NATALIE DESSAY & MICHEL LEGRAND

Entre elle et lui



 クラシック界の最近の話題として大きく取り上げられたナタリー・デッセイの女優、ポピュラー歌手への転向。 世界の歌劇場で活躍を続ける彼女のこの宣言は大きなショックを私たちに与えました。 その彼女の転身第一弾とも言うべき作品が早くも届いたのでこのコーナーで紹介したいと思います。

 ナタリー・デッセイ。クラシック・ファンの方にはもうお馴染みですね。 1965年4月にフランスのリヨンで生まれた彼女。 現代最高のオペラ歌手の一人で幅広いレパートリーを持つことから世界中の歌劇場に引っ張りだこです。 元々女優でしたが友人の勧めで声楽を学ぶことに。ボルドー音楽院、パリ・オペラ座で声楽を学びます。 フランスのテレコム主催の声楽コンクールで優勝したことが切っ掛けでリヨン歌劇場、バスティーユ・オペラ座、 ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場など著名な歌劇場から引っ張りだこの存在になっていきます。 一時調子が悪くキャンセルが続く時期もありましたが、復活し活躍を続けています。昨年、オペラ歌手引退を表明し、 女優復帰、シャンソン歌手になることを発表し大きな驚きを我々に与えてくれました。しかし、 クラシック歌手としてのスケジュールはまだ消化されていないため、 本年(2014年)4月14日にも東京のサントリーホールでピアノの フィリップ・カサールとのデュオリサイタルが予定されています。
 このアルバム一方の主役、ミシェル・ルグランは、1932年生まれ。 10代半ばで指揮を職業としていた父親の手伝いで映画音楽に目覚め、 1954年の映画<過去を持つ愛情>を手始めに映画音楽を多数作曲しています。またジャズの世界でも名を馳せ、 マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスなどと共演、<ルグラン・ジャズ>という名盤を世に出しています。 一時アメリカにいましたがフランスに帰国、ジャック・ドミー監督と組んだ映画、 <シェルブールの雨傘>の大ヒットで世界的に名が知れ渡って行きます。その後も<華麗なる賭け><おもいでの夏> <愛のイエントル>などヒットを連発、高い評価を受けています。舞台の音楽も担当し、 劇団四季でも上演された<壁抜け男>は彼の新境地を開いたと評判になりました。 アカデミー賞やグラミー賞など受賞は数に暇がありません。

 そんな二人が共演したこのアルバム。とても素晴らしく素敵です。それでは紹介していきましょう。

 ジャズのスタンダードになって沢山のアーチストが録音している#1。映画<ロシュフォールの恋人たち> の挿入歌です。まずデッセイのクラシック唱法を封印した歌唱に驚きです。ちょっと怪しげな#2。 #1と同じ<ロシュフォールの恋人たち>からの#3。フランス語でこんな早口言葉みたいに歌えるなんて驚異です。 デッセイはフランス人ですからまあ当たり前と言えば当たり前なんですけど。 もう直ぐ米アカデミー賞の発表がありますが、#4はバーブラ・ストライザンドが監督、 主演を務めた映画<愛のイエントル> の挿入歌。アカデミー賞に は完全無視されましたが、 ゴールデン・グローブ賞では受賞しています。以前このコーナーで紹介したジェシー・ノーマンも歌っていました。 ですが、彼女とは全く違うアプローチです。勿論デッセイは素晴らしい歌唱を披露していますが、 バーブラの凄さを改めて思わせる一曲ですね。数年前に日本でもニュープリントで公開された映画<ロバと王女>。 その中からとっても楽しい#5。 #6もジャズのスタンダードとして多くのアーチストに取り上げられているとっても美しい曲。 ミシェル・ルグランとデュエットしています。#7もルグランとのデュエットで。映画<華麗なる賭け>からです。 これも多くのアーチストに取り上げられていますから聴いた事のある方も多いと思います。思わず体が動き出す#8。 詩と曲がすごくマッチして美しい#9。色々な歌手が歌っていますが、どれを聴いても感動します。 あ〜、本当に美しい。再び登場、<ロシュフォールの恋人たち>から#10。双子を歌ったものですが、 面白いですね。ブルージーな#11。彼女の歌唱に驚きます。喉を大事にね。 <ロバと王女>から#12は物哀しい感じが良く出ていますね。 やっと出てきました<シェルブールの雨傘>からの#13。ギーとジュヌヴィエーヴの心に突き刺さるデュエットです。 もう涙が止まりません。哀愁を感じるメロディー#14。ロシア語です。 ワルツのテンポで次第に目が回りそうな#15。懐かしいシャンソンを想わせる#16。 映画<おもいでの夏>から生まれた大ヒット曲#16。あなたのひと夏の想い出が巡ってくる感じがしませんか? このアルバム最後の#18はハーピスト、カトリーヌ・ミシェルとのが華を添えます。 クラシック界からの引退を発表した後に発売になったこのアルバム。何か意味ありげな曲ですね。

 如何でしたか?クラシック唱法を封印したナタリー・デッセイの歌唱はとても素晴らしく、 またミシェル・ルグランのピアノも今年2月24日で82歳になるとは思えないしっかりした演奏でした。 本当に素敵なアルバムでしたね。アルバムの番号は、50999 93414821 でERATO(エラート)から出ています。 クラシックの声楽のコーナーか通信販売でお求め下さい。


2014.2.15