Jimmy Scott

all the way



このCDを聴き始めた途端に中身が違うって決して思わないで下さ い。ジャケット写真通りのお爺さん、伝説のシンガーと呼ばれていたジミ ー・スコットが唄っているのですから。
ジミー・スコットは1925年の生まれですから、今年で75歳になり ますが今も現役で、この4月には来日公演も予定されています。 マーヴィン・ゲイ、ナンシー・ウィルソン、スティーヴィー・ワンダー などに影響を与え、レイ・チャールズ、ライザ・ミネリ、クインシー・ジ ョーンズや映画監督のデヴィッド・リンチ等が彼の熱狂的なファンである と聞いて、あなたはどう思うでしょうか?
彼のキャリアは1940年代半ばに始まっていますが、50年代には数 多くのシングル レコードを発売したものの、90年始めまでほん の数枚のアルバムが発売されただけで、録音した作品の多くはお蔵入りし ているのです。そしてその間、ほとんど引退同然と思われていたのですか ら、92年にこのアルバムが発売されるまで、伝説のシンガー扱いされて きたのもうなずけます。
それではアルバムの紹介に入りましょう。

#1はこのアルバムのタイトルでもあり、フランク・シナトラの十八番 としても有名な曲。この1曲でもうノック・アウトされたんじゃありませ んか?デヴィット・ニューマンのサックスが聞かせますね。ミュージカル <ガール・クレイジー>からの#2はガーシュイン兄弟の書いたとっても 甘〜い、甘〜い曲。皆さんもどうぞ恋人に唄ってあげて下さい。弾き語り の名手、マット・デニスが書いた#3はずばり失恋の曲。#2とは打って 変って心に重く感じます。ハリー・ウォーレンの書いた#4は念願成就し た気持を歌った浮き浮きな曲。でもここで安心していると後が怖いですよ 。<やさしい伴侶を>という邦題で有名な#5。私にも現れてくれないか なと願うばかりです。
コール・ポーターが作った#6はとても悲しい想い出のあるナンバーで す。以前このコーナーで紹介したアイリン・クラールと言う私の大好きな シンガーが初来日して唄ったナンバーだからなんですが、彼女はその1年 後に帰らぬ人となってしまったのです。こんな<さよなら>はあまりした くないですね。#7は未練たらしいのか優しいのか解らない曲。皆さんは どちらだと思いますか?単純な自分の心の傾きを冷静にさせようと言い聞 かせるナンバー#8。誰かの甘い言葉にすぐ引っかかってしまうアナタに は必聴の曲ですね。
輸入盤では最後の曲になる#9はタイトル通りのセンチな曲。しかし、 ジミーは感情を抑えてしっかりと唄っています。ケニー・バロンのピアノ がその分もっとセンチに聞こえますね。日本盤でのボーナス・トラック# 10は聴き覚えのある人がいるのではないでしょうか。先にもジミーのフ ァンだと紹介したデヴィッド・リンチ監督の映画版<トゥイン・ピークス 〜ローラ・パーマー最期の7日間>でジミー自身が出演して唄っていた曲 です。

如何がでしたか?始めての人もきっと彼の大ファンになったんじゃあり ませんか?全編をバラッドで表現する彼の唄は緊張感と共に私たちに安ら ぎを与えてくれます。このアルバムをプロデュースしたトミー・リピュー マを始め、彼のうたを盛り上げたバック・バンドの面々に感謝したい気持 で一杯ですね。

CD番号はWPCP-4963。ワーナーから出ています。また、4月5日に は徳間ジャパンより彼の最新作<holding back the years>TKCB-71929 も発売になります。こちらの方はエルトン・ジョンやエルヴィス・コステ ロを始め、ジョン・レノン等のポップスを彼流に唄っていて大変良く出来 ていますのでこちらも聴いてみて下さい。ジャズ・ヴォーカルのコーナー にあると思います。

なお、4月の公演は、中野サンプラザで21日、原宿のライブ ハ ウス、<KEYNOTE>で7、14、15、19、20の各日に行なわれ ます。最期の来日になるかもしれません。どうぞ足を運んで生のジミー・ スコットを聴いてみて下さい。そして感動して下さいね。