Bobbe Norris

Out of Nowhere



13年程前に日本のCBSソニーレコードより<ブラン・ニュー・ス タンダード・ヴォカル from New York >シリーズというアルバムが 出た事がありました。このシリーズは日本ではあまりメジャーではない女 性ヴォーカルを10人集めてそれぞれが1枚のアルバムを製作して発表す るという物でしたが、当時たいへん大きい話題になりました。
そのシリーズを飾った女性達はというと、ちょっとヴォーカル通の人な ら知っているといったキャロル・スローンやロレス・アレキサンドリア、 そしてシーラ・ジョーダン。映画にも出演しているモーガナ・キング、最 近質の良いアルバムを出して好評のシャーリー・ホーンやスーザン・マッ コークル。新人にしては歌唱力抜群のカーメン・ランディー。そして、久 々に録音の機会に恵まれたミリー・ヴァーノンとヴィヴィアン・ロード。 そして最後の一人が今回紹介するボビー・ノリスだったのです。
彼女は1941年生まれという事なので今年59歳。まだまだこれから の活躍が期待できる人材です。その彼女のデビューは1966年の事。し かし今回紹介するアルバムで確か5〜6枚目なのです。いかにじっくりと アルバムを作っているかが分りますね。それでは紹介していきましょう。

ヴァースからしっとり唄う#1は昔の恋を回想するもの。なんとなく秋 を感じます。フルートの流れる様なリズムが心地よい#2。彼女とは古く から親交のあるマーク・マーフィーがゲストで粘りっこい声を聴かせてく れる#3。このアルバムのタイトルであり、ビング・クロスビーの大ヒッ ト曲でもある#4は後半のアップテンポの部分がゴキゲンです。今やミル ト・ナシメントと共に色々な音楽の分野に大きく影響を及ぼしているイヴ ァン・リンスの#5はメドレーで、しかもポルトガル語で唄われます。無 伴奏で入る#7。ベースとのデュオで唄われる#8は未練たらたらな気持 をうまく表現しています。マット・デニスのとてもお洒落な曲#9は、彼 女の旦那でもあり、良きパートナーであるピアニストのラリー・ダンラッ プとのデュエットです。ラリーが大変味のある喉を聴かせてくれています 。それにしてもこのご夫婦、こんな事があったのでしょうかね?
編曲のせいでとっても暗くなってしまった#11。でもご安心を。後半 ではテンポが上がってとても甘いラヴ ソングに仕上っています。
前出のご主人、ラリー・ダンラップの作品#12。ここでも仲の良いデュ エットが聴かれます。サミー・カーンとジミー・ヴァン・ヒューゼンの隠 れた名曲#13はフローレンス・ロジャースに捧げられています。これか らの人生の方向を静かに唄う#14。とても心に浸み入ります。このアル バム全体を通して、ご主人であるラリー・ダンラップの愛情が感じられた のは私だけだったのでしょうか。いや、けしてそうではなかったと思いま す。
如何でしたか?深まりゆく秋にピッタリだとは思いませんか?

アルバムの番号はFDR-2004で、Four Direction という彼女 とご主人とで作ったレーベルから発売されています。ジャズ・ヴォーカル のコーナーに行ってみて下さい。