PETER JOBACK

I LOVE MUSICALS



 今年のトニー賞の発表が終わりました。 今年は<紳士のための愛と殺人の手引き>が最優秀ミュージカル賞に輝きましたが、 ヒュー・ジャックマンの司会で大物アーチストも続々登場して本当に楽しいショーでしたね。
 さて、今回紹介するアルバムは、スウェーデンのストックホルム出身の歌手でミュージカル俳優のピーター・ ジョーバックの新作、<アイ・ラヴ・ミュージカルズ>です。

 ピーター・ジョーバック。この名前を知っている方は相当のミュージカルファンに違いありません。勿論、 ミュージカルの世界では知らない人がいない位有名なのですが、多くの方がご存知ないと思うので、 少し彼を紹介してみましょう。

 1971年6月4日、スウェーデンのストックホルム生まれの彼は、つい先日43歳になったばかり。 その彼が初めてミュージカルの舞台に登場したのは、彼が11歳の時。<サウンド・オブ・ミュージック> でトラップ家の子供の一人としてスウェーデンのミュージカル界第一人者、ウーラ・サレルトとの共演でした。 20代の初めには<グリース><フェーム>といったミュージカルに出演、 将来を嘱望されていたのは誰の目にも明らかでした。しかし、そんな彼にも壁が待っていました。 <ヘアー>出演のオファーを断った事から仕事が途絶えます。挫折を味わった彼を待っていたのは、 元アバの夫二人組、ビヨルン・ウルヴァースとベニー・アンダーソンの新作ミュージカル<クリスティーナ> へのオファーでした。1995年の10月にオープンしたこのミュージカルはスウェーデンで大ヒット、 そのオリジナル・アルバムはスウェーデンのグラミー賞を獲得、その中で彼が歌った <ゴールド・キャン・ターン・トゥ・サンド>は大ヒットを記録します。 そこからはトントン拍子に仕事が舞い込むことになるのです。ロンドンで<ミス・サイゴン> のクリス役でウエストエンドでデビューを果たします。その後、プロデューサーのキャメロン・ マッキントッシュから映画<イーストウィックの魔女たち>のミュージカル版出演の機会が与えられたのです。 その後、2006年にはスウェーデンで<キャバレー>のMC役を射止めると再びロンドンに戻り、 <オペラ座の怪人>の主役を務めます。丁度<オペラ座の怪人>の25周年と重なった事もあって、 ロイヤル・アルバート・ホールで行われ映像にもなっている<オペラ座の怪人25周年記念公演> にもオペラ座の怪人の一人として、過去に怪人を演じたコルム・ウィルキンソン、ラミン・カリムルー、 アンソニー・ワーロー、ジョン・オーエン・ジョーンズと共演したのです。そして昨年(2013年)の4月から8月にかけて、 ついにブロードウェイ初登場するのです。そして今、ストックホルムに戻って彼が演じているのは <スウィーニー・トッド>の主役。これからが益々楽しみなミュージカル俳優です。

 それでは紹介していきましょう。

  色々な処から「I Love Musicals」という囁きが聞こえてくるイントロ#1に続いて歌われる#2は、 アメリカのミュージカル界に君臨するスティーヴン・ソンドハイムの1964年の作品<Anyone Can Whistle>から 「みんなは止めろというけどやってみようよ!」という意味の曲。トップを飾るのには相応しい曲ですね。しかし、 その作品は初日でフロップ。中々上手くはいきませんでした。#3は<Miss Saigon> からキムを想いながら去らねばならないクリスの心情を歌った曲。流石に感情込もってます。 ケイティー・トレハーンをゲストに迎えた#4は、誰もが知っている<The Phantom Of The Opera>から。 先にも言いました様に彼はオペラ座の怪人役をウエスト・エンドとブロード・ウェイの両方で演じています。 続く#5も<オペラ座の怪人>から。もう少し、哀しみの表情が見えると良かったと思うのですが、如何でしょうか? 今またブロード・ウェイで上演されている<Cabaret>からの#6。初演と映画ではカットされた曲ですが、 実はミュージカルの中で私の大好きな曲の一つなんです。ですからピーターがアルバムに入れてくれた事に感謝しています。 素敵な歌でしょ。#7は<Guys And Dolls>から。力溢れています。 映画ではマーロン・ブランドが歌ってましたがピーターの歌は、やはりその何倍も上手です(笑)。 #8は、先にも書きましたビヨルン&ベニーのコンビで書かれた<Kristina Fran Duvemala>から彼の大ヒット曲。 #9は、イギリスでは大ヒットしたにも関わらずアメリカではイマイチだったこれまたビヨルン&ベニーの<Chess>から。 このミュージカルは良い曲が沢山詰まっていています。一度フルアルバムを聴いてみて下さい。 #10は映画化でも話題になった<Sweeny TODD>からアン・ディオニシオをラベット夫人に迎えて贈ります。 狂気に満ちたトッドをピーターがとう演じているのか観てみたいものです。 日本版公演はとっても酷くて本公演に失礼過ぎた<Sunset Boulevard>からの#11。 ブロード・ウェイでの豪華な公演が曲を聴いただけで甦ります。 それにしても本当に安蘭けいが主演した日本版の公演は酷すぎました。あ〜、今思い出しても腹が立ってきます。 気持ちを切り替えましょう。映画ではユアン・マクレガーとニコール・キッドマンが歌った#12。<Moulin Rouge> からニコール・キッドマンのパートをケイティー・トレハーンとアン・ディオニシオとが受け持っています。 <Jesus Christ Superstar>からの#13。ピーターはジーザスになりきって叫ぶように歌い上げます。 興行はイマイチだった<Wiches Of Eastwick>。その中の曲<その男は誰?>。とってもミュージカルっぽい曲ですね。 今でも数年ごとにリヴァイヴァルされている<Carousel>。その中でも最も感動的な名曲#15。 <Sound Of Music>からのこれも感動的な名曲と共にメドレーで歌われます。 オリジナルのアルバムでは最後になる#16は、今年スウェーデンで上演予定のミュージカル <Livet Ar En Schlager>から。映画のミュージカル化らしいのですが、 メロディーが美しいのでちょっと観たい気もします。そして、日本盤にボーナス・トラックで入っている#17は、 <Kiss Of The Spider Woman>から。チタ・リヴェラやヴァネッサ・ウィリアムズがうたった蜘蛛女の主題歌です。 これがライヴだというのにも驚きます。彼の実力が分かりますね。

 如何でしたか?まるでミュージカルの舞台を観ている様でしたね。彼の舞台を早く観たいものです。 今年読売交響楽団との共演が予定されていますので、実現すればいち早く彼の声に触れることが出来ますね。
 アルバムの番号は、SICP30534(日本盤)でソニー・ミュージックエンターテインメントから出ています。


2014.6.22