Raquel Bitton

sings Edith Piaf



秋と言えばすぐシャンソンだな、と思う世代はシャンソン ファン を除けばおそらく40代以上の方達でしょう。そして、シャンソンと言え ば彼女、エディット・ピアフ。もうシャンソンの代名詞 みたいな存在になっていますが、彼女を題材にした映画や芝居、そしてミ ュージカルがいくつか作られたのはもうご承知の事と思います。
フランスでは彼女の伝記映画「愛の讃歌」が70年代前半(私の記憶で は73年だったと思うのですが)にブリジット・アリエルの主演で上映さ れました。この時のアリエルの声の吹替えをしたのが、当時ヒット曲を立 て続けに出していたベティー・マルスという人でしたが、とてもピアフに 似ていたと記憶しています。また、日本でも越路吹雪が日生劇場で<ロン グリサイタル>と銘打ってピアフの生涯を演じていましたし、最近でも美 輪明宏がパルコ劇場で行なった芝居は話題になりました。
また、つい4〜5年ほど前にイギリスのミュージカル界の大スター、エ レン・ページがその名の通り「PIAF」というミュージカルで主演し 、大喝采を浴びました。そして、93年にはピアフ没後30年、98年に は35年と言う事で色々な企画商品が出ました。勿論その中にはピアフの 再来と騒がれたミレイユ・マチューが彼女のレパートリーを唄った物やい ろいろなジャンルから集まった人達がピアフに捧げたトリビュート・アル バム等があります。
さて、今年になってアメリカやカナダでは一人の歌手が行なっているシ ョーが大変話題になっています。その人が今回紹介するラクウェル・ビッ トンです。このショーは<PIAF .... HER STORY .... HER SONGS > というタイトルが付けられ彼女がフルオーケストラをバックにピアフのナ ンバーを唄っていくものなのですが、99年12月にロス・アンジェルス のウィルシャー・シアターで幕を開けて2000年1月にカーネギー・ホ ールにお目見え、ニューヨーク・タイムズ紙に絶賛されて、先月からカナ ダを巡演しています。そんな事もあって出されたアルバムがこの<シング ス・エディット・ピアフ>です。
前置きが相当長くなってしまいましたね。早速紹介していきましょう。

レコード針を落とす音で始まる#1はちょっとレトロな雰囲気でこの曲 が作られた1956年にタイムスリップした様な感じです。いきなりピア フに似ているのでビックリなさった方も多いのではないでしょうか。#2 はもうお分りですね、<愛の讃歌>という邦題で大変有名な曲です。まず は英語で唄われますが、アメリカではブレンダ・リーが唄って多いに流行 りました。ワルツのリズムで唄われる#3。「愛」について唄われる#4 。頷いている方もいるんじゃないですか?ワルツを踊りたくなってしまう 様な#5。重い雰囲気がなんとなく漂う#6。題名にあるテルウェル って、いったい何処なのでしょうか。ギターがとても印象的な#7。退廃 的な雰囲気がする#8。「古き良き時代がね...」なんて声が聞こ えてきそうな#9。いかにもシャンソンな#10。これだけ褒め契られる と痒くなってしまいそうな気がする#11。でも、一度位はね。
#12はちょっと変ったリズムですが、これはパルス・ペルアーノとい うペルーのワルツなんです。南米に演奏旅行に行ったピアフが持ち帰って フランス語の詩で唄って大ヒットした曲です。神様に訴えかける様に唄わ れる#13。それもそのはず、タイトルは<私の神様>なんですから。あ なたにとって<私の神様>って誰ですか?#14はあまりにも有名すぎて 説明のしようがありません。「あなたに抱かれると人生がバラ色に見えて くる」という、何とも私には気恥ずかしい台詞です。ピアフのレパートリ ーの何曲かを作詞しているアンリ・コンテという人がいますが、ラクウェ ルが彼の好きな曲を彼に捧げて唄っています。それが#15です。そして 、このアルバムの最後を飾るのは、これもピアフのレパートリーの中では つとに有名な#16です。行進曲の様なこの曲は「いいえ、私は後悔しな い」という力強い内容です。みなさんも恋に破れた時に聞いてみると勇気 が出ますよ。

如何でしたか?とても秋を感じてもらえたのではないでしょうか。 ラクウェル・ビットンは2002年の1月にカーネギーホールで再びリ サイタルを行ないますが、それまでスケジュールは一杯だとの事です。も し彼女の生のステージに接したいなと思った方はサン・フランシスコのク ラブやホテルのラウンジのスケジュールを確認すると良いかもしれません。

CD番号は、OMCD 49248 でOMTOWNというレーベルから出てい ます。ヴォーカルかシャンソンのコーナーでお捜し下さい。