MADELINE EASTMAN

A QUIET THING



 梅雨の季節ですね。雨の日は外に出たくないものです。そんな時に、 部屋でゆっくり聴きたい音楽があるとホッとします。 今回紹介するマデリーン・イーストマンの新作、<ア・クワイエット・シング>はそんなアルバムです。

 マデリーン・イーストマン。彼女の名前を聞いて分かる方は、相当なジャズ・ヴォーカル・ファンです。 アメリカはカリフォルニア州サンフランシスコ生まれの彼女は1980年代後半にMAD=KATレーベルを立ち上げ1990年に <Point of Departure>を発表しデビューします。翌年<Mad about Madeline>を発表。 日本でも輸入盤が話題になり、ジャズ雑誌などで取り上げられます。その後、20年以上にわたり、 西海岸のジャズ・クラブなどで活躍を続け、アルバムも7枚を数えます。
 今回のこのアルバムは、人気ピアニストのランディー・ポーターとのデュエット・アルバム。 ホッとして頂けること間違いありません。

 それでは紹介していきましょう。

 映画<アルフィー>の主題歌#1。この一曲で彼女の世界に引き込まれてしまいます。 フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが映画<スウィング・タイム>の中で歌ってた#2。 勿論、映画の中ではスウィングしてますが、ここではシットリとしたヴァージョンになっています。 最初のフレーズを聴いた瞬間にチック・コリアの作品と分かる#3。不思議な空間が脳裏に浮かびますね。 40年近く前にアイリーン・クラールがピアノのアラン・ブロードベントと録音したアルバムを想い出させてくれる#4。 歌に寄り添って弾かれるピアノがとても美しい#5。 アメリカのミュージカルの世界では神様的な扱いを受けているスティーブン・ソンドハイムの作った#6。 噛み締めて歌っていますね。トニー・ベネットとビル・エヴァンスのデュオ・アルバムを想い出す#7。 彼らのアルバムに負けないくらいの出来ですね。語りかける様に歌う#8。#9はローラ・ニーロの作品。 ローラのピアノ弾き語りと比べてみるのも面白いかもしれません。オリジナルの歌手、 ジーン・カーンとは全く違うアプローチをみせる#10。 ライザ・ミネリがトニー賞で初めて主演女優賞を獲った1965年のミュージカル、 <フローラ・レッド・メナース>で歌われた#11。このアルバムのタイトルにもなっています。 ランディー・ニューマン作の#12は、一体何人にカヴァーされているのででしょうか。 其々に個性を発揮して歌われてきました。マデリーンも彼女の解釈で歌っています。 バーブラ・ストライサンドの大ヒット映画、<スター誕生>の終わりの方で歌われる#13。 バーブラの歌とは対照的に、ピアノとのデュオらしくサラっと歌ってますね。アルバム最後の#14は、 なんとビーチ・ボーイズの曲ではありませんか。もう驚きですが、これがまたこのアルバムにピッタリ。 そしてアルバムの最後を飾るのにピッタリな曲だったんです。美しいですね。

 如何でしたか?梅雨時、部屋でグラスを傾けながら聴くにはとても良いアルバムだと思いませんか? ホッとして頂けたと思います。アルバムの番号は、BJCDJー1034で日本では美女ジャズレーベルから出ています。 ジャズボーカルのコーナーか通信販売でお求めください。

2013.6.17