カルロス・ガルシーアほか伝説のマエストロたち

ACAFE DE LOS MAESTROS



 前回は秋と言う事でシャンソンを紹介しましたが、今回はタンゴです。若い方には馴染みがないでしょうが、 一度その音楽を聴くと何故か虜になってしまうという不思議な音楽、タンゴ。 その音楽をバックに踊る所を見てしまうと更に中毒になってしまいそうです。今年の春、 日本で公開された映画、<アルゼンチンタンゴ・伝説のマエストロたち> をご覧になった方もいらっしゃると思います。しかし、 単館に近いロードショーだった為に見逃した方も多いと思います。とても感動的な映画で、 タンゴ版<ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ>といった映画でした。 その映画の基になったと言えばいいのでしょうか、 2006年にプロデューサーの呼びかけに応えて集まったタンゴの世界、 往年のスター達がブエノスアイレスの最古のスタジオで録音し、とても素晴らしいアルバムを作ったのです。

 何はともあれ、早速この二枚組みのアルバムを紹介していきましょう。

 まずはDisc1から。オーケストラとバンドネオンで古き良き時代へと誘ってくれる#1。 数々の有名歌手のギター伴奏を務めてきたアニーバル・アリアス。彼の伴奏でラグリマ・リオスが歌う#2。 歳を感じさせない歌声に脱帽です。アストル・ピアソラの最初のオケ・メンバーだった アティリオ・スタンポーネ。彼の指揮する#3。エルネスト・バッファのバンドネオンが哀愁を感じさせる#4。 日本でも公演をした事のある歌手、ビルヒニア・ルーケの歌う#5。女優でもある彼女の歌は流石で、 ドラマを感じます。四半世紀ほど前に日本でも来日公演をして タンゴ・ブームを巻き起こしたブロードウェイの舞台<タンゴ・アルゼンチーノ>。 その音楽監督でもあったオスバルト・ぺリンジェリ。彼の指揮で流れる様に演奏される#6。 ピアノも彼が弾いています。この辺りで心が踊って仕方ありません。 ピアソラと並ぶバンドネオン奏者レオポルト・フェデリコ。彼のバンドネオンが自由に遊ぶ#7。 タンゴには有名な男性歌手も沢山いますが、この#8のアルベルト・ポデスタもその一人。 この歌を最初に歌ったのも彼でした。素晴らしいですね。男女の踊る姿が目に浮かぶ#9。 ミュージカル<エヴィータ>に出てくるペロン大統領。 その時代に女神と言われた伝説の歌手ネリー・オマール。 彼女の歌う#10はギターで歌うという伝統に則っています。 #11はタンゴ好きでなくても知っているでしょう。このヴァージョンが大ヒットしたものだそうです。 世界的なピアニストにそのピアノスタイルのファンが多いオラシオ・サルガン。彼の書いた#12。 これが最後の録音になったホセ・リベルテーラ。 彼の書いた曲#13を彼のバンドネオンで聴く事ができる幸せ。じっくり味わいたいですね。Disc1の最後、 #14はピアニストでもあり作曲家のマリアーノ・モレスの代表曲です。
 それではDisc2に移りましょう。タイトル通り、正に<タンゴの夢>。そんな気分にしてくれる#1。 ラグリマ・リオスとグスタボ・サンタオラージャのデュオ#2。アルゼンチンの懐かしいスタイルです。 Disc1の#11同様サラリ作曲の#3。これも大ヒット曲です。 ファン・カルロス・ゴドイとクリストーバル・レベットという老若二人がうたう#4。 寂れたバーでグラスを傾けている時に聴こえるピアノ。 エミリオ・デ・ラ・ペーニャの奏でるピアノ曲#5はそんな雰囲気を想像させます。 ヴァイオリンが悲しく響く#6。オスカル・フェラーリの歌う#7。声だけ聴いていると女性のようですが、 男性です。とても色気のある声で80歳を過ぎてからの声とは思えません。父親の曲を息子が演奏する。 それを実現した#8。今年亡くなってしまったガブリエル・クラウシ。 100年近くをタンゴに捧げた彼の奏でるバンドネオン。#9は彼を偲んで聴きたいですね。 とてもオシャレな#10。タンゴの激しさと官能を刺激するメロディー。その二つが上手く絡み合っています。 秋にピッタリなメドレー#11。アティリオ・スタンポーネの最高傑作#12。 多くのタンゴ曲を書いてきたマリアーノ・モレス。このアルバム最後の#13も彼の作曲ですが、 ここでのアレンジは彼がアレンジした最初のものだそうです。

 如何でしたか?秋の夜長にピッタリなアルバムでした。踊りたかった方、 グラスを傾けながら飲みすぎてしまいそうな方、色々いらっしゃったでしょう。 本当に80歳以上の方達の演奏とは思えないほど素敵なアルバムでした。 映画を観ていない方は是非映画も観てください。
 アルバムの番号は、WRR827でRICEレコードから発売されています。ワールドミュージック、 タンゴのコーナーに行ってみて下さい。

2010.11.14