TERI THORNTON

I'll be easy to find



今年の5月に一人の女性ジャズ・ヴォーカリストがこの世を去りました 。彼女の名はテリ・ソーントン。昨年の秋になんと35年ぶりの新作を出 して復帰したばかりだったのですが。
今回紹介するこのアルバムは彼女の復帰作であり、そして遺作でもある のです。その前に彼女が35年ぶりに復帰した経緯を少し紹介しておきま しょう。
彼女のデヴューは1950年代半ばまで遡ります。その後、60年代初 め<デビル・メイ・ケア>でアルバム・デヴューを飾り、63年にはヒッ ト作<シングス・サムホエア・イン・ザ・ナイト>を送り出しました。そ の後、子育てなどで一時活動を中断。80年代に入ってレストラン等で再 び歌い始めたのですが、95年、アメリカ・ジャズ基金の為ニュー・ヨー クのブルー・ノートに出演したのをきっかけに一人のプロデューサーと知 り合います。その人がこのアルバムのプロデューサーであるスージー・レ イノルズだったのです(ライナー・ノーツによるとその10年ほど前から 彼女はテリのことをずっと捜し続けていたそうです)。その後98年にセ ロニアス・モンク・コンペティションに優勝すると、トントン拍子にヴァ ーヴ・レーベルと契約。そして今回紹介するアルバムが誕生したわけです。
そんな次第で誕生したこのアルバムは世界中に大きな反響を捲き起こし ました。何しろ35年ぶりの復帰作。それにも増してアルバムの出来の素 晴らしさ。これからが更に期待されていただけに本当に惜しまれてやみま せん。それでは紹介していきましょう。

冒頭に持ってきた曲は、なんと彼女の最大のヒット曲であります。40 年近く前のTV番組<ネイキッド・シティー>の主題歌である#1を ムーディーに聴かせます。軽いスウィングが心地よい#2。これも昔のア ルバムに入っていた曲です。ガーシュインのフォーク・オペラ<ポーギー とベス>からのナンバー#3。テリのオリジナル#4。ピアノ伴奏を受け 持つレイ・チューのアレンジ、そしてアルト・ サックスのジェロ ーム・リチャードソンのソロが耳に残ります。
#5も彼女のオリジナル。真にブルースという作品です。ジョニー・マ チスが随分と昔に唄っていた#6。大好きな人と一緒にこんな素敵なバラ ッドを聴いてみたいですね。大変に有名な#7はチョット変ったアレンジ で登場です。基本ラインのベースに絡む、ややおもするとバラバラに聞こ えるドラム、フルート、そしてテリ自身の弾くピアノがとても変った雰囲 気を醸し出しています。
続く#8は再び彼女の作品。なんでも彼女が最初に作曲したものだそう です。軽いボサ・タッチで気持が良いですね。#9は、これもまた#1、 #2と同様、以前に録音している曲のリメイク。彼女の唄い方になんとな く時の流れを感じます。#10はファンキーに迫って、まるでジェームス ・ブラウンの様です。#11は私自身とても大好きなサミー・フェインの 曲。ビリー・ホリデイの名唱に迫る歌唱です。#12は日本盤のみのボー ナス・トラック。コール・ポーターの曲でフランク・ シナトラの 十八番としても有名ですね。アルバムの最後はセロニアス・モンク・コン ペティションの時のライブ。とても当時64歳とは思えないグルーブ感。 優勝するのが分かりますね。

如何でしたか?彼女の生のステージにはもう接する事が出来ませんが、 彼女にはこのアルバムのタイトル通り、このアルバムを通して<イージー ・トゥーファインド>、何時でも会えますね。
最後に彼女の冥福を祈ってお別れしましょう。

CDナンバーはPOCJ 1471(日本盤) ヴァーヴ・レーベルで 発売されています。是非一度お聴き下さい。