Veronica Nunn

The Art of Michael Franks



 マイケル・フランクス。日本で<スリーピング・ジプシー>や<アート・オブ・ティー> といった大ヒットアルバムを出し、今でも活躍しているAOR世界の大スターです。 その彼のバック・コーラスを長年務めているヴェロニカ・ナンが彼のトリビュート・アルバムを出しました。 と言っても、単なるマイケル・フランクスのカヴァーではなく、 本格的なジャズに調理されたアルバムに仕上がっています。

 ヴェロニカ・ナンを知らない方のために、少し彼女を紹介してみましょう。

 アメリカはアーカンソー州で生まれた彼女は12歳からジャズを唄い始めます。 サックスが好きでライヴにも出ていた ビル・クリントン元大統領がアーカンソー州知事時代に共演した経験もあるそうです。 1978年にニュー・ヨークに出てきた彼女はギタリストのフランク・ミケーレと知り合い彼とのデュエットで活躍、 同時にデイヴ・グルーシン、リー・リトナー、ジョアン・ジルベルト、スティングなどの大物と共演し、 実績を積んでいきます。1993年マイケル・フランクスのバンドに加入。 バック・コーラスのメンバーとして彼の世界ツアーに同行、アルバムにも参加します。その間、2002年には <American Lullaby>でソロ・デビュー。'07年にはセカンド・アルバム<Standard Delivery>を発表。 そして今回の<The Art of Michael Franks>をリリースする事になったのです。

 それでは早速アルバムを聴いていきましょう。

 アルトの声が心地よいスタートの#1。<スリーピング・ジプシー>というアルバムからのカヴァーですが、 本当にしっかりジャズっているのが素晴らしいです。この一曲でこのアルバムの成功が伺えます。 囁くように唄う#2。彼女も参加していたアルバム<ランデヴー・イン・リオ>からタイトルの#3。 森の中で妖精が踊っているかの様ですね。オリジナルよりテンポをグッと落としてシックに仕上げた#4。 マーク・マーフィーも好んで取り上げている曲ですね。軽くスウィングして心地よい#5。 ダンスフロアに踊りの華が開いたような#6。とってもオシャレです。ジョー・サンプルのアルバム <スペルバウンド>にマイケル・フランクスが参加した時に収録された#7。 マイケル・フランクスがゲストでヴォーカルを披露しています。サックスが聴く人の心を捉える#8。 ハンモックに揺られて眠りに落ちそうな#9。ちょっと妖しい情景が浮かびませんか? 大都会の夜景が見えるバーでグラスを傾けている自分を想像してしまう#10。 アーバン・ナイトの雰囲気に浸って下さいね。このアルバム中、一番のジャズ・ナンバー#11。 正に「グルーヴ!」です。スロー・ボッサで気持ちいい#12。 掌の中にいるトンボのジャケットが印象的だったアルバム<ドラゴンフライ・サマー>からのナンバーです。 アルバム最後の#13は1983 年発表のアルバム<パッション・フルーツ>と1978年発表のアルバム <バーチフィールド・ナイン>の最後に収められていたナンバーをメドレーにしたもの。 ジャック・シュワルツ・バートのサックスと彼女の夫、トラヴィス・シュックのピアノが印象に残ります。

 如何でしたか?単にマイケル・フランクスをカヴァーしたのではないとてもオシャレなアルバムでしたね。 この秋にピッタリでした。50歳を超えて円熟という言葉が本当に当てはまるヴェロニカ・ナン。 これからの活躍が益々楽しみです。マイケル・フランクスのツアーに同行している彼女は観ているのですが、 今度は是非、ソロのコンサートで来日して欲しいものです。余談ですが、 9月18日はマイケル・フランクス66回目の誕生日でした。
 アルバムの番号は、TACM-0020 でT.A.C.M.レコードから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナー に行ってみて下さい。

2010.9.20