NICKI PARROTT

SAKURA SAKURA



 大震災から1年が過ぎました。もう直ぐ春。今回紹介するアルバムは、春を集めたベーシストで歌手の ニッキ・パロットが贈る新作、<さくら さくら>です。

 今年は寒さが続いてます。雪も中々止んでくれませんね。しかし、陽射しはやはり春を感じます。 ベーシストでヴォ−カリストのニッキ・パロットがとても素敵なアルバムを届けてくれました。
 ニッキ・パロット?と思っている方も多いのではないでしょうか。すこし、彼女を紹介してみましょう。

 オーストラリアのニュー・キャッスル生まれの彼女は、4歳でピアノとフルートを始めます。 所が彼女の妹でアルト・サックス奏者のリサが組んでいたバンドにベーシストが居ないことから 15歳でベースに転向してしまいます。 高校を卒業するとベースの勉強をするためにシドニーに移住した彼女は国内の有名なジャズ・ミュージシャンと共演するようになり、 シドニーを訪れたレイ・ブラウン、ジョン・クレイトンといった大物に手ほどきを受けています。 1994年、オーストラリアから受けた助成金でニュー・ヨークへ移住した彼女は、2000年の6月までジャズクラブ <イリディウム>で毎週月曜日に行われている<Manday Nights>に出演し演奏します。この頃、 クラーク・テリー、ミシェル・ルグラン、マリーナ・ショー、 ハリー・アレンなどそうそうたる面子と共演するチャンスを得ています。また、ブロードウェイのショー (<アヴェニューQ>や<ジキルとハイド>など)でも演奏しています。 また多くのジャズ・フェスティバルでも活躍するのです。
 2004年にケン・べブロフスキーとの共演盤でアルバムデビューし、彼とは3枚のアルバムを、 そして彼女名義のアルバムをこれまでに5枚出しています。日本にも数回来日している親日家の彼女。 春がいっぱいの新作を早速紹介していきましょう。

 彼女の妹リサの吹くバリトン・サックスで幕が開く#1。春に相応しいスタートです。 アル・ジョルソンの歌で有名な#2。軽いスウィングが心を軽くします。ペレス・プラード楽団の十八番#3。 ラテンのリズムに体が踊ります。多くの歌手がスロー・テンポで歌うのに対し、ニッキがリズミックに歌う#4。 鶯が鳴くのに驚く#5。言わずと知れた日本の古謡です。ちょっと怪しい感じがまた良いですね。 ドミニク・ファリアッチのトランペット・ソロで始まる#6。バラッドも良いですね。 また歌に絡むトランペットが最高です。コール・ポーターの代表曲の一つ#7。演奏がまた素敵です。 春は気分的にイマイチという人も多いと思いますが、そんな内容の#8は素敵なバラッドです。 ジャズ・クラブで聴きたいですね。ギターとのデュオ#9。 ギターが奏でるボッサのリズムが優しい春を運んでくれます。軽くスウィングして爽やかな#10。 春の陽射しの中でウトウトしてしまいそうな#11。気持ちがいいです。映画<トーチソング・トリロジー> でも効果的に使われていた#12。歌と演奏のバランスが何といいことでしょう。オシャレな一曲です。 ミシェル・ルグランのとても美しい曲#13。憂いを含んだこの曲はニッキにはまだちょっと若いかもしれません。 アルバム最後の#14は、陽気なボッサのリズムに乗って春風の如く歌っていきます。

 如何でしたか?春満載といった、とても素敵なアルバムでした。アルバムの番号は、 VHCD-1068でヴィーナス・レコードから出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーか通信販売でお求めください。

2012.3.19