Omara Portuondo

Omara Portuondo & Martin Rojas



私がオマーラの歌声を初めて生で聴いたのは今からちょうど8年くらい 前、キューバから来日したミュージカル・レヴュー<ノーチェ・トロピカ ール>での事でした。その少し前にブロードウェイのショー<タンゴ・ア ルゼンティーノ>に大きなショックを受けていた私は、まさかそれ以上の 感激を受けるなどとは思いもしなかったのです。
<ノーチェ・トロピカーナ>というショーはキューバにある世界3大ク ラブのひとつ、<トロピカーナ>で連日行なわれているレヴューをそのま ま持ってきた、当時としては世界情勢から見ても画期的な事でした。日本 武道館をクラブ・トロピカーナに見立てたそのショーは楽団の演奏はもと より、歌、踊り、そして衣装に至るまで最高のショーだったのです。その 中でも特に感動したのが今回紹介するオマーラ・ポルトゥオンドが唄った <シボネイ>という曲でした。その後何度か来日しては私たちを感動させ てくれたのですが、あくまでも限られたファンに贈られたプレゼントに過 ぎませんでした。ところが、去年、映画<ブエナ・ヴィスタ・ソシアル・ クラブ>が公開されるや、キューバ音楽への関心が一挙に高まり、それと 共にオマーラの人気が再燃したのです。
今回紹介するアルバムは彼女が盲目のギタリスト兼作曲家のマルチン・ ロハスと共演したものですが、前半の録音と後半とでは、20年以上もの 時の隔たりがあります。が、そんな事は全く感じさせないほど美しい仕上 りになっています。 それでは紹介していきましょう。

哀愁を帯びたロハスのギターに魅せられる#1。オマーラの声の表現の 素晴らしさに初めから脱帽です。バラッドにおける表現の究極を示した# 2。口笛が効果的な#3。<黒い涙>の邦題でも知られているボレロの名 曲#6。語りかける様に唄う#7、#9。そして優しさと力強さ伝わって くる#10。ここまでが1974年にフィンランドで録音されたものです。
思わず足が動いてしまう#11。とても懐かしい#13。そして私の想 いでの曲#14。<ノーチェ・トロピカール>でのオマーラの熱唱が目に 浮かんできます。ジプシー音楽を彷彿させる#16。トランペットとパー カションがオマーラの唄を引き立てる#17。押え気味の表現が後をひく #18。これでアルバムは終わります。後半は正しい資料がないのではっ きりとは言えないのですが、1979年と1997年に録音されているよ うです。

さて、如何でしたでしょうか。声の伸びやコントロールの素晴らしさ。 あなたもきっとファンになったことでしょう。それに、伴奏のギタリスト 、マルチン・ロハスの素晴らしさも忘れてはいけません。とても美しいア ルバムでした。

CDの番号は LRCD 130(輸入盤)です。LOVE RECORDS から 出ています。


また、オマーラについてもう少し知りたい人は、この6月に日本でも発 売になって話題になった、ブエナ・ヴィスタのメンバー達も参加している アルバム<オマーラ・ポルトゥオンド>ワーナーミュージックWPCR 19040 を聴いてみるのも良いかもしれません。さらに直前にせまった来日公演に 行って、是非「生」の声を聴いて下さい。