Philippe Jaroussky

Green (フランス歌曲集第2集)



 春ですね。そんな春にお聴き頂きたいアルバムがありますので紹介したいと思います。
 現在カウンター・テナーでは抜群の人気を誇るフィリップ・ジャロスキーの新譜、<グリーン・フランス歌曲集第2集>です。今回は、フォーレ、ドビッシー、ショソン等のクラシック音楽畑の作曲家から、レオ・フェレ、トレネ、ブラッサンスとシャンソン畑の作曲までを取り上げています。一見バラバラだと思われがちですが、実は19世紀フランスの作詞家、ヴェルレーヌの詩に附曲された作品集なんです。秋とは違った春の何とも言えない不思議な魅力。フワフワしたその感覚を是非味わって下さい。

 その前にフィリップ・ジャロスキーについて少し紹介しましょう。
 1978年フランス生まれのジャロスキーは、最初はヴァイオリン専攻でしたが、18才の時に声楽に転向。2004年にヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージック音楽賞を受賞したあたりから注目を浴び始め現在に至っています。

 それではこの2枚組のアルバムを紹介していきましょう。

 まずは1枚目から。ヴァイオリンとピアノとに導かれて始まる#1。レオ・フェレの作品です。彼の声が何故かジェシー・ノーマンの様に聴こえます。包み込んでしまう魅力が早くも感じられます。フォーーレ作曲の#2。春の心が弾む感じが出ています。セヴラック作曲の#3は牢獄からの叫びが聞こえてきそう。スルクの#4は朧月を見ているかのようですね。宴の前の静寂を感じさせるドゥビッシー作曲の#5。コミカルな#6。こちらはハッキリとした月の光を感じる#7。どことなく愁いを感じる#8。ショソンの#9。アルバムタイトルの#10。ボルド作曲の#11からは悲しみが伝わってきます。野を吹き過ぎる風のような#12。サン=サーンス作曲ですフォーレの#13は#5のドゥビッシーとは違う趣ですね。シャブリエの#14はオペレッタから。アーンの#15は何と美しい事でしょう。フォーレの#16は悲壮感が漂いますね。#17は#2とは違った意味で心弾みます。静寂な世界が広がる#18。オネゲルの#19。深い眠りにつきそうな感じですね。深い悩みを表現しているような#20。シュトゥッツマンとのデュオ#21はマスネ作曲。ヴァレーズの#22。暗い世界が広がっていきます。ショソンの#9とは全く違ってレオ・フェレの#23は明るい世界が広がります。ここで1枚目は終わりました。

 それでは2枚目を。流れるような旋律。透き通る空気。美しい月。心が洗われる#1。トーンがガラッと変わって秋を思わせる愁いのあるメロディー。とても美しい#2。幻想と言う言葉がピッタリの#3カプレの曲です。哀しみを静かに表現している#4。ポルドウィスキー作曲の静寂な世界が広がる」#5。全く趣が変わる#6。良き時代の匂いがする#7。シャルル・トレネの作品です。弾むような#8。シュミット作の#9は対話をしているかのよう。アーンの#11は、全く暗さを感じさせない前向きな作品に仕上がっています。如何にもオペレッタな#12。ケクランの#13は心の奥深くに潜む悩みを良く表わしていますね。体を包む優しい光。そんな光景が見える様な#14。自問自答しているかのような#15。油絵ではなくて、水彩画を思わせる#16。抑えた感情が段々放たれて行く感じがする#17。感傷に浸りそうな#18、#19。アルバム最後の#20は陽気なぶらっさんす作品で締めくくります。

 如何でしたか?同じ詩でも作曲家が違うだけで全く違うイメージになるのもこのアルバムの醍醐味のひとつです。とてもこの季節に相応しいアルバムだったと思います。アルバムの番号は、輸入盤が2564616695、国内盤がWPCS-13035でともにErat(エラート)レーベルから出ています。クラシック声楽のコーナーか通信販売でお求めくださいね。

2015.3.30