこれも絵画の世界が広がって見える作品になりました。昔、 人気のあったコーラス・グループ、ハイ・ファイ・セットも唄っていた#9。この曲、 実は私の大のお気に入りなんです。てっきりハイ・ファイ・セット のオリジナルだと思っていたので最初は驚きました。なんかフランス語で唄ってみたくなりました。 夏が過ぎ去っていく感じがします。怪しい雰囲気を醸し出す#10。日本では<孤独のスケッチ> というタイトルが付いているバルバラの有名曲#11。バルバラのもう後が無い孤独感とは全く違った アプローチのステイシー。素晴らしいのひと言です。オリジナル・アルバムでは最後の曲#12。 「古臭いものは色褪せず残っていく」という正に拍手ものの曲で終わります。 ボーナス・トラックとして日本盤に収録されている#13はシャルル・ トレネのヒット曲でアメリカでも多くの歌手が取り上げている有名曲です。

 如何でしたか?疲れがさ〜っと引いていく感じがしませんでしたか?彼女のフランス語も完璧です。 アルバムの番号は、TOCJ66537でEMIジャパンから発売になっています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。

2010.7.24