Sylvia Syms

songs by Sylvia Syms



1992年の5月、一流のアーチストが出演するので有名な、ニュー・ ヨークにある高級ホテル、アルゴンクィンのオーク・ルームに出演してい た彼女、シルヴィア・シムスは3日目のセカンドセッションの後、客席に いた友人でもある作曲家のサイ・コールマンの所へ行って少し言葉を交わ したところで倒れ、帰らぬ人となりました。ちょうどこの時彼女は、これ も彼女の大親友であるフランク・シナトラに捧げるショーをやっていあと ころだったのです。ちょっと地味ですが、とても心を休めてくれる歌声だ ったので、大変残念でなりませんでした。
もう少し彼女について紹介をしましょう。1917年にニュー・ヨーク のマンハッタンで生まれたシルヴィアは若いときからビリー・ホリデイに 傾倒して薬とお酒以外はほとんど彼女の真似をしたといいます。ビリー・ ホリデイが何時も耳に飾っていたくちなしの花を最初にビリーに飾ってあ げたのはシルヴィアだといわれた事もありました。その彼女が最初に注目 を浴びたのが、ミュージカル<マイ・フェア・レディー>の中の1曲、< 踊りあかそう>をテンポを早くして唄った時でした。その後、ミュージカ ル<南太平洋>にブラディー・マリー役をファニタ・ホールから引き継い で出演。この役は<バリ・ハイ>と言う有名な曲を唄う役として周知の通 りですが、これが当たってその後ミュージカルに数本出演します。その後 は地味ながらレコーディングとクラブやラウンジ出演を中心に活躍し、晩 年もピアニストのビル・エヴァンスに捧げたアルバムを録音したり、最後 のアルバムとなりましたが、作詞家のアランとマリリン・バーグマン夫妻 の作品集を作ったりと、本当に最後まで意欲的に活動していたのです。そ して、人生最後の日を 迎えてしまうわけですが、<舞台の上で死にたい>と常ずね言っていたら しいので彼女としては思い残す事が無かったかもしれませんね。

さて、今回紹介するアルバムは彼女のデビュー・アルバム(1952年 録音)ですが、当時は10インチ盤として出ていた物にジョニー・リチャ ーズ編曲の4曲(1954年録音)を加えて新しく12インチLPと して<Sylvia Syms Sings>として出された物です。アトランティ ックからでたこのアルバムのCDもあるのですが、今回は10インチ アルバムのジャケットを使用したこちらを選びました。ちなみに内容は同 じですが、曲順が多少異なっています。ちなみに今回紹介するジャケット の方は8曲までがデビュー・アルバムからで、その後の4曲が後から追加 された物となっています。

それでは紹介していきましょう。#1〜#8は彼女の親友、バーバラ・ キャロルのトリオをバックに唄っています。
肩の力が抜けてとてもリラックス出来る#1。コール・ポーターの#2 。ここでのバックを務めるバーバラ・キャロルの十八番としても知られる #3。演奏も楽しそうです。ヴァーノン・デュークの佳曲#4。ビッグバ ンドの時代に生まれた大ヒット曲ですが、シルヴィアの情感溢れる歌唱が 心を揺さぶる#5。#6はフリージャズの先駆者、オーネット・コールマ ンが作った同名異曲もありますが、こちらはベニー・カーターが作曲した とてももの悲しい曲。ちなみに私は<ロンリー・おじさん>とでも言うの でしょうか。
冗談はさておき、次の曲に行きましょう。#7はエセル・ウォーターで 有名ですね。ちょっとスウィングしてしまいます。ガーシュインが関わっ た最後の映画<ゴールドウィン・フォーリーズ>の主題曲#8。後で、< アメリカ交響楽>と言う映画にも使われていましたね。お手本とも言うべ き歌唱です。
これからは7人構成のバンドで唄っています。まず、とても乗りの良い #9。思わず指を鳴らしてしまいますね。恋をしてしまったらどんな対処 方も見つからないと唄う#10。全くその通りです。今の私の気持ち、そ のままの#11。そしてとってもジャズっぽい#12。こんな唄い方聴い た事ありますか?あっ!と驚かせてくれてアルバムは終わります。 如何でしたか?チョット低めの優しい歌声に満足していただけたと思い ます。

CDの番号は KOC CD-8541 でKOCH JAZZから出ています。また 、曲順の違うアトランタから出ているアルバムは Atlantic 1243 で出ています。ジャズ・ヴォーカルのコーナーで捜して下さい。
その他、彼女のお薦めのアルバムとして、1965年にプレステッジから 出た<Sylvia Is ! >があります。こちらはボサノヴァのリズムが 心地よいですよ。番号はPrestige 7439 です。