Sue Raney

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 まだまだ残暑が厳しい今日このごろですが、朝晩はやっと過ごしやすくなってきましたね。 秋にピッタリなアルバムを今回紹介します。スー・レイニーの新作、 <リッスン・ヒア>がそのアルバムです。

 スー・レイニー。ジャズ・ヴォーカルのお好きな方にはもうお馴染みです。そう、「雨」と「風呂」ですね。 全く分からない方もいることでしょう。ジャケットの話です。彼女は、雨にちなんだ曲を集めた <Songs for a rainy day>と お風呂のジャケットの<All by myself> の二枚で一部のジャズヴォーカルファンに熱烈な人気を誇っているのです。 彼女を知らない方のために少し彼女を紹介してみましょう。

 1940年、アメリカはカンサス州のマクファーソン生まれの彼女は幼いときよりピアノと歌を習い、 ラジオやTVに出演していました。16才の時、歌手のレイ・アンソニーに見出され彼のバンドの専属シンガー となりキャピトル・レコードと契約。翌年には早くもデビュー・アルバム、<When your lover has gone> を発表。ネルソン・リドルのアレンジで作 ら れたこのアルバムは、 年齢からは想像もできないほど素晴らしいアルバムでした。次に発売になったのが先ほど出た「雨」と「風呂」のアルバムです。 その後レコード会社を移籍。交通事故にあって一時活動も停止していました。 1908年代になるとアメリカ西海岸のコーラス・グループ<LAヴォイセズ>に参加、 リードヴォーカルを担当し再び脚光を浴びることになります。1986年7月に初来日。 ソロとしてディスカバリーやスペインのレーベルにアルバムを残したあと、 4年ぶりで録音したのがこの今回紹介するアルバムです。今回のアルバムは、ピアニスト、 アラン・ブロードベントとのデュオアルバムで、地味ながらもこれもアラン・ブロードベントが アイリーン・クラールと作ったアルバム<Where is love?>(このコーナー#1 6でも紹介しています) を彷彿させる素晴らしいアルバムに仕上がっています。それでは紹介していきましょう。

 日本では殆ど無名に近い存在ですが、アメリカでは信望者が多い、作詞、 作曲から歌まで歌ってしまうデイヴ・フーリッシュバーグ。彼の作品でこのアルバムのタイトルにもなっている#1。 この曲を聴いて、このアルバムの完成度の高さが早くも分かります。丁度100年前の曲、#2。 ヴァースから丁寧に歌っています。こういった単純な歌詞はいいですね。多くの歌手がバラッドで歌っている#3。 スーは少しリズミックに歌います。これも良いですね。アラン・ブロードベントのピアノがとてもいい#4。 スーはこの難曲を見事に表現しています。バーブラ・ストレイザンドが出演して大ヒットしたミュージカル、 <ファニー・ガール>。その中で、<ピープル>に続くヒット曲となった#5。ジャズってますね。 ブロードウェイのミュージカルでは、よく作られた曲が本番ではカットされることがあります。 この#6もそんな曲の一つ。でも、スタンダードとして生き残り、スーによって素敵に歌われています。 本当に素晴らしいですね。#7をヴァースから歌うのを私は初めて聴きました。 ハリー・ウォーレンが音楽を担当した映画の挿入歌ですが、聴いているとホッとした気持ちになりますね。 ちょっとお洒落な入り方の#8。アレンジに注目してもらいたい#9。 春に関する曲がちょっとずつ入っています。さて、皆さんは何曲分かったでしょう。 <セプテンバー・ソング>で有名なミュージカル<ニッカー・ポッカー・ホリデイ>。 その中で歌われた#10。ビング・クロスビーの歌で知られる#11。スーは曲を楽しんでいますね。 まもなく来日するフランス音楽界の巨匠、ミシェル・ルグラン。彼が担当した映画音楽にアランと マリリン・バーグマン夫妻が詞を付けた#12。いつ聴いても美しい曲です。シナトラが歌っていた#13。 地味な曲を選曲したものですが、どこかノスタルジックな感じがしていいですね。アルバム最期の#14は、 プラターズでお馴染みです。スーは噛み締めるように歌い、アルバムの最後を締めくくります。

 如何でしたか?秋にピッタリなアルバムでした。アルバムの番号は、XQAM-1519  でSSJレーベルから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみてください。

2011.9.20