CHORO CLUB with VOCALISTAS

TAKEMITSU SONGBOOK



 昨年は大震災、原発事故と大変な年でした。今年は穏やかに過ごしたいものです。 東日本の大震災からの復興と原発事故の終息を願ってアルバム紹介の今年第一弾をこのアルバムにしました。 ショーロ・クラブがゲストにヴォーカリストを呼んで作った<武満ソングブック>です。

 武満徹。世界的に有名な、しかし、日本ではクラシック・ファンを除いてはあまり有名でない彼は、 主に現代音楽や映画音楽の作曲者として知れています。彼が亡くなって早15年の月日が流れ、 今年は17回忌を迎えます。そんな彼が作曲した作品の中で歌物を集めて取り上げたのが今回の作品です。 各界のヴォーカリストを呼んで作られたこのアルバム。聴いていると、とても穏やかな気持ちになるのです。

 それでは、早速紹介していきましょう。

 バンドリン、ギター、そしてコントラバスで構成されたショーロ・クラブ。#1は30年前に渋谷の西部劇場 (今のPARCO劇場)で上演された芝居、<ウィンズ>の為に武満自身が作詞、作曲をしたもの。 ショーロ・クラブの演奏で落ち着いた時が流れます。ゲストにアン・サリーを迎えて送る#2。 恩地日出夫監督の映画の為に書かれた曲で作詞は<空に星があるように>で有名な荒木一郎の手によるものです。 東日本大震災からの復興に向けての応援歌の様だと感じるのは私だけではないでしょう。 20枚以上のアルバムを発表している沢知惠をゲストに迎えた#3。 明るい曲に付けられた谷川俊太郎の詞がズ〜ンと胸に響きます。熱狂的なファンがいるおおたか静流が歌う#4。 元々は黒沢明監督の映画<乱>の撮影中にスタッフに贈られた曲なのですが、 被災地の方たちの気持ちを歌っている様に聞こえてしまいます。明日が晴れるように祈って止みません。 TVドラマの為に作られたのが御蔵入りになって、後に合唱曲として甦った#5。「ほんわか」。 そんな言葉がピッタリなおおはた雄一が歌います。絵の才能も豊かなtamamix。 彼女の歌う#6からは風景が見えてくる感じがします。彼女が画家だからでしょうか。 最近はYou Tubeを通してファンが急増中とのこと。歌を聴いていたらそ れも納得がいきますね。 ラジオ・ドラマの主題歌として書かれた#7。ショーロ・クラブの演奏が穏やかな気持ちにしてくれます。 #8もドラマの為に書かれました。声楽家、松平敬の歌はちょっと不安定な感じもしますが、 何度も聴いていると最適だと思えてくるのが不思議です。 安部公房の小説を基に作られた映画の中でドイツ語で歌われた#9。武満の死後、 岩淵達治の日本語の詞が付けられました。南米でも人気がある松田美緒が歌います。 1960年代に起こったベトナム戦争時に日本でその集結と平和を願って行なわれた集会で歌われた#10。 再びアン・サリーの登場です。谷川俊太郎の詞が胸を突き刺す反戦歌です。#11も再びおおたか静流の登場です。 堀川弘通監督の映画<最期の審判>の主題歌です。谷川俊太郎の詞、おおたか静流の歌、 そしてショーロ・クラブの演奏がマッチして素晴らしい一曲です。作家の五木寛之の作品を小林正樹監督で映画化し、 その中で使われた#12。オリジナルは五木寛之自身が作詞してますが、 ここでは英語に訳された詞を使い沢知恵が歌っています。#1のヴォーカル・ヴァージョン#13。 明日に向かって行く。そんな気がしてくる曲ですね。松田美緒の歌でした。武満の死後、表に出た曲#14。 ここではおおたか静流、アン・サリー、松田美緒の3人が歌う後ろで奏でるコントラバスの音色が哀しみを誘います。 アルバム最期の#15は#14に引き続き始まるその演奏ヴァージョン。心が落ち着いてきますね。

 如何でしたか?きっと穏やかな気持ちになれた事だと思います。 本当に今年は穏やかに時が流れて欲しいと願うのは私だけではないでしょう。このアルバムは、 そんな願いが隠っている様に思えてなりません。東日本大震災の被害者に捧げられた素敵なアルバムでした。
 アルバムの番号は、SONG X 006 で、SONG+JAZZから出ています。ジャズ、 又はクラシックのコーナーに行ってみるか、amazonなど通信販売でお求め下さい。

2012.1.23