BARBRA STREISAND

What Matters Most



 なんだか気温の変化が激しくて、今年の秋は風邪をひく方が多いような気がしますが、皆さんは如何ですか?
 まあ、気温の上下が激しいのは秋の特徴かもしれません。でも、やっぱり朝晩は秋を感じます。

 今年の秋はヴォーカル作品に良いものがとても多く、一体何を紹介していいのか迷ってしまいますが、 今回は、敢えてアメリカ・ショービズ界の女王、バーブラ・ストライサンドの新作、 <ワット・マターズ・モスト>を取り上げました。というのも、内容が素晴らしく良いからなのです。 今回の彼女の新作は、素敵な詞を書いて彼女を始め、 多くのアーチストに取り上げられているアランとマリリン・バーグマン夫妻の作品集です。 もう50年の付き合いになるというバーブラとバーグマン夫妻。今年、バーブラが69歳、アランが86歳、 マリリンが82歳。年こそ違うとはいえ、ブルックリンの同じ病院で生まれたこの3人には、 何か見えない糸で結ばれているように感じてしまいます。

 それでは作品を紹介していきましょう。

 1968年度のアカデミー賞主題歌賞に輝く#1。映画<華麗なる賭け>の主題歌でバーグマン夫妻とミシェル・ルグランとの初仕事です。 もう美しいとか表現ができないほどです。#2もルグランとの作品。映画<ミッキーとモード>の主題歌です。 スケールの大きな曲で、新しく出会った愛が永遠のものだと感じますね。ジョニー・マンデルと言えば、 誰もが<いそしぎ>のテーマ・ソングを想い浮かべる事でしょう。 彼の代表作が一曲増えたと思わせたのがこの#3です。2001年の作品でシャーリー・ホーンが歌っていました。 バーブラの歌も勿論素晴らしいのは言うまでもありません。マリリンとアランが結婚する前に作った#4。 フランク・シナトラの大ヒット曲です。バーブラは少しテンポを落として軽くスウィングしています。 これも良いですね。クリス・ボッティのトランペット・ソロで始まる#5。 もう最初から涙が出てきそうな編曲にやられます。世界にもし二人しかいなかったら・・・みたいな甘い曲ですが、 バーブラの表現力は流石です。セルジオ・メンデスの大ヒット曲#6。 サラ・ボーンを始め多くの歌手に取り上げられていますからもうお馴染みです。 ストリングスが本当に綺麗に鳴り響いています。フランク・シナトラのアプローチとはまた違うバーブラの歌唱。 これがまた良いのですね。やはり、男女の立場の違いで歌も変わってきてしまう。そんないい例かもしれない#7。 フレッド・アステアで有名なこの#8。聴いているだけで軽くステップを踏みたくなります。勿論、 アステアばりには踏めませんけど。ジュディー・コリンズがこの#9を歌ったのを聴いた時、 凄く感動したのを覚えています。もう30年以上前ですね。そんなに時が経っているのに、 少しも色褪せないこの#9。ジュディーのソプラノとバーブラのアルト。 その違いだけでまた新しい感動を与えてくれました。アルバム1枚目の最後#10は、 このアルバムのタイトルにもなっています。とにかく愛し合っている事こそが大切といった歌詞。 このアルバム最期の曲に相応しい素敵な曲です。何か明るい未来がそこに見えてきそうな予感を感じます。

 さて、このアルバムは2枚組ですが、2枚目は、バーブラが過去に録音した中からアランとマリリン・ バーグマン夫妻の作詞した作品を抜粋したものです。ざ〜っと紹介していきましょう。

 2枚目の#1は、もうイントロを聴いただけで分かりますね。 日本ではあまりヒットしない彼女の映画の中では飛び抜けてヒットした映画<追憶>の主題歌です。 ミシェル・ルグラン作曲の#2。これも多くの歌手に取り上げられている名曲。 ジーン・シモンズ主演の結婚生活の危機にある夫人の旅を綴った映画でした。 ニール・ダイヤモンドをのデュエットで全米No1の大ヒットとなった#3。 バーブラが監督・主演した映画<イエントル>の挿入歌#4。アカデミーの最優秀作曲賞を受賞しています。 元々は映画の中で使うインストゥルメンタルだった曲に夫妻が詞をつけてバーブラが初めて歌った#5。 これもルグランの曲。#6はブラジルのイヴァン・リンスの作品で、パティー・オースティン、サラ・ボーン等等、 多くの歌手に取り上げられている新しい、と言っても30年くらい前ですが、スタンダードです。 #7も多くの偉大な歌手たちによって録音された名曲。映画 <思い出の夏〜原題はThe Summer Of ’42〜>の主題歌です。本当に素晴らしいメロディーですね。 バックの波の音と海猫の鳴く声が小さいながらも効果的です。パティー・オースティンと ジェームス・イングラムのデュエット曲が大ヒットした#8。映画<結婚しない族〜原題はBest Freinds〜> の主題歌です。#9は水に関する曲を集めて彼女が作った1979年のアルバム<Wet>。 その中に収録されていたルグランの曲。そして本当にアルバム最後になる#10は、 前出の映画<イエントル>の最期のシーンを飾る壮大な曲。アルバムの最後を飾るのにもピッタリな曲ですね。

 如何でしたか?今年69歳。来年、歌手生活50年を迎える彼女。声の衰えは全くみられません。 本当に凄いことです。この秋に聴くアルバムとしてはベストの一枚になることでしょう。そして、 このアルバムは映画<追憶>の監督、シドニー・ポラック氏に捧げられている事を最後に記しておきましょう。 アルバムの番号は、SICP3280−1でソニー・ミュージック・ジャパンから出ています。 ヴォーカルのコーナー、または通信販売などでお求めください。

2011.10.26