Tony Bennett

together again



今年の3月。サントリーホールは感動の拍手で覆われていました。拍手 喝采を浴びていたのはこの8月で76歳を迎えたトニー・ベネット。今な お現役で活躍する世界的なシンガーです。前にも<シアター・プレイ・ガ イド>のコーナーで書いた通り、このコンサートは愛情あふれるも のでした。長年彼の唄を支えてきたピアニストのラルフ・シャロンを幾度 も讃えるといった彼の暖かい人柄が滲み出ていたのです。
さて、そのトニー・ベネットがかつてピアノの巨匠、ビル・エヴァンス とデュエットという形で共演した事があります。もう25年も前の話しな のですが、トニーの豊かな表情の声とビル・エヴァンスの伴奏が以外にも マッチして最高のアルバムになりました。今回紹介する<トギャザー・ア ゲイン>は、その2年後に再び共演したアルバムなのです。発売当時は最 初の共演アルバム<トニー・ベネット&ビル・エヴァンス>があまりにも 素晴らしかった為に少しその完成度に不満が残ったものでしたが、今回のCD 化にあたり再び聴いてみると実に素晴らしいアルバムだったんだなと感激 している所です。

前置きが長くなりましたが<トギャザー・アゲイン>の紹介に移りまし ょう。ライブ・ハウスで行なわれるコンサートのようにピアノソロだけの #1。このアルバムのプロローグとして最高の演奏です。そしてトニーの 登場。ヴァースから唄い始めるバーン・ステインの#2。とてもメランコ リックな#3。もう半世紀以上前の映画<ツゥー・メニ・ガールズ>で使 われていた#4。良い唄はこの様に残っていくものなんですね。日本のジ ャズ歌手、峰純子が始めに唄った佳曲#5。<A child is born> の〃born"の表現に注意して聴いてみて下さい。ビル・エヴァンス のオリジナル#6。歌詞の付いていないビルの演奏も1971年の彼のア ルバムの中で聴く事ができます。ビリー・ホリデーやチェット・ベイカー などでお馴染みの#7。なんとも耳が痛いですね。でもこればかりはね〜 。私なんぞ失恋の連続なので分っているつもりなんですけど。
それはさておき、#8はトニーのアルバム<ザ・ムーヴィー・ソング・ アルバム>でも唄っていました。大変美しい曲です。とても悲しい#9。 ミシェル・ルグランの曲で、映画<ロシュフォールの恋人たち>に使われ ていた名曲#10。ここでオリジナルアルバムの収録曲は終わります。で も、このCDにはボーナス・トラックが何と11曲も付いているので す。まず#11。これは1964年のミュージカルから。今でも活躍して いるレスリー・ブリッカスとアンソニー・リューリーの作品です。そして 、コール・ポーターの作った小粋な#12。トニーもリラックスして唄っ ています。
ここからの9曲はオリジナルに収録されていた中で#2を除いたものの 別トラックです。しかし、改めてその曲の完成度の高さに驚きます。この ままアルバムを出してもおかしくない程、素晴らしい出来なのです。オリ ジナルと比べて聴くのも面白いかもしれません。例えば#14では#3に 比べてテンポが少し早いし、#15では#4では唄っていなかったヴァー スから唄います。ビル・エヴァンスの伴奏もそれぞれに違うので同じ曲を 繰り返しているのに、まるで違った感動を受ける為に1枚のアルバムとし て完成されています。とってもお得なアルバムですね。

如何でしょうか?だんだんと深まりつつある秋にピッタリなアルバムで すね。

CDの番号は R2 75837でRHINOというレーベルか ら出ています。今のところ輸入盤でしか購入出来ません。ジャズ・ヴォー カルのコーナーに行って捜して下さい。きっとトニー・ベネットのコーナ ーがあるはずです。